特集 アジアの繊維産業(4)/ベトナム/日系現法は自律経営へ/素材起点で収益体質強化
2026年03月18日 (水曜日)
ベトナムの日系現地法人が、事業構造の転換を加速させている。これまでの日本や欧米向けの受託生産・輸出拠点の役割を脱し、経済成長を背景としたベトナム国内市場の深掘りや、決済、開発を自ら担う「オウンビジネス」へのシフトが鮮明だ。
〈プロミネント〈ベトナム〉/地場ブランドの客先拡大〉
伊藤忠商事のベトナム法人、プロミネント〈ベトナム〉は、地場ブランド開拓と事業構造転換を加速させる。2026年度は中国拠点との連携強化などで、売上総利益ベースで前期比2割強の成長を図る。
25年度は、米国の追加関税に伴う受注停滞や、日本向けユニフォームのミャンマー流出が響き、利益面で苦戦した。売上比率は日本向けが約73%、内販・中国向けが計22%に拡大した一方、米国向けは約5%に縮小した。
こうした中、従来の日本本社のサポート業務主体から自社決済のオウンビジネスへの転換を急ぎ、25年度には同比率を20%まで引き上げた。成長エンジンとする内販では、ターゲットを従来の1社から有力4社へ拡大。日系ブランドの生産で培ったパターンなどを武器に開拓を加速していく。
素材開発では、日本向けの学生服・介護服向けの編み地が奏功。さらに伊藤忠繊維貿易〈中国〉(ITS)と連携し、中国大手のベトナム生産需要をグループ供給網で取り込み、収益を底上げしていく。
〈トーレ・インターナショナル・ベトナム/自販体制の構築・拡大へ〉
東レインターナショナルのベトナム法人、トーレ・インターナショナル・ベトナム(TIVN)の2026年3月期は、計画・前年比ともに増収増益の見通しだ。生地事業は苦戦したが、フル稼働が続く自社縫製工場の貢献や、電子材料向け電子情報材料の立ち上がりが全体を押し上げた。26年度からの次期中計では自販事業を構築し、収益拡大を目指す。
次期中計の柱は、中部クアンガイ省の自社縫製工場の倍増だ。2期増設により28年度までに現在の2倍となる1600人体制へ拡張。ダウンウエアなど高機能品へ生産アイテムを高度化させ、マザー工場として協力工場への技術移転も担う。
生地では強みの長繊維織物を中心に、汎用(はんよう)品から機能性素材へのシフトを図る。非繊維事業では好調な電子機器向け電子情報材料に加え、地場車載用樹脂の拡大も狙う。環境対応では欧米顧客を意識し、今年環境負荷を可視化する指標「ヒグ・インデックス」を導入。コスト増が続く中、自動化などで吸収する。
〈シキボウベトナム/糸から生地・製品一貫へ〉
シキボウのベトナム法人、シキボウベトナムは2026年度の単年度黒字化を視野に入れる。今年1月にユニチカトレーディング(UTC)のベトナムにおける織物・製品事業を継承。これにより従来の糸売り主体から、生地・製品までを一貫して手掛ける体制へシフトし、収益性の向上を図る。
UTCからの事業継承に伴い、スタッフ数はハノイ支店を含め約20人へと拡充された。24年の法人化から2年目を迎え、ナショナルスタッフの習熟が進む。
糸事業では、選択と集中を推進。差別化糸の備蓄販売を需要の高い2、3品番に集約した。25年度はインド産の安価な綿糸との価格競争で利益面は苦戦したが、足元では対日タオル工場向けの別注獲得や欧米ブランド向けでの綿・レーヨン混の提案が奏功するなど、商機が広がる。レンチングとの提携による“脱中国”ニーズへの対応や、高通気素材といった高機能糸の浸透にも注力する。
今後はシキボウとUTCの技術や商材を融合し、素材を切り口に日本、欧米、内販の全方位で攻勢をかけていく。
〈東洋紡ビンズン/高品質・小回りで差別化〉
東洋紡せんいの現地法人、東洋紡ビンズンは従来の日本向け縫製拠点から、現地での素材販売も手掛ける事業拠点への脱皮を急いでいる。2024年に卸売ライセンスを取得し、高機能素材を地場ブランドへ直接供給する体制を整えた。
同社は03年に操業を開始した。現在は3ライン・工員235人体制で日本向けユニフォームの安定供給を担っている。アイテム別生産比率は、織物製6対編み物製4。近年は編み物製の割合が高まる。
こうした中、縫製が難しい高伸縮生地への対応や特殊設備の導入に加え、ポロシャツなどの多品種生産により製品化の高度化を推進している。地産地消も進み、素材の現地調達率は5割に達した。
安価なユニフォームがミャンマーなどへ流出する中、小・中ロットや別注、高機能品に特化。協力工場の品質管理を導くマザー工場としての役割も果たす。
26年は内販の実績作りを最優先課題に掲げる。賃金や電力費の上昇は自動化や工程改善で吸収。自社工場のフル稼働を維持しつつ、外注活用と内販の拡大を進める。
〈MNインターファッションベトナム/素材起点で利益倍増へ〉
MNインターファッションのベトナム現地法人、MNインターファッションベトナムは、2026年度の重点方針として利益倍増を掲げる。従来の生産管理主体から、自社開発の差別化素材を軸にした高収益体質に転換する。
25年度は前年度から増収増益。売り上げの約8割を占める対日ビジネスが伸長したほか、内販も外資系ユニフォーム需要を取り込み前年比約10%増と成長。欧米ハイエンド層開拓も進める。
今後の鍵は現地での素材開発力だ。輸入依存から現地調達へ切り替え、フェイクファーの設備導入も完了。バナナ繊維を用いたサステイナブル素材、ユニフォーム向け難燃素材などの開発で素材起点の事業を構築していく。
生産面では、自社縫製工場のSBサイゴンファッションが小ロット・高品質対応でフル稼働を維持。一方、コスト抑制のため、協力工場は地方分散も進める。内販では価格競争を避け、スポーツウエアなどの高機能需要を狙う。





