東レ・ペンファブリックの挑戦~スパン旗艦拠点の再生、そしてASEAN開発ハブへ(中)

2026年03月19日 (木曜日)

構造改革で多様な素材開発へ

 ペンファブリック(PAB)の構造改革において、最も象徴的な決断となったのが、自社紡績工程からの撤退である。1970年代の創業以来、グループの垂直統合モデルを支えてきた看板機能であったが、新型コロナウイルス禍のただ中にあった2021年、自社紡績工場を閉鎖した。この決断は、単なる規模縮小ではなく、紡績糸の選択肢をこれまで以上に多様化することで高付加価値拠点へと脱皮するための攻めの一手であった。

 PABは元々一貫工場としては、原綿、紡績糸、生機の外からの購買の自由度が高かったが、自社紡績から退いたことで、従来以上に原綿からこだわった多様な紡績糸を開発・採用することが可能になった。東レ本社の差別化糸をはじめとするナイロン、リサイクルポリエステル、セルロース繊維、さらには長短複合素材など、従来のポリエステル・綿混(T/C)特化体制では考えられなかった変幻自在な「ハイブリッドスパン素材」の開発が加速している。

■無駄の排除徹底

 織布工程における糸の無駄の徹底的排除も実現した。23年12月に導入した最新の自動ワインダーにより、整経工程で残った少量の糸をつなぎ合わせ、使用を最大化している。

 また、糸の欠点を自動除去することで、後工程でのトラブルを防いでいる。この設備投資は、大きなコスト削減効果を生んだ。わずか1年強で、投資額を回収するという極めて高い効率を記録している。

■スマート工場へ

 日本の先端技術を軸に省人化投資も徹底されている。織布工程で、日本の物流大手、ダイフクと共同開発した自動倉庫システムを生機ロール用とビーム用に相次いで導入し、人の力に頼った業務を減らしている。重量物のハンドリングを自動化することで、現場の安全性を飛躍的に高め、大幅な人員削減と固定費低減を同時に実現した。環境面でも、燃費改善と二酸化炭素(CO2)削減の両面に取り組んでいる。

 こうした現場力の底上げは、品質という明確な数字となって結実している。悪化していた生機の不良率は、東レ本社技術部門と連携した特別チームによる週次の工程改善活動により、驚異的な水準まで低減した。この品質向上だけで、大幅な変動費削減という実利を生み出している。