特集 北陸産地(1)/環境の変化に迅速に対応/先の不透明感が増す/海外シフトの影響も

2026年03月27日 (金曜日)

 北陸産地の景況は昨年後半から一段と先の不透明感が強くなっている。一部用途の回復遅れや好調だった用途の一服感に加えて、海外シフトが進んだことなども影響する。今後の市場環境を厳しくみる声が多い中、事業環境の変化に合わせた迅速な対応や新たな仕掛けが重視されている。

 北陸3県の織物生産量は新型コロナウイルス禍の影響を受けた後に、2022、23年と回復したが、24年からは再び減少に転じている。各県の統計によると、25年は福井県が1億5200万平方メートルで前年比2・6%減、石川県が2億5100万平方メートルで同0・2%減とともに前年を下回った。

 福井県はポリエステル、ナイロンとも前年比減だった。ポリエステルは6月まで堅調に推移していたが、7月以降の減速が大きく、年間では前年比1・6%の減少となった。ナイロンも前年比増となったのが7月のみで、通年では前年比6・4%減と落ち込んだ。

 一方、石川県はナイロンが前年比27・7%増と好調だったが、ポリエステルなどの減少をカバーし切れなかった。ナイロンは産地での増設もあり、全ての月が前年を上回る形で推移したが、ポリエステルは7月以降前年比2桁%の減少が続いた。

 需要はスポーツ・アウトドアなど好調だった用途も減速し、全体として昨年後半から減速感が強まっている。衣料用途はビンテージ調や猛暑対策などの売れ筋はあるが、全体では国内、中国、欧州などの消費停滞があり、作り方や売れ筋の変化も影響している。インテリアなど低迷が続く分野もあり、好調が続いていた民族衣装用途も中国勢の攻勢と流通在庫増大の影響が出始めたところに、米国・イスラエルのイラン攻撃による中東情勢の緊迫化もあり、先が見えにくくなっている。

 人手不足などを背景にした長納期化が課題となる中、その対応として海外生産の活用が進んだ観もある。特徴ある生機を日本から輸出して海外で染める形を含めて増える流れにある。産地の稼働につながっていた大型アイテムの海外への移行も進みだし、インテリアに続いてカジュアルなどでも影響が見られる。これまでスペースがタイトだった分野でも、先の不透明感が増しており、4~6月以降の市場環境を厳しくみる声が増えている。

 合繊メーカーの繊維事業再編など24年から加速している事業環境の変化への対応も、産地企業にとって重要度が増している。今年は帝人フロンティアと旭化成アドバンスの統合など産地と関わりが深い企業の再編も予定されており、新たな変化への迅速・柔軟な対応を重視する声はますます多くなっている。

 分業体制が整う産地の機能維持への関心も改めて高まっている。糸加工や製織、染色加工だけでなく、サイジングなど準備工程を含めて産地のスペースは漸減が続く。市況の低迷時に廃業が進み、回復した時にはスペースが足りず対応し切れないという循環は、産地縮小を加速させる可能性もある。大手メーカー・商社の設備投資を含めてスペース縮小への対応が進んでいることもあるが、「改めて対応を検討すべき時期」と指摘する声も聞かれる。

〈福井県繊維協会/「新雌塾」の報告会〉

 福井県繊維協会は、播州織発のブランド「タマキニイメ」を展開する玉木新雌(兵庫県西脇市)と取り組み、「新雌塾」を開催している。人材育成などを狙いに「福井県繊維産地コーディネーター設置支援事業」として取り組んでいるもので、3年計画の2年が経過し、参加企業の新たな開発や販路開拓も進みだしている。

 玉木新雌の玉木新雌代表による講演や産地企業への訪問、参加企業が播州織産地を訪問しての交流などを経て、2年目の2025年度は消費者向け製品の開発やBtoB向けテキスタイルの開発をテーマに取り組みを進めてきた。昨年は要望があった10社を玉木代表が訪問し、各社の状況に応じた考え方や開発の進め方について意見交換を行った上で、それぞれの企業が開発を進めてきた。

 9日にはその取り組みの報告会が福井県繊協ビルで開かれ、アタゴ、カツクラ、サバエセンイ、第一織物、八田経編、ハルテック、福広、矢地繊維工業、山甚撚糸が、商品開発や販路開拓の進捗(しんちょく)や成果を発表。それを聞いた玉木代表がそれぞれの企業にアドバイスを送り、今後の開発を促した。

 玉木代表は04年にタマキニイメを立ち上げた後、09年から西脇市に移住し、播州織産地を盛り上げる活動にも力を入れてきた。福井県勝山市の出身で、今後は福井産地の活性化につながる取り組みにも力を入れていく考え。26年度は、福井県内で開設を検討している直営店で、産地企業の開発品を販売することも検討しているという。