特集 アジアの繊維産業(6)/「VIATT2026」レビュー/独自素材で切り込む日系各社/地場ブランドの高度化に対応

2026年03月18日 (水曜日)

 繊維総合見本市「ベトナム国際アパレル・繊維・繊維関連技術見本市」(VIATT2026)が2月26~28日の3日間、ホーチミン市のサイゴン展示・コンベンションセンター(SECC)で開催された。3回目となった今回、日系出展者からは現地法人の設立や機能強化を相次いで断行するなど、ベトナム市場に懸ける強い意欲が伝わってきた。台頭する地場ブランドへのアプローチを一段と鮮明にした。(ホーチミン=岩下祐一)

〈市場成熟で戦略シフトへ〉

 今回の展示面積は前回を上回る1万8千平方メートルに拡大し、20カ国・地域から約460社が集結した。国・地域パビリオンは日本、韓国、中国、台湾、インド、欧州のほか、新たにドイツとトルコが加わり、国際展としての色合いを一段と強めた。

 日系企業からは、スタイレム瀧定大阪、瀧定名古屋、サンウェル、ヤギ、豊島、田村駒、MNインターファッション、クラボウ、シキボウ、東洋紡せんい、島田商事、清原、柴屋、フジサキテキスタイルなど有力どころが出展。各ブースに共通していたのは、ベトナムを製品の輸出拠点から、素材と製品の地産地消型の拠点へと再定義する動きだ。

 背景には、ベトナム国内のアパレル市場が60億~80億ドル規模に達し、年率10%前後の成長を続けている事実がある。所得向上に伴い、消費者の関心は低価格なカジュアルだけでなく、品質やストーリー性を重視する高級ゾーンにも広がりつつあり、地場の中高級ブランドが存在感を増している。日系各社は、この変化を内販ビジネス本格化の好機と捉えている。

 内販積極化の急先鋒が、2月1日付で現地法人を設立したスタイレム瀧定大阪だ。10年以上の駐在員事務所体制を経ての現法化は、意思決定の迅速化と、欧米輸出および内販向けのさらなる機能拡張を狙ったもの。ブースではインドの綿花農家を支援するサステイナブル素材「オーガニックフィールド」や、北陸産のスポーツ機能素材を提案。豊富な在庫を背景とした即納体制をアピールし、新興ブランドの心をつかんだ。

 瀧定名古屋も合繊使いのファッション生地と、スポーツ素材の2軸で攻勢をかける。特に意匠性の高いレースやセットアップ向け素材が、現地の高級レディースの関心を集めた。

 サンウェルは日本、上海、タイのグループ拠点が連携した備蓄体制を強調。市場のポテンシャルを高く評価しており、拠点新設を含めた体制強化を検討している。

 ヤギは、ミラノや上海を含むグローバルネットワークを駆使した全方位提案を披露。糸、丸編み地、織物、最終製品までを網羅する機動力とトレンド発信力を融合させ、地場顧客の新規開拓を加速させている。

 豊島は、開発に2年半を投じたベトナム産パイナップル繊維を主役に据えた。このサステ素材は、既に欧米や日本で評価を得ており、今回を機に地場ブランドへの本格導入を目指す。

〈高まるメーカー機能〉

 自社工場や拠点をアップグレードさせる企業の動きも目立った。東洋紡ビンズンは、2024年に卸売ライセンスを取得したことを契機に、高機能素材の内販を本格化している。今回展では、膨らみと軽さを両立した「bounZa」(バウンザ)をメインに提案した。

 シキボウは、法人化から2年を経て、ナショナルスタッフが商談から成約までを完結できる体制を構築している。ワークウエア向けの高通気素材など、地産地消の機能素材を軸に成約率を高める。

 島田商事は、現地調達率90%超の供給力と自社ラボによる品質保証をアピール。日本、欧米、ベトナム国内の3極対応サプライヤーとしての地位を固めている。

 初出展となったフジサキテキスタイルは、昨年12月に設立した現地法人を軸に、和歌山産丸編み地のストックサービスと、東レなどの日本メーカー製の原料を使った現地生産品を紹介。現法設立による現地通貨決済機能という武器を加え、小ロット・即納ニーズに応える。

 主催者側も、地場ブランドの開拓を促す仕掛けを強化した。新設された「ライフスタイル・トレンドフォーラム」はフランスのトレンド予測機関、ネリー・ロディが監修。「クラフツマンシップ」をテーマに27春夏のトレンドを提示し、地場ブランドのデザイナーを引き付けた。

 主催者によるバイヤー招へいプログラムも奏功した。招かれた高級メンズ「ジョバンニ」の幹部は、「日本製素材は品質が高く、富裕層の信頼も厚い。ストーリーを重視するわれわれにとって、日本製であることは大きな付加価値だ」と断言。製造大手の自社ブランド「MAY10」も、豊富な選択肢を持つ日系サプライヤーとの連携に意欲を示した。

 生産拠点から有望な消費市場へと変貌を遂げるベトナムにおいて、長年培った開発力や現法化によるクイックデリバリーを武器にした日系勢の存在感が、今後さらに高まっていきそうだ。