特集 事業戦略(3)/大和紡績/取締役合繊・レーヨン事業、東京本社統括兼産業資材事業本部長 青柳 良典 氏/IPOへ成長戦略加速/「意識の統一」で全社一丸に

2026年03月03日 (火曜日)

 大和紡績は、2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を折り返し、独立後のIPO(新規株式公開)を見据えた事業戦略を一段と加速させている。青柳良典取締役は、「成長事業へ経営資源を集中させる一方、課題事業の改善を徹底する」と強調する。好調な合繊や産業資材事業を中心に、事業部とグループ各社を連携させ、播磨研究所(兵庫県播磨町)を核とした開発体制でさらなる飛躍を目指す。

――上半期(25年4~9月)を振り返ると。

 全体としては、計画に対して苦戦している状況です。その中でも合繊事業のフェースマスクや制汗シート向け、産業資材事業のカートリッジフィルターは堅調に推移しました。

 以前から全工場で月次管理を徹底し、歩留まり向上やロス削減を継続しています。それでも吸収し切れない原料高などのコスト上昇分については、顧客に丁寧な説明を尽くし、価格転嫁への理解を得る努力を重ねています。

 繊維産業は商流が長くなりがちですが、BtoB、BtoCの両面から最終製品に近付く“末端への接近”を重視しています。市場で何が求められているか、正確な情報をタイムリーに入手し、供給につなげていく考えです。

――事業部別の動向はいかがですか。

 当社の強みが最も発揮されている分野が合繊事業です。ポリプロピレン(PP)繊維では国内最大手、レーヨンでは国内唯一の生産拠点を持ちます。播磨工場(兵庫県播磨町)で生産した原料を、美川工場(石川県白山市)や益田工場(島根県益田市)で不織布にする一貫体制も構築してきました。近年の酷暑により制汗シート向けが大きく伸びたほか、美容向けのフェースマスク用でも高いシェアを堅持しています。

 産業資材事業の主力であるカートリッジフィルターは、人工知能(AI)やデータセンター市場の拡大に伴う世界的な半導体需要が追い風となりました。ろ過工程の中でも、消耗品として大量に使用される領域を確実に押さえていることが、安定成長につながっています。一方、建築・土木関連は大阪・関西万博特需の反動などにより需要が減少しました。

 製品・テキスタイル事業は、国内の消費マインドが低調で、厳しい環境が続いています。コスト競争の激しい汎用(はんよう)品ではなく、当社にしかできない差別化素材や機能性素材へシフトし、付加価値を高める戦略を徹底する方針です。

――下半期から来期に向けた戦略は。

 合繊やフィルターといった成長事業にさらに注力します。特に好調なフィルター事業は、生産を出雲工場(島根県出雲市)へ集約することで運営効率を向上させました。播磨工場で生産する原料を有効活用し、より最終ユーザーに近い立場での展開を強めていきます。

 ペーパーレス化による国内の紙需要減少の影響を受けるカンバス・メッシュベルト事業では、国内シェアを維持しつつ、インドネシアの生産拠点と連携して海外販売を積極的に拡大させていきます。

――設備投資や環境対応、人材確保については。

 独立後からの最優先課題である老朽化設備の更新を順次進めています。益田工場などの拠点で“自動化・省人化”をテーマに投資を継続し、誰が作業しても高い品質と効率を維持できる体制を構築して生産性を抜本的に高める計画です。

 環境面では、30年までに国内の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で30%削減する目標を掲げています。ダイワボウレーヨン(大阪市中央区)の益田工場では、C重油高圧ボイラーと自家発電設備を廃止し、LNG(液化天然ガス)貫流ボイラーの導入と外部電力調達への転換を進めています。これにより年間約2・3万トンのCO2排出量削減を見込んでいます。

 人手不足に対しては、インドネシアの自社工場から技能実習生を受け入れ、国内工場で教育して現地へ戻す「人材交流」を行い、グローバルな生産基盤の強化を図っています。

――IPO実現に向けた今後の展開は。

 投資家に評価される成長戦略を示すため、伸びる事業に経営資源を集中させる一方、課題のある事業は改善を徹底する方針です。特に市場があり、技術的な知見と競争力のある合繊事業は最注力分野と位置付けています。

 グループとしての総合力を上げるため、3事業部と3事業会社のダイワボウアドバンス(東京都中央区)、ダイワボウレーヨン、カンボウプラス(大阪市中央区)が密接に連携し、播磨研究所を技術の核とした開発を加速させていきます。

 そして何より大切なのは“意識の統一”です。今月、経営方針発表会を開き、会社の目指す方向性を全従業員に伝えます。全社一丸となって同じ方向を向き、IPOという目標に向かって力強く進んでいきます。