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ベトナムの日系企業/現法設立など活発な動き/内販“全方位”で加速へ

2026年03月24日 (火曜日)

 ベトナムにおける日系企業のビジネスが転換期を迎えている。成長する国内市場を見据え、これまでの輸出向け製品の生産から、“全方位”の内販シフトが加速する。各社は現地法人設立や、素材の現地開発強化などの布石を打つ。(ホーチミン=岩下祐一)

 ベトナムのアパレル市場は約60億~80億ドル規模で、年率10%前後の成長を続けるといわれる。所得向上に伴い消費者の関心は品質やストーリー性を重視する高級ゾーンへ広がり、地場の中高級ブランドも台頭。日系各社はこれを、内販本格化の好機と捉える。

 伊藤忠商事の現地法人、プロミネント〈ベトナム〉は、内販のターゲットを従来の主力1社から4社へ拡大。日系ブランドの生産で培ったパターンなどを武器に開拓を加速する。

 副資材大手の島田商事ベトナムは、今年1月に内販参入を決定。内販でも地産地消によるリードタイム短縮と、トータルコストの総合力が武器になるとみる。ホーチミンで開かれる繊維の国際見本市「VIATT」などを活用し、新規顧客の開拓を進めている。

 現地での素材開発も熱を帯びる。豊島は開発に2年半を投じたベトナム産パイナップル繊維素材を主役に据え、地場ブランドへの本格導入を目指す。シキボウもワークウエア向け高通気素材など、地産地消の機能素材を売り込む。

 拠点機能を格上げする動きも目立つ。スタイレム瀧定大阪は2月1日付で現地法人を設立し、10年超の駐在員事務所体制を刷新。フジサキテキスタイルも昨年12月に現法を設けた。サンウェルも拠点新設を含めた体制強化を検討している。

 ただし、日系企業の生地の内販市場は規模が限られるため、各社は糸から生地、製品までを網羅する全方位での拡大を模索する。地場ブランドは成長途上で、高付加価値素材を採用できる層はまだ厚くない。日系企業の生地内販の最有力顧客と目される高級レディース「チック・ランド」には、日系各社の提案が集中し、「既にお腹いっぱい」(生地商社幹部)との声も漏れる。

 こうした中、スタイレム瀧定大阪の新法人は生地ではなく、製品の内販を戦略の第一に掲げる。自社開発の生地と現地の縫製背景を組み合わせ、従来の輸出に加え内販を拡大する方針だ。ヤギも内販で糸、生地、製品をフルラインアップで展開していく。

 市場のポテンシャル自体は高い。地場高級ブランド「ジョバンニ」幹部は、「日本製は品質が高く、ストーリーを重視するわれわれにとって大きな付加価値だ」と言い切る。

 一方、課題は日本素材のブランディングだ。ある地場ブランドからは「中韓の生地に比べファッション性が劣り、高価格で納期も長い」との声も聞かれ、企画力や即納体制などの日本素材の強みが広く認知されていないことを示唆する。中国市場での成功を生かし、ベトナムでも日本素材の価値を再定義し、ブランド力を構築する段階に入った。