特集 アジアの繊維産業(7)/わが社のアジア戦略/一村産業/グンゼ・繊維資材事業部/ブラザー工業/QTEC/豊島

2026年03月18日 (水曜日)

〈一村産業/ベトナム生産を拡大〉

 一村産業(大阪市北区)は、引き続き日本を柱にしながら海外生産も強化し、グローバルサプライチェーンを整備していく。リードタイムの短縮による「QR価値」の向上が狙い。足元ではインドネシアでの生産を減らしながら、ベトナムを強化している。

 今期(2026年3月期)はベトナム生産品の取扱高が前期比微減となる見通しだが、来期(27年3月期)は数量ベースで5%ほど伸ばす計画。現地での取り組み先も拡充しており、特に生機~染色加工での取り組みを強化する。来期はユニフォーム用途を中心に伸ばす考え。

 日本の染色スペースがタイトな中、対応し切れない部分をベトナムで補い、リードタイムの短縮につなげていく。ベトナムは大きな縫製地であることも背景にあり、日本の特徴ある生機をベトナムで染色加工する形も含めて取り組みを強化する。

 顧客に対する「QR価値の提供」を重視する方針が背景にある。日本を軸にしながらグローバル生産も整備することでリードタイムを短縮し、アパレルの納期への要望に応えていく。

 QR価値の向上に向けて物流の最適化にも取り組む。ラック化など運び方を工夫し、日本の主要港だけでなく地方港も活用するなど各面を見直し、顧客のロケーションごとに最適な物流を組み立てていく考え。

〈グンゼ・繊維資材事業部/欧米アパレル向け強化〉

 グンゼの繊維資材事業部は、海外でのミシン糸販売を増やしている。2025年の販売金額は中国、バングラデシュ、ベトナムでそれぞれ2桁%の増加となるなど、海外販売全体では前年比で約12%増加した。

 石川賢三・繊維資材事業部長は「ベトナム、バングラデシュでの販売に勢いがあり、中国の増加も産業資材用途の販売増に加え、東アジア地域での衣料品用途で使われるケースが増えている」と話す。

 各国での日系企業向けの販売は「頭打ち感がある」が、欧米アパレル企業向けは「大きく成長する余地がある」と話し、特にバングラデシュ、ベトナムでは生産設備の増強も進めている。

 営業政策では、部材調達や製品企画の決定権者がいる米国本土や香港での営業活動強化のため、現地エージェントの活用や駐在員の増強を進める。

 並行して、各国の自社拠点間の情報共有も強化する。これまでは生産拠点ごとの「現地完結型ビジネス」の傾向が強かったが、欧米アパレル企業がASEAN域内で分散生産するのが主流となる中、各国拠点の「横の連携」を深め、各拠点、域内での拡販を図る。

 製品提案では欧米向けで必須となりつつある環境対応を重視。全品のリサイクル糸対応を訴求するほか、繊維長の長い素材使いによる「肌触りの良さ」も追求する。

〈ブラザー工業/非アパレルへ新技術訴求〉

 ブラザー工業は自動車など非アパレル向けの工業用ミシンの販売を伸ばす。独自開発による0・01ミリ単位の調整を可能とする新技術を訴求。工場の無人化に向けた提案も進める。

 今期(2026年3月期)は非アパレル向けが健闘した。中国は自動車の生産台数が伸びており、カーシートやエアバッグ向けで採用が進んだ。今後はタイやベトナム、インドなどに投資需要があるとみる。

 非アパレル向けで武器となるのが独自技術「デジフレックス・チューン」だ。作業者の感覚に頼っていた調整をデジタル化することで、人や環境による精度のばらつきを抑えることができる省人化や生産性向上に寄与する。

 次の一手として見据えるのが「無人化」だ。自動車関連の工場では無人化ニーズは旺盛だ。1月に事業の一部を譲受したドイツのシステムインテグレーター、コンラート・ブッシュの技術を生かす。ミシンと無人化に貢献する周辺装置を組み合わせた提案で非アパレル向けの拡大を目指す。

 一方、アパレル向けは市況回復の兆しがある。インドは米国による高関税が撤廃されたほか、バングラデシュは政権基盤が安定するなど需要増への追い風となりそう。

 ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃があり先行き不透明感も漂う。

〈QTEC/各拠点で確実に成長〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、アジアでのビジネスが成長を続けている。2025年度は、ベトナムとバングラデシュ、中国のいずれもが前年を上回る見通し。対応可能試験やサービスの強化に加え、人材育成の成果も出てきた。26年度も成長を目指す。

 ベトナム試験センターの業績拡大は、米国の関税政策などからチャイナプラスワンの流れが加速したことが奏功した。新規顧客の獲得にもつながり、26年度は対応力を強化して需要を着実に取り込む。提携機関との連携で海外規格にも対応できるという強みも前面に押し出す方針だ。

 ダッカ試験センターは、2月の総選挙実施など不安定要因がある中、既存顧客からの依頼が比較的順調で前年比微増で推移している。ナショナルスタッフ(NS)が日本でフーリエ変換赤外分光分析(FT―IR)の研修を終えており、来年度はそれを生かせるよう設備導入を検討する。

 中国は、伸び率に違いはあるものの、各拠点で前年実績をクリアできる見込み。上海総合試験センターは、大手GMSや寝具関係が数字をけん引し、南通試験センターは機能性試験機の導入によって試験依頼が増えた。

 26年度の海外事業は、NSを軸とした営業体制の強化、対応可能試験拡充に力を入れる。

〈豊島/素材の「現法連携体制」磨く〉

 豊島は中国、香港、ベトナム、インドネシアの各現地法人が連携し事業展開を進める。

 中核は約40年の歴史を持つ豊島国際〈上海〉。本社向け中国製品のサポートから開始し、2004年に素材部門を設立、対日と中国内販を始めた。10年には製品内販を開始。日系スポーツブランドの中国進出を素材と生産管理の両面で支援。現在はグループ最大のフル機能拠点へ進化した。

 素材は日本に加え、中国、ベトナム、インドネシアの各現法で展開する。中国のみならず、ベトナムとインドネシアにも日本から素材担当の駐在員を派遣し、現地主導の独自開発を強化する。また中国素材を上海法人からベトナム、インドネシアにも供給。拠点間の情報を共有し、シナジー創出を加速させる。

 中国の労働力減少に伴う縫製のASEANシフトが進む一方、同地域では人件費上昇や、生産・輸送リードタイムの長期化が課題。これらに加え、地政学リスクも意識したバランス良いサプライチェーン構築が求められる。

 こうした中、経験豊富な豊島国際〈上海〉の成功モデルをASEAN拠点へ伝えることに注力。中国系の工場もあることから、上海法人の商習慣に関する知見や、ナショナルスタッフによる現地の生産管理サポートなどを活用し、アジア全域での競争力を底上げする。