中国の安踏/独プーマの筆頭株主に/欧米2強猛追の“巨艦”

2026年02月03日 (火曜日)

 中国スポーツブランド最大手の安踏体育用品(アンタ)が、世界市場の勢力図を塗り替えている。このほど、世界4位のドイツ・プーマの筆頭株主になると発表。傘下の「アークテリクス」や「ジャック・ウルフスキン」にプーマを加え、ナイキ、アディダスに次ぐ世界トップ3の地位を不動のものにする。

(岩下祐一)

 アンタは1月26日、フランス・ケリング創業家の持ち株会社アルテミスとプーマ株の売買契約を締結し、株式29・06%を取得すると発表した。取得額は約15億551万ユーロ(約122億7700万元)に上る。今後はプーマの監事会に代表席数を求める方針で、ブランドの独立性を維持しつつも、同社の小売りノウハウを注入し、プーマの再活性化を国内外で図る。

 同社の足元の業績は独走態勢だ。2025年上半期の売上高は、前年同期比14・3%増の385億元だった。地場2位の李寧(リーニン)に売り上げ規模で3倍近い差をつけ、収益力でも他を圧倒。25年通期の小売り業績(速報値)は、「アンタ」ブランドが1桁%台前半の増収、「フィラ」が1桁%台半ばのプラスを維持した。特筆すべきは「デサント」や「コーロン・スポーツ」を含むその他ブランドで、前年比45~50%増と急成長を続けている部分だ。

 1991年に福建省泉州で設立。地場靴メーカーから世界的コングロマリットへの脱皮を遂げた。創業から20年目の2011年には在庫危機に直面し、時価総額は200億~300億香港ドル規模だった。

 転換点は海外ブランドの運営だ。09年にフィラの中国事業権を取得し、稼ぎ頭へ再生。16年にはデサント、伊藤忠商事とデサントブランドの合弁会社を設立し、高機能で専門性のある新たな柱を確立した。17年に時価総額1千億香港ドルを突破。19年にはアメアスポーツを巨額買収し、21年には一時、アディダスの時価総額を上回る場面もあった。

 成長の理由は2点。一つは韓国デサントから学んだ直販(DtoC)モデルの徹底だ。韓国式の全店舗直営による管理手法を国内事業で実証し、驚異的な収益性を実現した。二つ目は外部人材の活用。韓国フィラ幹部をCEO(当時)に抜擢したほか、元アディダス中国副総裁らをヘッドハンティングした。「頭脳は外から」の実利主義が組織を世界水準へ引き上げた。

 一方、死角もある。最大の懸念は在庫リスクだ。25年上半期の平均在庫回転日数は136日と長期化。また、巨大化に伴う政治リスクも無視できない。「政治的正しさ」を徹底するが、ビジネスと「愛国」の矛盾に直面するリスクを常にはらむ。半面、財務基盤は盤石で、ネットキャッシュは315億元を超え、現預金は約545億元と借入金を大きく上回る。

 アンタは現在「スポーツ界のLVMH」の地位を確立しつつあり、今後はプーマとの相乗効果やアンタブランドの海外展開が鍵を握る。高付加価値な生地や製品を供給する主要サプライヤーの日系企業にとっても、この巨艦の行方は大きな関心事だ。