ごえんぼう

2026年03月30日 (月曜日)

 先日、淡路島の伊弉諾神宮に参拝した。国生み神話の舞台とされるこの地は、静謐な空気に包まれながらも、多くの参拝者でにぎわっていた▼境内を散策していると、やや異質な軍人の銅像が目に入った。銘板を読むと、旧日本陸軍の樋口季一郎中将だった。神を祀る場に近代の軍人が顕彰されていることに、一瞬戸惑いを覚えた▼樋口は旧満州国で、ソ連やナチスドイツの迫害から逃れてきたユダヤ難民の通過を認め、多くの命を救った人物として知られる。さらに終戦直前、ソ連侵攻に際して北海道防衛の指揮を執り、北方の要衝を守り抜いた。その判断力と行動力は、国家の帰趨を左右しかねない局面で示された▼国を生んだ神と、国を守った人が同じ空間にたたずむ。そこに重なるのは、日本の起点と、その存続を巡る現実だ。防衛政策の転換が問われる中、直視を避け続けてきた問題に向き合う段階に差し掛かっている。