ごえんぼう

2026年02月02日 (月曜日)

 千手観音とは、正式には千手千眼観世音菩薩といい、千本の手であらゆる人を救い、それぞれの掌に刻まれた眼で苦しみを見逃さない存在とされる▼千手観音像は全国に伝わるが、多くは教義に基づき四十二臂(しじゅうにひ)で表現される。ところが、本当に「千手」を持つ像が、大阪府藤井寺市の葛井寺に安置されている。現存する腕は1041本。世界的にもまれな作例で、その迫力は際立つ▼制作年代は8世紀ごろとされるが、作者は分かっていない。複数の仏師が制作に関わったと考えられている。主要な腕には宝剣や金剛杵など、煩悩を断ち悟りへ導く法具が持たれている▼法具の中で「“推し”は骸骨」と、葛井寺のチケット売り場の女性が教えてくれた。死や無常を象徴するその造形は、どこか現代的で、愛嬌(あいきょう)がある。多様性が盛んに語られる今、その源流ともいえる発想が、千年以上前の仏像には既に織り込まれていたことに気付かされる。