特集 アジアの繊維産業(2)/タイ/事業高度化は不可避

2026年03月18日 (水曜日)

 タイ経済の勢いがない。バーツ高、米国の関税政策、安価な中国品の流入による国内製造業の疲弊など悪材料が重なり、2025年の経済成長率も前年から減速した。既にタイは汎用(はんよう)品の生産拠点としての競争力をほぼ失っている。このため日系繊維企業も事業の高度化が不可避となった。

〈25年GDP成長率は2.4%〉

 タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)によると、同国の25年のGDP成長率は2・4%となり、24年の2・9%から減速した。民間消費と政府消費がともに減少している。米国の関税政策の影響や中国経済低迷による対中輸出の鈍化、さらには安価な中国品の流入など経済への逆風が続いている。さらにバーツ高も加わり、同国の産業は二重苦、三重苦の中にあるといえよう。

 タイ工業連盟のまとめによると、25年の国内自動車生産台数は145万5569台(前年比0・9%減)となり、2年連続で150万台割れとなった。国内販売台数は62万1166台(8・5%増)となったものの、輸出台数は93万570台(8・2%減)にとどまる。輸出の落ち込みを内需でカバーできない状況が続いている。

 NESDCは26年のGDP成長率も1・5~2・5%と予想するなど景気回復の兆しは弱い。このためタイ中央銀行は2月に政策金利を0・25ポイント引き下げて1・00%とするなど景気テコ入れが続いている。

〈“脱・中国”を商機に〉

 こうした状況下、タイの日系繊維企業も事業の高度化を急速に進めている。東レグループは中国からASEAN地域への生産移管の流れを商機と捉え、衣料用途は合繊製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)と紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)が他地域の東レグループ各社とも連携しながら、原糸から生地まで一貫の商品開発を進めることで大手SPAなどのサプライチェーンに向けた販売拡大を目指す。

 また、産業資材用途はTTTをエアバッグのハブ拠点として供給力と安定品質を生かしたグローバル供給を拡大する。ゴム資材向けコードも二輪車需要の取り込みや電気自動車(EV)など新規需要の獲得に取り組む。

 帝人フロンティアグループのテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)とテイジン〈タイランド〉(TJT)は品質と生産効率の向上に努めており、2月からはユニチカから譲受したポリエステルスパンボンド不織布事業もスタートする。織布染色加工のタイ・ナムシリ・インターテックスは“脱・中国”によるASEAN域内サプライチェーン再構築の動きを商機と捉え、機能素材の多用途展開とオンリーワン素材の開発・販売に力を入れる。

 クラボウグループは紡織のタイ・クラボウと染色加工のタイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)による一貫生産を強みに、クラボウの繊維事業のマザー工場としての立ち位置を強めた。各種の国際認証なども取得し、原料から差別化した新商品開発を進めている。

〈タイ蝶理/資材など新規分野開拓〉

 タイ蝶理は、既存事業に加えて資材など新規分野の開拓に取り組む。中東民族衣装市場も市況の一服感が出てきたことから、従来の織物だけでなく、これまでも力を入れきた縫製品の販売拡大を進める。

 2025年度(12月期)は、市況が厳しいながらも堅調に推移したもよう。テキスタイル事業は、これまで収益をリードしていた中東民族衣装用織物の需要に一服感が強まっている。ただ、近年力を入れていたトーブ製品など縫製品の販売は拡大した。

 原料事業は、カーシート原糸・生地など自動車用途はほぼ横ばいで推移した。タイでの自動車生産台数は伸びていないものの、カーシート原糸、生地の販売量は大きく落ち込んでいない。一方、不織布など資材は苦戦。特に衛材向けは日系衛材メーカーが中国メーカーとの競争激化に直面している影響を受けている。

 現在の市況やタイの経済情勢の下では、既存の商権だけでは大きな成長は望みにくいというのが同社の判断だ。このため26年度も引き続き資材分野も含めた新規分野の開拓に力を入れる。

 中東民族衣装は、流通在庫増加によって生地需要の勢いが鈍化していることから、引き続き縫製品へのシフトを強める。不織布は衛材メーカーが競争力確保のために原材料調達を見直す動きがあることから、これを契機とした新規商権の獲得を目指す。