特集 学生服と環境教育(1)/“教材”としての学生服/SDGs浸透へ貢献
2026年03月06日 (金曜日)
1970年代から始まった環境教育は、2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と22年から始まった探究学習が相互に作用して学校教育に深く浸透した。学生服は“学びの場の服”として、環境に配慮した製品と再生の取り組みが多数打ち出され、SDGsを学ぶきっかけとなる“教材”としての存在意義を示している。
〈環境教育の成り立ち〉
環境省が発表した「環境教育の歴史」によると、「環境教育」という言葉は、1948年の国際自然保護連合設立総会でいち早く用いられたとされる。日本では、70年に発行された日本経済新聞の記事「進む米の環境教育」や72年の大内正夫の学術記事「理科教育の現代的課題と環境教育」、73年の中山和彦の著書「環境教育」で登場した。
当時は、公害と結び付いた環境保全の枠組みの構築が世界的に進められ、日本でも71年に環境庁が立ち上げられた。74年から「環境教育カリキュラムの基礎的研究」班、77年には環境教育研究会が発足し、79年にかけて学習指導要領「公害防止の大切さと、国等の対策」「環境の保全に役立つ森林の働き」「人間と自然」が定められた。
81年の日本環境協会の調査によると、小中高校の半数近くで環境教育に関連した授業が行われていた。86年の「環境保全長期構想」では、「今後、都市や生活型公害などの国民生活に起因した環境問題への対応、時代の環境保全を担う青少年に対する環境教育も重要である」としている。88年に第1回環境教育シンポジウム、90年に日本環境教育学会が設立され、91年に「環境教育指導資料」が作成された。
公害や環境破壊への対策と共に進められてきた環境教育が近年、大きく加速したのは、2015年に国連総会で採択されたSDGsによるところが大きい。01年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として、30年までに達成すべき17の国際目標が定められた。
22年度から高校の全学年で必修化した総合的な探究の時間「探究学習」のテーマとして、「ジェンダー平等」と共に「環境」が頻繁に取り上げられるようになった。学生服メーカーは、詰め襟からブレザーへ移行することでジェンダー平等への配慮を実現するのと併せて、環境に対応する学生服の開発に注力した。学生服を通じて「つくる責任、つかう責任」の目標達成も目指す。
〈学生服通じて学び〉
学生服は、3年間毎日着用可能な耐久性を備える持続可能性の高さを利点とする。私服の着用で経済的な格差が露見する不平等を防ぐ。学生服メーカーは、エネルギー消費や気候変動、自然の豊かさ保全といった課題に向き合う環境に配慮した学生服の開発に加え、リユースやリサイクルといった包括的な環境への取り組みも進める。学生服を通じてSDGsを学ぶきっかけとなる“教材”としての価値を付与する。
トンボは、学生服・学用品供給先の学校の使い終わった学生服を回収してクリーニングした後に再販する「トンボリユースシステム」を26年春から本格化させる。販売代理店が主体となるリユース事業で、販売代理店に利益の出る構造にすることで、事業としての持続可能性も高める。
環境配慮型製品比率を30年までに65%に高めるとした目標は、25年に前倒しで達成。30年までに70%と目標を上方修正した。花王と共同で、学生服が長く着続けられる理由や奇麗に保つための洗剤選びのポイントなどを伝えるSDGsセミナーを開くほか、「エコリボーン」と銘打つ循環システムにも取り組む。
菅公学生服はこのほど、同じ学校の保護者同士が制服や体育着を売買できるフリマサービス「ゆにのわ」を全国の学校に向けて提供を始めた。
使用しなくなった制服などを再活用できるプラットフォームで、環境問題への貢献や保護者の経済的負担の軽減を目指す。既に一部の中学校や幼稚園がトライアル導入しており、26年7月期までに100校の採用を目指す。
今後は、不要になった学生服や体育着を回収して資源を循環させる「制服・体操服の循環型プロジェクトとの連携」も目指す。
明石スクールユニフォームカンパニーは、制服のリユース、リサイクル事業の「Re―Ring AKASHI」(リリングアカシ)を25年春から本格化させている。
連携する学校で制服を回収し、クリーニング、修繕、検品、仕上げを行った後、新品よりも安価な価格で販売する。制服買い取り販売業者が適正な制服かどうか理解しないまま販売をするケースもある中、学生服メーカーが扱っているという安心感から採用につながっている。
〈CtoC売買可能に/製造者責任を果たす/トンボ〉
