特集 学生服と環境教育(2)/広がる環境配慮の取り組み/ニッケ/ミナコンビ/吉善商会/チクマ/学生服

2026年03月06日 (金曜日)

〈“脱使い捨て”授業推進/受講者1万7千人突破/ニッケ〉

 ニッケは学校に社員が出向いて、繊維の知識や衣服の取り扱い方を教える出張授業「ウールラボ」を実施している。小学生から高校生まで受講することができ、2019年の開始以来、受講者は累計1万7千人を更新した。

 千葉県総合教育センターからの依頼で、県内公立中学校の教員向け研修も実施した実績もある。授業ではウールの吸湿発熱性や難燃性、消臭効果、リサイクル性などの機能だけでなく、循環可能な生分解性も訴求。環境配慮型の学生服地として開発した「エミナル」は、教材として生かす。

 同社は学生服を教材に活用する体験型教育プログラム「Weardy」(ウェアディ)の活動を推進している。ウールラボはその一環で基本プログラムとなる。クイズ形式の出題や実験で、繊維の素材特性について理解を深める。“衣服を長く、大切に着る”本質的な価値まで学べると評価も高い。

 応用プログラムでは、衣服と社会のつながりを学ぶ「スクールマナーセミナー」も提供している。

 現在、脱炭素・循環型社会の実現に向け、ウール衣料品回収・循環プロジェクト「WAONAS」(ワヲナス)が進行中だ。使用済み学生服を“服から服へ”再資源化する活動も、駒場学園高等学校の協力を得て実現した。

 また、ワヲナスと並行して、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進にも貢献すべく、情報サイト「コンパスポート」も開設。情報発信に力を入れている。

〈ユーザーニーズ的確に捕捉/リユース事業にも注力/ミナコンビ〉

 園児服製造卸のミナコンビ(東京都葛飾区)は、メイン事業である園児服の販売以外にも、小学校受験の塾や幼児スポーツクラブの制服製作において引き合いを伸ばしている。少子化により園児数は減少傾向にあるが、素材やシルエットにこだわった高品質な製品へのニーズを的確に捉えることで、高単価案件の受注増につなげている。

 新たに開始したオリジナルプリント受注も好調だ。特にポロシャツについては、既製品への加工にとどまらず、自社でパターンから作成する完全オリジナル制作にも対応。子供たちの活発な動きを妨げない独自の設計と耐久性が高く評価されており、他社との差別化を図る付加価値の高い主力アイテムとして育成していく。

 環境配慮活動の一環として注力するのが、運動着などのリユース事業だ。モデルチェンジなどで不要となった衣類を自社通販サイトで提供。「丈夫で機能的な学校仕様を安価に手に入れたい」という親世代のニーズを捉え、通学外の日常着としても人気を博している。

 さらに、日本防炎協会理事長表彰を受賞した防災頭巾も、昨今の防災意識の高まりにより引き合いが増えている。伝統的な製造技術に現代の安全基準を融合させた同社の製品は、教育現場から「子供の命を守る一着」として厚い信頼を寄せられている。

〈制服通じ社会貢献/“次代の制服”在り方示す/吉善商会〉

 学生服製造卸の吉善商会(東京都中央区)は新規採用校の増加により堅調に売り上げを伸ばした。学生服のほか、ビジネスユニフォームの別注も得意としており、長年培った高い縫製技術はバス会社などからも厚い信頼を寄せられている。

 同社はNPO法人CLOUDYと協業し、自由学園(東京都東久留米市)の学生服を製作した。2024年の共学化に伴いリニューアルされた新制服は「人に伝えたい制服」がコンセプト。再生素材の採用や後輩への譲渡制度を取り入れ、デザイン制作の段階から生徒も参加した持続可能な一着だ。

 また、CLOUDYを通じて購入金額の一部をガーナへ寄付。学校給食や生理用品の購入に活用されるが、その使途も全校生徒で議論し決定した。裏地にはガーナ人デザイナーによるテキスタイルを採用し、写真は現地のカメラマンが撮影するなど、雇用の創出にも貢献している。

