特集 紡毛・獣毛(1)/紡毛が復調の兆し/大津毛織/大和紡績/東和毛織/東洋紡糸工業

2026年02月20日 (金曜日)

 紡毛織物に復調の兆しが見えつつある。暖冬などの影響もあり苦戦が続いていたが、25秋冬向けでコートの販売が堅調に推移した。26秋冬向けは回復に向かいそうだ。

 近年の紡毛の苦戦は暖冬によるウールの需要低迷が要因だ。小ロット多品種の流れもあり、尾州など産地へのまとまった量の注文は減った。作り過ぎによる在庫過多も影響した。

 風向きが変わったのは昨年末。急激な冷え込みでコートの売れ行きが伸び、尾州へのリピート注文につながった。産地企業によると、26シーズンも紡毛関連は前向きな話が多い。

 課題は原毛価格の高騰だ。梳毛と比べると紡毛は大幅に上昇していないとされるが、コスト増は避けられない。多少割高になっても高付加価値化につながる獣毛使いが増える可能性もある。

〈最高級+軽さで差別化/大津毛織〉

 大津毛織(大阪府泉大津市)のテキスタイル部は、“軽さ”を追求した生地提案を強化している。ボリューム感がありながら軽量性に優れる「エアーファブ」は、タスマニアラムやウールなど多彩な原料で展開する。25秋冬ではカシミヤ100%の需要が高まり、国内に加え、中国や韓国への輸出も拡大した。

 34毛番手の極細紡毛糸を使用した「マイクロ紡毛 エターミン」も、薄手の織物として注目を集める。原糸部が糸を約20色備蓄しており、別注色への迅速な対応も強みに、拡販を図る。

 国内外から関心を集めるニュージーランド(NZ)産ノンミュールジングウール使いも拡充した。昨年から展開を始めた「カームカラー」は、ウール100%の編み地やリバーシブル生地をそろえ、26秋冬向けにも商談が進む。

 NZ産のラムウールによる紡毛織・編み地「キウィーラム」は、今年からウール100%の「ネオキウィーラム」を打ち出した。コート地などを提案し、新規開拓を加速させる。

〈今期の出だしは堅調/大和紡績〉

 大和紡績(愛知県一宮市)は、今期(2026年9月期)の出だしが堅調だった。紡毛コートのリピートがあり、糸の販売増につながった。再生ウール糸も順調に推移する。

 前期はウール需要の低迷で苦戦を強いられていた。昨年11月ごろから一気に冷え込んだことで、コートの店頭販売が好調に推移。尾州へコート地の追加発注があり追い風になった。

 生地在庫なども減っていることから、紡毛糸の需要は26秋冬向けも伸びそう。染色整理工程のボトルネックを避けるため、生地生産が例年よりも早まる可能性がある。

 サステイナビリティーの流れによって、再生ウール糸は前期に続き堅調に推移。同社は原料となる廃棄衣料や糸くずを厳しく管理・選別し、幅広いカラー展開や品質の安定性を実現する。

 国内衣料品市場の縮小は避けられないため、今後は海外向けの販売を強化する。欧米と中国を見据えており、環境関連の国際認証も取得した。

〈ペルー産アルパカ使い糸堅調/東和毛織〉

 梳毛糸・意匠糸製造の東和毛織(愛知県一宮市)は、ペルー産アルパカ使い糸の引き合いが安定している。ヘアリーな表情を持つ糸や、ファーのような形状のモール糸がアパレル向けに支持を集める。

 これらの糸は羽織物や1枚仕立てのアウターとして使用事例が多い。ぬめり感や自然かつ品のある光沢感を保ちつつ、意匠性に富んだ糸に仕上げる。

 ペルー産ファインアルパカ100%の「FS100」は14番手双糸でナチュラルな色調の12色を展開する。アルパカが持つ程よいヘアリー感を生かしながら丁寧に紡績する。保温性にも優れる。

 ペルー産ベビーアルパカ使いのモール糸「アルパカテディ」も表情豊かな顔つき。1・8番手単糸で6色をそろえる。ポリエステルの芯糸にベビーアルパカの花糸を挟み込んで作る。花糸を長めにすることでファーのような表情を形成する。タッチの滑らかさも増す。

 希少な原料のため調達は容易ではないが、安定した調達と供給につなげる。

〈カシミヤの表現力追求/東洋紡糸工業〉

 東洋紡糸工業(大阪府忠岡町)は、堅調なカシミヤ需要を追い風に、素材開発を加速させる。「顧客の要望を形にできる」メーカーとしての強みを生かし、糸に加えて生地、製品へと商材の幅を広げ、欧州を中心とする海外市場の開拓につなげる。

 原料から調達する独自素材の提案に注力し、経糸に綿、緯糸にカシミヤを用いたデニムや、綿と組み合わせた「カシミヤボアフリース」を開発した。カシミヤ特有の滑らかさや風合いをカジュアルな用途に落とし込み、高付加価値な生地で新たな需要を掘り起こす。

 高級原毛では、「ベビーカシミヤ」100%や、ビキューナ50%・ベビーカシミヤ50%混紡糸が、日本や欧州のラグジュアリーブランドを軸に販売を伸ばしている。最高級素材としての存在感を一段と高める。

 カシミヤ紡毛糸「サプナ」を用いたファー加工も好評を得ている。起毛ではなく、特殊な洗い加工で繊維を傷めず長い毛羽感を引き出す技術で、提携するイタリアの工場と自家工場の双方で生産できる体制を整えている。