特集 紡毛・獣毛(2)/中伝毛織/遠山紡績/山栄毛織/藤井整絨/林田

2026年02月20日 (金曜日)

〈デザイナー向け広がる/中伝毛織〉

 婦人服地製造の中伝毛織(愛知県一宮市)が健闘している。デザイナーズブランド向けなど新たに開拓してきた販路が軌道に乗ってきた。既存先が厳しい中で新しい稼ぎ柱に育てる。

 ウール市況が良くない中でも、今年度7~11月の売上高は前年同期並みを維持できた。デザイナーやセレクトショップ向けが伸びたことで、百貨店や生地商社向けといった既存販路の落ち込みをカバーした。

 紡毛コート地は昨年冬に製品の店頭販売が好調だったことから、追加での発注があり堅調に推移した。加えて、衣料向け以外のカーシートや椅子張りといった資材向けも広がりを見せた。

 今期(2026年6月期)は通期で微増収を見込む。ツイードや先染めのトレンドによって尾州が活況となることを予想しており、受注量は前期を超えることを期待する。

 同社は東京での単独展開催や新作生地の開発を続けてきた。こうした取り組みが販路開拓という成果として結び付いてきた。

〈梳毛と紡毛の二軸で展開/遠山紡績〉

 遠山紡績(愛知県あま市)は梳毛から紡毛までの多彩なウール糸を展開する。自社内で撚糸加工も手掛けるなどQRを武器に販売を伸ばす。

 今期(2026年9月期)は出だしが低調だったものの、スーパー原料などの高級ゾーン向けは堅調に推移する。先染めのトレンドがあることも追い風になっている。

 紡毛は見本などが活発に動いており、今後の期待感がある。25秋冬向けで紡毛コートの販売が堅調だったことから、次シーズンの26秋冬向けも好調を予想する。

 撚糸工程を内製化しており、迅速な納期対応を強みとする。ワインダーなどの工程では自動化装置を導入し省人化も推進。商況は厳しいが、こうした強みを生かして活路を見いだす。

 紡毛だけでなく、梳毛も手掛けていることは再生ウール糸の生産で利点になる。梳毛の紡績工程で発生したスライバーくずを再生ウール糸の原料に再利用できる。

〈こだわり求める顧客が支持/山栄毛織〉

 服地製造の山栄毛織(愛知県津島市)は天然繊維を軸としたモノ作りに定評がある。デザイナーズブランドやセレクトショップなど、こだわりを求める顧客から支持を集める。

 ウールを中心としながら、アルパカやカシミヤといった獣毛を扱う。リネンやシルク、綿の扱いも得意としているため尾州産地にありながら、秋冬と春夏向けの売上高比率は半々だ。

 小ロット多品種に対応できる体制を整えている。レピア織機18台、整経機1台のほか、ワインダーもそろえる。人員は全員で14人おり、20代の若手が3人在籍。ベテランからの技術継承も進める。

 今期(2026年3月期)は増収増益を見込む。販売量の増加だけでなく、生地値の引き上げも奏功した。セレクト、デザイナー、百貨店向けで売上高のバランスはそれぞれ均等だ。

 今後は準備工程の内製化を検討する。高齢化と担い手不足で廃業が進むため。山田和弘社長は「経通しなど自社でやれる工程を増やしたい」と話す。

〈事業譲渡で供給網維持へ/藤井整絨〉

 染色整理加工の藤井整絨(愛知県一宮市)は3月31日付で、同業の艶清興業(同)へ事業を譲渡する。単独での事業継続が難しいため、事業継承によってサプライチェーンの維持を図る。

 藤井整絨は2018年、中伝毛織の子会社と合併し、中伝グループの傘下に入った。織り、編み両方の加工を手掛けており、ウールを中心に天然繊維から合繊まで対応する。特に起毛加工には定評がある。

 暖冬やウール離れの影響で、近年は苦戦を強いられていた。将来にわたって安定した事業継続と、産地内での技術の維持・発展のためには、艶清興業へ承継することが最善と判断した。

 艶清興業はポリエステル・レーヨン混を中心に3者混や4者混といった複合素材への加工を得意とする。今回の譲渡をきっかけに手薄だったウールの加工を増やすことで安定した操業につなげる。

 藤井整絨から設備や人員を移し、4月から本格的な量産体制に入る計画だ。

〈着用感こそ素材の品格/林田〉

 量販店や大手SPAで、値頃感のあるカシミヤ製品が市場に出回る中、ニット衣料品製造卸の林田(大阪市東成区)は、高級カジュアルブランド「レセント」で着実な成果を上げている。大都市圏を中心に百貨店内で直営店を開設。富裕層はもとより、日本製品を求めるインバウンド客からも支持されている。

 特に和歌山の直営ニット工場で熟練職人が仕上げる「カラーオーダー」コレクションは、全36色から自分だけの一着が注文できると好評だ。セーターやベスト、カーディガンなど定番的デザインをカシミヤ、シルク、海島綿から選べる。

 配色は日本の伝統的な色彩感覚にちなみ“和色”(わいろ)で統一した。例えば白系統では象牙、白橡(しろつるばみ)、胡粉(こふん)色と微細な色味を表現。日本独特の感性と、手仕事もいとわない丁寧なモノ作りが、高級天然素材の持ち味を引き出す。

 「カシミヤ製品は原料品質の違いを体感しやすい。高品質な原料にこだわった製品は、一見すると同じように見えても、着用感はお値打ち品との差が歴然」(林田誠司社長)と、本質的な価値を重視する。