Toray Premium GOUSEN select/先端技術で超高付加価値

2026年02月19日 (木曜日)

 東レは2025年10月、独自の最先端技術によるポリマーや革新的な複合紡糸技術で生産する糸・わたを「Toray Premium GOUSEN Select」(以下、TPGS)と名付けた超高付加価値ファイバーとしてブランディングし、世界に発信することを明らかにした。日本の技術力を改めて打ち出し、TPGSを通じて最適なソリューションを提案し、より快適な世界の実現を目指している。

〈唯一無二の高機能素材/ポリマー生成や革新紡糸で〉

 同社は日本国内でポリエステル、ナイロン、アクリルの3大合繊を全て生産する唯一の合繊メーカーだ。しかし、市場縮小に伴い国内のミル消費量(糸・わたの国内生産量から輸出分を差し引き、海外からの輸入分を加えた最終的な糸・わたの消費量を示す指標)は減少を続ける。

 しかも、海外企業との競合により、国産の長・短繊維の汎用(はんよう)品の多くが輸入品に切り替わっており、国産は差別化品で生きる道しか残されていない。

 その中で同社は、培ってきたポリマー生成技術や「ナノデザイン」に代表される革新的な紡糸技術を生かして、唯一無二の高機能ファイバーを開発し、TPGSとして展開を始めた。

 日本だけでなく、全世界のテキスタイルメーカーやアパレル、さらに消費者が求めるさまざまな課題、要望に対し、TPGSを通じて最適なソリューションを提案する考えだ。

 TPGSの立ち上げは「当社はグローバルファイバーメーカーであり、ファイバーが繊維事業を形づくっている。にもかかわらず、ファイバーそのものは知られていない。その穴を埋めることができれば、事業は成長できる」(浅田康治ファイバー・産業資材事業部門長)との判断がある。

 ファイバーそのものの認知度を高める上では「前に出る」。その武器がTPGSになる。今後、長繊維、短繊維とも年に二つのTPGS素材を発表する予定という。

〈内外展示会にも積極出展/海外生産拠点と連携して〉

 TPGSを備えて展示会にも積極的に出展する。昨年は「Faw TOKYO(ファッションワールド東京)」に事業部門として初出展した。

 「展示会に向けては準備が必要になる。糸だけでなく、生地や製品まで製作する。継続出展すれば、商品はアップデートされ、商品力が高まる」という効果がある。

 同時に「意識も変わる」という。来場者に対応するには商品知識が不可欠。担当以外の知識も身に付けねばならない。さらに複数で取り組むため、チームワークも養える。

 3月11~13日には中国・上海で開催される「ヤーン・エキスポ」にも初出展する。国内ミル消費量が減少する中、国内販売の超高付加価値の糸・わただけで、ボリュームを稼ぐのは難度が高い。それだけに「国内は小さくても一つ一つ積み上げていく。同時に現在はほとんどない海外販売にも力を入れる」と話す。

 その一策がヤーン・エキスポへの出展になる。さらに「国産品で価格が合わなければ、海外生産拠点から供給する」考えだ。

 同社は海外に豊富な糸・わた製造拠点を持つ。長繊維では韓国のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア(TAK)、中国の東麗合成繊維南通(TFNL)、インドネシアのインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)、タイのタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)がある。短繊維はマレーシアのペンファイバー、インドネシアのアクリル・テキスタイル・ミルズ(ACTEM)がある。これらを生かす。

 ブランディングなどは日本がヘッドクオーターとしてTPGSを運営し、供給は海外生産拠点であっても、ロイヤルティーを海外生産拠点から得れば良いとの判断。海外生産拠点にもプラスに働くため「相乗効果が生まれる」と読む。

 浅田事業部門長が掲げるスローガンは「ノーチェンジ・チャレンジ、ノーライフ」。どのように変わるのか。挑戦が始まった。

〈東レ ファイバー・産業資材事業部門長 浅田 康治 氏/グローバルファイバーメーカーになる〉

  ――「Toray Premium GOUSEN Select」(以下、TPGS)を立ち上げた経緯は。

 当社の繊維事業は糸・わたが形づくっています。ファイバーメーカーとして外部からも認知されています。しかし、ファイバーそのものは知られていません。その穴を埋めればもっとできる。それがきっかけです。

  ――昨年4月に部門長に就任して半年で立ち上げました。

 就任後、全員を集めて「前に出るグローバルファイバーメーカーになる」と宣言しました。そのために全員に約束してもらいました。その一つが顧客は神様という点です。当部門は当社グループ内への供給があるため、甘えというか意識が内向きになりがちです。しかし、利益を得ているのは外部の顧客ですので、もっと前に出る必要があります。ただ、前に出るには発信するものが必要です。それがTPGSになります。国内外の展示会で仕掛けていきます。

  ――積極的ですね。

 これまでファイバーとして、このような勝負をかけていませんでしたから。TPGSの国内販売では小さくても一つ一つ積み上げていきながら、海外販売を強化します。SPA向けを除けば、国産品の輸出は今、ほとんどありませんので。また、納期や価格などお客様のご要望に応じて、海外生産拠点からも供給します。

  ――TPGSは4品種からスタートしました。長繊維、短繊維とも年2素材の発表を計画しています。

 それができれば、担当者の自信にもつながるのではないかと考えています。

  ――4月から新たな中期経営課題がスタートします。事業部門としての課題は何でしょう。

 当事業部門としては商品構成、ポートフォリオの転換に取り組みます。テキスタイル事業部門の考え方も取り入れながら糸・わた売りだけでなく、加工糸、生地と加工度も高めていきます。ただし、あくまでも糸・わた販売のための高次加工です。

《高機能ファイバー群》

「スプリングフィット」/次世代のストレッチ

 性質の異なる2種類のポリマーを貼り合わせたバイコンポーネントのストレッチ糸。ポリエステル長繊維、ナイロン長繊維をそろえる。熱処理による収縮差から生まれる高捲縮(けんしゅく)によって、動きに合わせた適度なストレッチ性としっかり戻るストレッチバック性を併せ持つ。

「ライティグラム」/細さは技術、軽さは進化

 限りなく細く、限りなく強く、限りなく薄くを追求した細繊度ナイロン長繊維。ストッキングで追い求めた極限の製糸技術を生かした。

「ギガダル」/日差しから守る

 通常のフルダル糸よりも高濃度で酸化チタンを添加したポリエステル長・短繊維、ナイロン長繊維。UVカット性、防透性、遮熱性、汗染み抑制に優れる。日差しの厳しい夏の快適性を向上させるとともに、汗染みが気になる日常やスポーツシーンなどに適する。

「キュープ」/湿気放ち、涼しさまとう

 高吸放湿ナイロン長繊維。繊維が湿気を吸い取り、外気へ放出する際に発現する放熱現象。コンディションが変わるたびに繰り返し体感する新しいクーリングコンセプト「放湿冷却」を実現する。