 そのほか、被災地支援として体操着を寄付するなどの活動も積極的に展開。伝統を守りつつ社会課題に真摯(しんし)に向き合う同社の姿勢は、次世代のユニフォームの在り方を提示している。

〈学生服循環の仕組み構築へ/「服育」で理解深める/チクマ〉

 繊維商社のチクマ(大阪市中央区)は、学校や自治体に向けて学生服のリユース・リサイクル提案を広げている。衣服を通じて心を育む「服育」の活動と、全社横断の知見を生かした資源循環の仕組みづくりを掛け合わせ、持続可能な制服運用を後押しする。

 自治体の統一型標準服が広がり、今後は地域単位でまとまった「お下がり」の中古制服の発生が見込まれる。リユースの仕組みづくりが求められる中、製造者の責任として制服の循環に取り組む。

 同社はビジネスユニフォーム向けで実績のある衣類の回収リサイクル事業「チクマノループ」や、効率的な制服管理システム「チクマノハブ」などの運用ノウハウを学生服に応用し、循環体制の構築を目指す。自治体や販売店と連携し、正規ルートによる安心・安全な回収体制も整備する。

 今年で22年目を迎える服育は、適切な着こなしの啓発から始まり、現在は環境配慮やジェンダーレス、社会性など、学校現場の“困りごと”に寄り添う題材へと対象を広げてきた。幅広い題材を持つ強みを生かし、年間40~50校で服育セミナーを実施している。

 遊びながら制服のライフサイクルを学べる環境学習教材「制服の一生すごろく」への関心が高まり、小・中学校からの問い合わせも増えている。教育支援に加え、制服の長寿命設計やSDGs(持続可能な開発目標)対応素材の提案にも力を入れる。

 情報発信の場として定期開催する「服育ラボ定期セミナー」は、家庭科や生徒指導の教員など学校関係者が来場する主要イベントとなっている。今夏は大阪と東京で開催し、服育のさらなる浸透を図る。

〈学生服業界でも暑熱対策/学生服〉

 学生服業界でも暑熱対策を考慮した製品の取り扱いが増えている。近年は歴代最高を更新する夏の暑さが続き、全国の熱中症による救急搬送者数も昨年、調査開始以来初の10万人を超えた。学生服メーカーはこれを受けて、ポロシャツや電動ファン(EF)付きウエア、サングラスなどのさまざまな対策を講じる。

 トンボは昨年11月に大阪市内で開いた総合展示会で、夏向け素材を採用したポロシャツやハーフパンツ、パーカなど、夏を快適に過ごすことのできる製品を展示した。

 昨年、真夏日が過去最多の111日を記録した「日本屈指の暑いまち」として知られる大分県日田市の昭和学園高等学校では、ポロシャツをオプションとして採用。胸元がボタンのないV字型のスキッパーシャツ仕様を採用することで、こもりやすい体温をうまく逃がす。

 菅公学生服は、猛暑対策の一環として、農業、工業などの実業系高校向けにEFウエアの開発を進めている。

 熱中症対策品などを企画するリンクサス(大阪市中央区)と協業したベスト型EFウエアで、最大電圧18・6ボルトタイプを使用。EFウエアの着用許可を出している岡山県内の2校の実習授業で今年初めて使用実績を得ることができたため、現在検証を進めている。

 明石スクールユニフォームカンパニーは、インターメスティックが展開するメガネブランド「ゾフ」と協業し、学校に向けてサングラスの提案を始めた。紫外線量の増加で視力低下などが深刻化する中、子供の頃から対策することで、将来的な目の疾患の発症を防ぐ。

 女子聖学院中学校高等学校(東京都北区)では着用試験の後、昨年末から指定サングラスが着用可能になった。現在も数校がトライアル中で、検討中の学校もある。