東レ・ペンファブリックの挑戦~スパン旗艦拠点の再生、そしてASEAN開発ハブへ(下)

2026年03月23日 (月曜日)

「合繊の志」を世界へ

 ペンファブリック(PAB)の今後の「攻め」の鍵を握るのが、新たに立ち上げられた「Strategic Merchandise Dept」(SMD、商品戦略部)だ。最新の市場ニーズをくみ取り、工場の多様な設備を組み合わせて素材を高度化し、ラインアップを拡充するための企画・立案を担う。同部が機能し始めたことで、PABの営業活動は新たなフェーズに入った。

■過半数を「ハイブリッド」に

 新戦略の中核は、六つのカテゴリーからなる「ハイブリッドスパン素材」である。長短複合、化繊混、ナイロン・綿混、機能性付与など、従来のT/C(ポリエステル・綿混)の概念を塗り替える商品群だ。「2028年にはこの比率を過半数まで引き上げたい。差別化原料を用いるため生産難度は上がるが、それは参入障壁の高さにもつながる。機能性や風合いの差別化によってコストを上回る付加価値を追求したい」と、北原亮平営業本部長は意気込む。

 その旗印となる素材ブランドが「エボトゥルース」である。中国ブランドに好評の高透け防止・高UPF・汗染み防止を備えた「ホワイト」や、高い通気性で着心地を追求した「コンフォート」を軸に、日本、韓国、インド、ベトナム、欧米へと今後横展開していく計画だ。

■マレーシアならではの戦略

 PABの現在の強みは、一つの工場内に連続染色と液流染色の両方を持ち、海外製のエアタンブラー機や高度なラミネーション設備、先染め・プリント・起毛設備までを備えるASEAN地域では希少な設備構成にある。「効率優先で大量生産を行う中国に対し、われわれは多様な設備を高度に組み合わせ、中国ではまねできない複雑でとがった生地を作る」(北原営業本部長)。これを、マレーシアならではの差別化戦略と位置付ける。

 さらにPABが重視するのが、東レが長年培ってきた「合繊の志」の伝承だ。単なる素材販売にとどまらず、技術の価値を正しく理解し、適正な価格で世界へ提供する。この志を中国系、マレー系、インド系が集うナショナルスタッフに浸透させようとしている。

 現在のPABは、自社開発商品をインドネシアのグループ拠点へ技術移管して量産させるなど、ASEANの「スパン織物のマザー工場」としての役割も担う。

 低迷の時代を乗り越え、先端技術と多様な人材が融合する「スパンの東レ」の象徴へ――。PABは独自の差別化戦略を武器に、世界のアパレル市場を切り開こうとしている。

(おわり、マレーシア・ペナン州=岩下祐一)