日本のものづくりの誇りと共に世界へ/三起商行 代表取締役社長 木村 皓一 氏

2026年03月04日 (水曜日)

 ベビー・子ども服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)は、世界を舞台に成長し続けている。創業時から子どもと家族に本当に良い製品・サービスを届けたい同社の企業哲学は揺るがない。ミキハウスが大切にしているこだわりについて改めて伺った。

〈良いものは対価が要る〉

  ――創業時から現在まで、“良いものを安く売る”思考と対極姿勢を貫いておられます。

 職人や生産者に、より良いものを作ってもらうためには相応の対価が必要です。無論商品の価格は高くなりますが、高い付加価値があるものは、その価値に見合う価格付けが重要だと考えます。そして、その価値に共感するお客様が購入してくださいます。もちろんビジネスとして成立させるにはお客様との信頼関係を築くことが肝心ですし、製品の価値を伝えることが重要となります。

 私は他の分野でも一貫して、「本物」を追求し、良いものにこだわってきました。例えば現在の社屋は当時複数の企業の計画を比べて最も高価なものを採用しました。巨額な費用で大変でしたが、竣工から30年以上が経過した今でも、世界中から集まるお客様やスタッフにブランドの付加価値を示しています。

 必ずしも、「高価なものが良い」というわけではありませんが、良いものを作るには手間と時間、コストがかかることは間違いありません。

〈市場開拓は仲間探し〉

  ――その価値観を形成された原点はどこにあると思われますか。

 父親は地元・大阪府で、主に米国向けの輸出事業を手掛ける婦人服メーカーを経営していました。米国では1枚1ドルで売るいわゆる「ワンダラーブラウス」を大量に輸出していました。

 学生のころ、父の会社で商品を見せてもらうことがあり、デザインが凝ったものも、シンプルなものも全部1ドルだと聞いて、「それではデザインの付加価値はどこにあるのか?」と感じました。せっかく良いデザインなのに、評価の対象になっていない。

 それでいいのかと父に尋ねると「商品がたくさん売れて、大きな収益を上げている」と言われました。

 当時は大量生産、大量消費の時代で、その考え方は数字だけで言えば正解だったかもしれません。ただ、それでは良いデザインをした人へ敬意が欠けているのではないか、さらに本来、報われるべき利益を関係者が得られていないのではないか、との疑問が湧きました。それからほどなくして、会社を立ち上げました。

  ――自らの価値観に基づいて創業されましたが、当時の反応はいかがでしたか。

 創業は夫婦2人でのスタートでした。自分たちで作ったサンプルを抱え、各地域の子供服専門店の一番店だけに絞り、営業活動を行いました。

 当社の製品価格は、当時同業他ブランドに比べ2倍程しました。市場は“安ければ売れる”だけではないのですね。子どもにとってより良いものを探していた専門店のオーナーの目に留まり、たくさんの注文をいただきました。

 ここで大事なことは、ただ高価なだけでなく“これほどの価値のある良い製品だから、この価格です”と言い切れる裏付けがあったことです。それはデザインの良さや確かな縫製・染色、素材の品質になるわけですが、努力を惜しまなかったことに自信がありました。

 振り返れば当時の営業活動は、“良いものを供給して、その価値に共感してくれる販売先と手を組み、共感してくれるお客様にお届けする”この商流確立に向けた、仲間探しの軌跡だったように思います。

 ミキハウスは現在、海外17の国・地域で107店舗を展開していますが、そのほとんどは現地の代理商様がパートナーとしてお店を担ってくれています。80年代から展開しているパリの店舗に、海外から訪れた方がミキハウスのファンとなり、現地でもブランドを広げたいという想いでパートナーになられた顧客様も多いです。ロンドンの老舗百貨店ハロッズやキプロスにも、このような顧客様のご縁で出店につながりました。価値に共感する仲間は世界中でも広がっています。

〈良いものを届ける使命〉

  ――ミキハウスに信頼が寄せられる理由の一つに、日本製の安心な高品質が挙げられます。

 当社に生産機能はありませんから、良いものを供給するためには外部の工場様に協力してもらわなければなりません。

 子どもの足の成長を考えて一足一足手作業で仕上げるベビーシューズや、赤ちゃんの肌を優しく包む新生児肌着など、協力工場の職人の皆さんは本当にごまかしのない、良い品質の製品を作ってくださいます。子どもへの愛情と良いものへのこだわりを共感いただき、妥協のないものづくりをしてくださる協力工場様は、我々にとって大切なパートナーです。

 このものづくりの代表的なものが、プレミアムシリーズ「ミキハウス ゴールドレーベル」です。最高の品質で本物の商品を世界中の子どもに届けたい想いの到達点として、海島綿やベビーカシミヤ、「神の繊維」とも言われるビキューナなど、最高峰の素材と、職人の卓越した技術にこだわるアイテムを展開しています。輪島塗のお食い初め膳など、子どもへの愛情を込めた伝統工芸品も扱っています。

 職人さんがひたすら良いものを届けたい想いで一点一点、手間暇をかけて作ってくださるので、その想いをわれわれがつないでいます。

 このようなものづくりは日本国内外でお客様からご支持をいただいております。パリの店舗やロンドンのハロッズ店、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ店では、世界各地からの顧客様が増え続けています。「わが子に良いものを与えたい」想いは国境を越えても変わりません。

 良いものを安定して世界中のお客様に届けるためには、協力工場様との継続的な信頼関係が重要です。ミリ単位の要望も応えてくださる高度な技術力で丁寧に作った商品を、お客様にその価値に見合った価格・環境・サービスで届け、協力工場様とお互いリスペクトし、信頼し合える環境を大切にしています。

 ものづくりのグローバル化が進む中でも、こちらの信頼に確実に応えてくれる日本の工場さんをこれからも頼りにしています。

〈既存販路に捉われず新領域へ〉

  ――新事業に取り組まれているそうですが、どんな内容ですか。

 リゾートホテルや産院との取り組みが拡大しています。リゾートホテルではお子さまとご家族がより安心で楽しく滞在できるような商品、サービスを提供しており、産院や産後ケア施設では赤ちゃんの院内肌着や退院ギフト、パパママのセミナー開催など、ミキハウスならではの「モノ」と「コト」の提案をしています。

 近年は中国のラグジュアリーホテルとのコラボルームや、タイの大手総合病院と提携もスタートし、海外からのオファーも増えています。

 これらもやはり、良いものづくりがあるからこそだと思います。これからも日本の協力工場様と共にメイド・イン・ジャパンの価値を世界中に届けていきたいです。

〈木村ラウンジの魅力〉

 新入社員の約半数が海外出身者となるなど、三起商行の世界展開において、グローバルな人材が活躍している。異なる言語・文化のメンバーが同じ方向に向かっていく上で大事にしているのが、コミュニケーションと人間関係である。仕事以外での重要なコミュニケーションの場の一つが本社で催す「木村ラウンジ」と呼ばれる食事会。

 月に一度以上の頻度で、終業後など勤務時間外で開かれる。自由参加で部署に関わらず、多くの社員が集う。基本的に業務の話はなく「ただ集まって食事を楽しむ会合」(木村社長)。

 最初はコロナ禍で帰国がままならない、外国籍社員の心情を考慮して企画された。これが好評で現在も続く。顔合わせを繰り返すうちに心の距離も縮まり、いつの間にか結束力が高まっているらしい。

 先に述べた社屋などのハードウエアに加え、優秀な人材獲得や組織間の連携も同社は重視する。良い人間関係を維持する秘訣を垣間見させていただいた。

お問い合わせ先 代表電話 072-920-2111