東レ・ペンファブリックの挑戦~スパン旗艦拠点の再生、そしてASEAN開発ハブへ(上)
2026年03月18日 (水曜日)
「ハイブリッドスパン」拠点に
東レの短繊維(スパン)戦略の中核拠点、マレーシアのペンファブリック(PAB)が大きな進化を遂げようとしている。かつてのT/C(ポリエステル・綿混)定番シャツ地の量産拠点から、東レの先端技術を具現化するASEANの高付加価値テキスタイル開発拠点へと立ち位置をシフトしつつある。同社の現在地に迫った。(マレーシア・ペナン州=岩下祐一)
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東レといえば、差別化した長繊維(フィラメント)が代名詞だが、そのグローバル戦略においてもう一つの極みである短繊維の開発・生産の中核を担うのが、PABだ。
かつてPABは、世界最大級の生産能力を誇るT/Cシャツ地の代名詞だった。「われわれの工場の始まりは1972年。当時は香港から技術が移転され、多くの香港人スタッフが現場を支えていた。その後、70年代後半に東レが完全に経営権を握り、資本・管理・技術が注入された」と、同社の最古参の1人、荘貽貴取締役は振り返る。欧米大手アパレル向けの定番ドレスシャツ地を中心に、巨大な一貫生産体制で一時代を築いた。
しかし今、PABはその姿を根本から変えつつある。従来の定番T/Cシャツ地工場という枠組みを脱し、東レの先端技術を多様なスパン素材に応用する高機能・差別化開発拠点へと、その役割を転換させようとしている。
■筋肉質な体質へ
この数年、PABは極めて厳しい経営環境に置かれている。世界的な白シャツ需要の激減に加え、中国、韓国、台湾勢との激しい価格競争、そして巨大な生産キャパシティーを維持するための重い固定費が経営を圧迫した。市場の変化に対応し切れず、構造的な高コスト体質に陥った。
この状況を打破すべく、同社は筋肉質な組織への転換を決断した。「量を追うモデルから脱却し、現在の市場環境に即した規模への再編を進めている」と、北原亮平営業本部長は話す。
■今こそ反転攻勢
そして同社が次なる武器に据えるのが、多民族国家マレーシアならではのダイバーシティー(多様性)だ。多様な人材に加え、多彩な設備を生かし、他社にはまねできない高度な機能や意匠性を持つ「ハイブリッドスパン素材」を生み出しつつある。
PABは今、「スパンの東レ」の威信をかけた反転攻勢に出ている。その挑戦は、ASEANにおける新たなテキスタイルの価値創造という非常に重要なミッションを担っている。





