特集 アジアの繊維産業(5)/帝人フロンティア/高度化するサプライチェーン

2026年03月18日 (水曜日)

 帝人フロンティアはASEAN地域に衣料、産業資材など幅広い分野で、合繊糸・わたから織・編み物、染色加工、縫製まで充実した生産・販売拠点を持つ。米中対立などを背景にサプライチェーンの高度化が進む。

〈TPL、TJT/品質・生産性を向上〉

 ポリエステル長・短繊維製造販売のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)とテイジン〈タイランド〉(TJT)は、市況が厳しい中で品質と生産効率の向上で収益の維持・拡大を目指す。

 2025年度は、北米市場向けが米国の関税政策の影響で振るわなかった。ポリエステル短繊維は衛材や寝装用途に需要が低調。ポリエステル長繊維は工業用も含めて日本向けの需要が減退した。こうした中、生産性を向上させることで前年度並みの事業利益確保に努めている。

 26年度も引き続き品質と生産性の向上によって前年度を超える事業利益の確保を目指す。2月からポリエステルスパンボンド不織布事業に加わった。北米向けを中心に、まずは安定生産・供給によって既存顧客から信頼を得る供給体制を築くことを重視する。

〈テイジンフロンティア〈タイランド〉/海外拡販と国内効率化などに注力〉

 テイジンフロンティア〈タイランド〉は、海外拡販や効率化などに重点的に取り組む。

 2025年度は、タイ内需低迷やバーツ高、米国の関税政策の影響から減収で推移した。ゴム資材は二輪車と農機用の伝動ベルトが好調に推移し、ベルト補強材も堅調だった。ただ、タイヤコードは中国内需の低迷と中国メーカーによる安値攻勢で苦戦。原糸・原綿の販売もタイの寝具や自動車用途の需要低迷で勢いがない。テキスタイルはインド向けが拡大したが、内需は低迷した。

 26年度も既存事業の海外拡販、国内サプライチェーンの効率化、新製品・新市場の開拓・開発に力を入れる。地政学リスクから“地産地消”ニーズも高まっており、タイへの引き合いも多い。こうした状況を商機と捉え、取り組みを進める。

〈タイ・ナムシリ・インターテックス/インド市場を重視〉

 ポリエステル長繊維織物製造のタイ・ナムシリ・インターテックスは、ASEAN地域における生地生産の“キー拠点”を目指し、サプライチェーンの再構築に取り組む。

 2025年度は、特殊生地や軽量高通気生地は堅調だが、バーツ高など事業環境が厳しく、業績は苦戦した。このため26年度は一般衣料向けで定量的な受注を確保しながら、機能素材を拡販する。特にインド市場を最重要市場と位置付ける。

 世界的に“脱・中国”の動きが強まっていることを好機と捉え、ASEAN地域での生産拠点としてサプライチェーンの再構築に参画することを目指す。

〈テイジンフロンティアインドネシア/一貫生産生地を提案〉

 テイジンフロンティアインドネシアは、インドネシア一貫生産を生かし、“地産地消”ニーズに対応した高品位・高品質なサプライチェーンを構築する。

 現地の市況は、安価な中国品の流入によって低迷が続いていたが、ようやく底入れ感が出てきた。一部優良企業は脱定番商品への構造改革が始まった。同社の2025年度業績も産業資材用途の需要が自動車販売台数減少の影響で減退したが、全体では増収増益で推移。高品位・高品質で完成度の高いサプライチェーンの構築に取り組む。

 ASEAN地域では中国からの生産移転や地産地消ニーズが増加していることを商機ととらえる。4月15~18日にジャカルタで開催される展示会「INATEX&INDOインタテックス」に出展し、インドネシア一貫生産の機能テキスタイル・製品を提案する。

〈テイジンフロンティア〈ベトナム〉/シューズ向けを第2の柱に〉

 テイジンフロンティア〈ベトナム〉の2025年度業績は、対日OEM減少で減収ながらも、利益は人工皮革「コードレ」の拡大で前期並みを確保する見通し。今後はシューズ向け高機能テキスタイルを第2の柱に据え、自律的成長を加速させる。

 OEM事業の市場環境は日米欧ともに厳しいが、コードレの生産体制強化で天然皮革の代替需要を捕捉し、車載資材などへの用途拡大も進める。衣料品はグループ連携による「素材から製品までの一貫提案」で欧州市場などを開拓していく。従来のサポート主体から、自社決済の「オウンビジネス」拡充へとシフトする。営業人員増強や人材育成を通じ、不透明な環境下で競争力を高める考えだ。

〈テイジン・コード〈タイランド〉/開発ニーズに迅速対応〉

 ゴム資材向けシングルエンドコード加工のテイジン・コード〈タイランド〉は、現地の開発ニーズにスピーディーに応えるため、開発機能を強化する。

 2025年度は伝動ベルト補強用が海外からの廉価品流入で低調だが、自動車向けは堅調。ゴムホース補強用も前年度並みで推移している。このため、ほぼ計画通りの販売となったもようだ。

 今後の重点戦略として、旺盛な現地の開発ニーズに応えるために、帝人フロンティア本体の技術部署との連携を強化し、開発機能を高めた。また、開発品の生産スペース確保のために既存の生産プロセスの改善による効率化や、将来的な設備増設も検討する。

〈テイジンFRAタイヤコード〈タイランド〉/高付加価値品へ転換〉

 タイヤコード製造販売のテイジンFRAタイヤコード〈タイランド〉は、市況が厳しい中で新規顧客獲得と高付加価値品への転換に取り組む。

 同社の販売先は、直接・間接含めて米国向けが40%を占める。このため2025年度は米国市場の市況と関税政策の影響を受けた。26年度も需要に対して供給が過剰な状況が続くとみている。こうした中、26年度は一部顧客のシェアを取り戻すことに取り組み、後半には新規銘柄の立ち上げを進めることで販売量の拡大を目指す。

 供給過剰によって市況が振るわないことから、24年から重点的の取り組む新規顧客開拓と高付加価値品への転換に力を入れる。「世界一の品質を社会に提供する」をスローガンに掲げ、25年から合弁会社の日本工場での実地研修も制度化した。