特集 事業戦略(7)/新内外綿/社長 田邉 謙太朗 氏/開発主導で別注拡大へ/市場ニーズを具現化

2026年03月03日 (火曜日)

 新内外綿は、紡績技術を核とした別注糸の提案を一段と強化する。市場の要望を先取りして独自の糸を開発する“開発主導型”を掲げ、「市場の理想を形にすることで、別注比率をさらに高めていく」と田邉謙太朗社長は話す。製造と営業の密接な連携により、高付加価値商材の開発を加速させる。

――今期(2026年3月期)の見通しは。

 売上高、営業利益ともに前期比横ばいで推移し、黒字を維持する見通しです。過去2年は12月ごろから厳しい状況が続きましたが、今期は底堅く推移しています。営業担当者が産地へ足を運び、地道に定番糸や別注案件の注文を取り付けてきた成果が出ました。

 主力の紡績事業では、顧客の個別ニーズに即した「別注糸」の需要が高まりました。小ロット生産や、杢(もく)糸などの特殊混紡にも柔軟に対応できる当社の強みが改めて評価されています。

 一方で、定番のグレー杢糸シリーズは、「GR7」や「GR3」、「GR2」といった主力品番の需要が堅調です。今後は定番糸の販売数量を維持しながら、別注糸の売上比率50%以上を目指していく方針です。

 タイの商事会社JPボスコは、日本への輸出における為替の影響や、現地工場の加工賃上昇など懸念材料はあるものの、綿80%・シルク20%混の空紡糸を開発するなど、素材の差別化を進めています。こうした海外生産糸の国内備蓄販売も継続し、顧客への利便性をさらに高めていきます。

――製品事業の重要性が一段と高まっています。

 編み地を中心とした衣料品の受託を手掛ける製品事業は、今や全体の6割近くの人数が所属する体制となりました。かつては糸が半分、生地・製品が半分という売上構成比でしたが、現在は利益率を確保できる製品事業の存在感が増しています。独自のアパレルブランド「mocT」(モクティ)も、杢糸の良さを伝える発信源として定着してきました。

――来期の戦略は。

 紡績事業は、顧客の要望を待つ“受注型”から、自ら独自の糸を生み出し市場に投入する“開発主導型”へシフトします。単に注文を受けるだけでなく、能動的に提案できる営業体制をより強固なものにしていきたい。これを支えるのが圧倒的な紡績知識です。

 紡績部では入社後、工場実習を行い、次に営業を経験し、再び工場実習に戻るという独自の研修サイクルを導入しています。この順番で現場と営業の両方を経験することで、「市場が何を求めているのか」を捉える視点と、「その要望をかなえるための課題は何か」を見極める技術的な視点の両方が養われます。

 現場を熟知した営業が商談に臨むことで、顧客のイメージを具体的な仕様に落とし込む提案が可能となり、開発の深化につながります。難度の高いリクエストに対しても、その場で実現可能性を判断できる「現場力」が、顧客からの信頼を支えています。

――新規開発について。

 「これは面白い」と直感した原料は、まず仕入れて実際に試作してみる。こうした姿勢を大切にしています。在庫リスクを低減するために品番の集約を進める一方で、グレー杢シリーズにリサイクルカシミヤ混や反毛わた混の新作糸を加えるなど、新しい提案ができるラインアップをそろえました。地道な試作から量産につながるケースも着実に増えてきています。

――多品種・小ロット生産を支える製販の連携は。

 月末には営業全員で、紡績工場のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)を訪問し、現場の状況を直接確認することを徹底しています。月中にもウェブ会議を重ねることで、スピード感のある開発体制を整えました。

 倉庫に足を運び、備蓄糸の状態を把握することも大切にしている取り組みの一つです。現場への責任感を持つ姿勢こそが、確度の高い商談と適切な在庫管理の両立を支えています。

――環境配慮型素材にも力を入れています。

 昨年末、素材の適正リサイクルに関する国際規格「GRS」(グローバル・リサイクルド・スタンダード)を取得しました。海外市場において、当社の技術への信頼を裏付ける証明となっています。繊維のリサイクルシステム「彩生」も好調です。提供された生地を顧客専用に反毛して再製品化する“マンツーマン”の取り組みで、リピート発注が増えるなど広がりを見せています。

――今後の展望を。

 糸、生地、製品の3本柱をさらに強固にしていきます。モクティを通じたアパレル展開を推進するとともに、親会社のシキボウとの連携も深化させます。当社とシキボウの糸を組み合わせた提案を行うなど、グループの総合力を生かせる点も強みです。確かな紡績技術と現場視点を持った提案力を両輪に、新内外綿ならではの存在感を高めていきたいと考えています。