トンボは、伊藤忠商事が運用する学生服・学用品専門のCtoC売買仲介サービス「学リレ」を、同社が学校に供給する学生服向けに取り扱いを本格化する。売買が可能となる学校は4月時点で約10校になる見込みだ。耐久性の高さが特徴の学生服をリユースすることで、「製造者責任を果たす」(谷本勝治取締役販売戦略本部長)。
学リレは、学生服・学用品電子商取引(EC)サイトの「学校生活」を介した、学校関係者に利用を制限したCtoCの売買を可能とするサービス。匿名性を担保した上で学校関係者以外に流出することなく、同じ学校に所属する生徒の保護者間で売買することができる。在校中にサイズが合わなくなり買い換えたいという需要にも対応する。
在学生徒が着用する目的以外での購入を防ぐため、既存のCtoCプラットフォームでは一般的に学生服・学用品の売買が禁止されている。リユース品の流通は地域間での取り組みや一部の学生服リユース店での取引に限られていた。
一方で、環境への配慮や持続可能性に対する意識の高まりから、学生服・学用品をリユースできる新たな流通網の構築を期待する声は多く、学リレを受け皿とした対応を目指す。
谷本取締役は、「フリマアプリの浸透で、リユース品への抵抗感が減りつつある」と分析。「持続的な取り組みにするために、事業として成り立つ仕組みにしたい」と展望を語った。
〈服から服の再生システム/SDGs推進の契機に/菅公学生服〉
菅公学生服は2023年から始動した、「制服・体操服の循環型プロジェクト(PJ)」の一環で回収箱を設置する学校が、2月中旬時点で63校まで増えた。今年から、商品原料を同PJで再生した原料の「ブリングマテリアル」に切り替えていく。
同PJは、「服から服をつくる」を基本理念として、回収した学生服が、新たに作る学生服の素材として戻って来る仕組みを目指す取り組みだ。JEPLAN(川崎市)と協働して進めている。
再生されたブリングマテリアルは、工場から発生する繊維くずや回収した学生服などの繊維を由来とする原料を100%使用し、独自のケミカルリサイクル技術によって石油由来原料と同等の品質にまで再生、製造された再生ポリエステル樹脂や糸、生地だ。
同社が展開する、防透性や紫外線防止効果に優れたスクールウエア「ミエンヌ」や、伸縮性など幅広い機能を備えた「トリプルフィット」の原料を順次、ブリングマテリアルに置き換えていく。
回収や再生に費用がかかり、製品原価に反映されることとなるため、コストバランスを踏まえた混合率の検証を進めている。
吉川淳稔商品開発部長兼第二学校提案部長兼スクール商品企画課長によると、「同PJは“制服文化を守りたい”という思いから始まった」という。「これから未来を担う子供たちは自分で学生服を選べない」点を指摘。「学生服メーカーとしての責任あるモノ作りでSDGs(持続可能な開発目標)を進めるきっかけとなる“学びの場の服”を提供する」意向だ。
今後は、市町村との協業で回収箱の設置を加速させる。「各市町村では、環境に関わる部署が次々と設立されており、大きく広がる可能性を秘めている」(吉川氏)。
〈自ら考える力を養う/特色ある学校づくり支援/明石スクールユニフォ―ムカンパニー〉
明石スクールユニフォームカンパニーは、SDGs(持続可能な開発目標)やネイチャーポジティブ(生物多様性の保全)に取り組む企業を支援するCLASS EARTH(クラスアース、東京都中央区)と協業した学生服の発信を強める。
学生服そのものに“教材”としての価値を付与することに加え、持続可能性に関する講義のほか、生徒自身が能動的にデザインや素材の策定に関わるプログラムも提供する。
中村孝営業本部スクール営業部長兼第二営業課長は、「SDGsの実現に向けてどのように取り組めばよいか悩む学校が少なくない」とした上で、「自ら考える力を養う“アクティブラーニング”につながれば」と話す。
クラスアースの学生服にはSDGsの実現に寄与する五つの特徴がある。一つは、ポリエステル糸を長繊維にすることで、組織的に壊れにくく、洗濯時のマイクロプラスチック流出を抑制する特殊な生地の採用だ。
二つ目は、生地の染め方。水を使わずポリエステルを染める無水染色を採用した。汚水排水を抑制するだけでなく、堅ろう度が増すという利点もある。
三つ目は、再生ペットボトルから作られたジャケットボタンの採用だ。毎日着用する学生服の検品基準に耐えうる再生素材を使い、リサイクル率の向上に寄与する。
四つ目は、日本の学生服産業の匠の技が生かされたダブルカラーのシャツデザインの採用だ。海外の大量生産工場では困難な仕様となっている。
五つ目は、ジャケットの裏地だ。国際自然保護連合のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種の生物をモチーフとしたデザインを施した。
採用された場合は、クラスアースのオウンドメディア「ネイチャーポジティブマガジン」に掲載する。





