繊維ニュース

番外編 新政権と環境規制が迫る構造改革/2026年は跳ねるか?どうなる繊維産業

2026年01月19日 (月曜日)

 繊維・ファッション業界が2026年を「歴史的な分岐点」と位置付け、備えを急いでいる。6日付で「2026年は跳ねるか?どうなる繊維産業」として、本紙が昨年11月に繊維関連の有力企業117社のトップを対象に実施した恒例のアンケートから、業界の傾向、予測について特集を掲載した。ここでは詳細を取り上げられなかった設問16「26年の注目」について改めて取り上げ、各社のコメントから激動の26年を読み解く。

〈新政権の始動と米国の“影”〉

 昨年、高市早苗氏が日本初の女性首相となり、国内政治が新たな局面を迎えた。企業の関心は、新政権が掲げる経済政策の実行力に集中している。「国民生活や企業業績にどのように影響するかを注目している」(リュクスの金子忠正社長)、「特に物価や賃金上昇、金利や為替の動向などが焦点となる」(しまむらの高橋維一郎社長)といった声が聞かれ、ここ数年ほとんどなかった政権への注目度が一気に上昇した。

 物価高への懸念は根強く、消費者の購買意欲をいかにつなぎ止めるかが課題となる。「実行力のある内閣に大いに期待している。繊維産業の復活につながることに期待する」(サンコロナ小田)、「新首相就任における国内外情勢の変化」(紳士服メーカー)など、政治主導の景気回復を望む声は切実だ。

 一方で、海外に目を向けると、米国の動向が最大のリスク要因として浮上している。25年の米大統領選後、26年にかけてその通商政策が具体化するためだ。「関税政策をはじめとする米国トランプ政権の経済政策」(合繊メーカー)への警戒感は根強い。「(米国の)中間選挙とその結果のグローバル環境の変化」(旭化成の工藤幸四郎社長)も見過ごせない。「選挙の結果による政策転換は、世界貿易や関税政策に大きな影響を与える」(大和紡績の野間靖雅社長)可能性は大きい。

 さらに「米中関係、トランプ政権の保護主義による地政学リスクとその影響」(三共生興の宮澤哲次常務)への警戒感に加え、「米中関税休戦の期限」(おたふく手袋の井戸端勇樹社長)を危惧する声も上がった。

 こうした地政学リスクは、原材料費や為替の変動に直結する。「顕在化している地政学リスクの進展と、それらに起因する商品相場・為替変動」(寝装・インテリア商社)に対し、サプライチェーンの再構築を急ぐ企業は多い。一方で、「ウクライナ紛争の終結」(インナーメーカー)という、危機の収束による市場の安定を期待する向きもある。

 3日に米国がベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を逮捕したという衝撃的なニュースが飛び込んだ。また、イランの情勢も不安定になってきた。果たしてその影響は繊維業界へどのように波及していくか。「各地での紛争、分断による影響」(専門商社)はなかなか払拭(ふっしょく)できそうにない。

〈盛り上がるスポーツイベント〉

 こうした不透明な情勢を打破する特効薬として期待されているのが、大型スポーツイベントだ。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピックやFIFAワールドカップ(W杯)など、「スポーツ分野で大きなイベントがあり、人々に勇気と感動を与えてくれることを期待する」(オンワードホールディングスの保元道宣社長)。

 相次ぐ国際大会は、関連ウエアの需要だけでなく、国民全体の消費マインドを刺激する。「冬季五輪やサッカーW杯の開催によるスポーツ市場の盛り上がり」(デサントジャパンの嶋田剛社長)を見込み、攻めの姿勢を強める企業は多い。

〈規制とテクノロジーが促す新秩序〉

 ビジネスの根幹に関わるのが、環境規制への対応とデジタル化の成否だ。26年に注目しているのは、欧州の動向を受けて、日本でも衣服廃棄に関する規制が強化される可能性がある点だ。規制強化の動きが加速することで、「企業にとってサステイナブルな取り組みがこれまで以上に重要になるだろう」(エアークローゼットの天沼聰社長兼CEO)。

 欧州では既に「デジタルパスポート」などの導入が進む。欧州連合(EU)の繊維製品の新環境規制の本格運用が開始され、「製品の環境負荷情報開示やリサイクル義務が国際基準となり、サプライチェーン全体に大きな変革と透明化を求めるため、その影響を注視している」(豊田通商)と、グローバル基準への適応が生き残りの条件となる。

 その解決策の一つが人工知能(AI)の実装だ。「AI・デジタル技術の実装とサステ対応の深化が一段と進む年になる。特に需要予測や生産管理へのAI活用が注目される」(ユニフォームメーカー)、「AIとロボット」(タビオの越智勝寛社長)など、AIはもはや概念ではなく、実務のツールとして現場に組み込まれる段階に入る。

〈迫られる構造再編〉

 市場の縮小、コスト増、そして規制。四面楚歌の状況下で、業界の姿そのものが変容しようとしている。

 国内の繊維・アパレル業界は「縮小市場+環境対応+デジタル化」という構造変化に直面しており、「統廃合は生き残り戦略として不可避」(御幸毛織の渡邉紘志社長)との声も。ブランド再編・電子商取引(EC)強化・海外展開・環境対応を軸にしたM&A(企業の買収・合併)が今後も増える可能性もある。

 「業界構造の転換点となるとみる」(専門商社)との声に象徴されるように、26年は、これまでのビジネスモデルが通用しなくなる“淘汰(とうた)と新生”の年になりそうだ。