特集 尾州産地総合(5)/尾州繊維産業の根幹を担うFDC

2026年03月30日 (月曜日)

〈尾州の企業支援や振興に関わる〉

 尾州ファッションデザインセンター(FDC)は1984年2月の開設から40年以上の歴史を持つ。2024年4月に一宮地場産業ファッションデザインセンターから現施設名に改称した。尾州の企業支援や振興に関わる拠点として機能を果たす。

 FDCは愛知県尾張西部の中央に位置し、あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センターと隣接する。各機関が機能を補完しながら連携を図る。

 糸や生地の展示商談会の実施や、卓越した技術を持つ「匠」を講師に迎え、人材育成や技術継承への機会を創出する。尾州生地を訴求する一環として「尾州マーク」の認証も行うなど、数多くの事業を継続している。

 活動内容は①尾州の企業・製品・サービス紹介の「プロモーション事業」②“モノ作り”の技術向上を目指す「プロダクト事業」③将来を担う人材の育成に取り組む「人材育成事業」④常設展示で産地製品を紹介する「アピール事業」⑤体験型イベントを開く「アミューズ事業」――だ。

 産地と企業を紹介するポータルサイト「BISHU-JAPAN.com」も運営開始から6年目を迎える。ワークショップイベントや、糸や生地などを販売する「糸と布の市」も定期的に開く。

〈自動車関連企業と尾州の競演/アップサイクルマルシェ初開催〉

 FDCは初の試みとして、愛知県に本社を置く自動車関連品製造企業と尾州の企業が協業した「アップサイクルマルシェ」を実施した。協業により制作した商品はジャパン・ヤーン・フェア(JY)と併催した総合展「THE BISHU」で披露され、来場客の注目を集めた。

 参加した自動車関連企業はトヨタ紡織、豊田合成、東海理化の3社。尾州企業からは中隆毛織、宮田毛織工業、ササキセルム、時田毛織、森保染色、中伝毛織の6社が協業した。

 自動車内装品や部品からやむなく排出される繊維製端材と尾州で製造されたデッドストック生地や独自技術を生かし、商品化が実現した。プロジェクト推進から3カ月余りの短期間での実現となった。

 シートベルトの端材を反毛した糸から編み立てしたTシャツや、カーシートの端材でポーチやランドセルカバーを制作するといった試みが展開された。出展した自動車関連企業からは「尾州のモノ作りの技術に感銘を受けた」という声もあった。今後もこのプロジェクトに参加したいという前向きな姿勢も見られた。

〈糸・生地の優位性を訴求/JYは2月実施、BMEは4月開催〉

 FDCが主催する、全国規模の糸の展示商談会「第23回ジャパン・ヤーン・フェア」(JY)は2月19、20日の2日間、いちい信金アリーナ(愛知県一宮市)で開かれた。

 今年は初出展1社を含む43社・2団体が出展した。各社が機能性や意匠性を持つ高付加価値の差別化糸を披露。染色整理企業や繊維関連機器を扱う企業もアピールを図った。

 同時開催の総合展「THE BISHU」を合わせた来場者数は3583人(昨年は3388人)だった。JYでは、生地商社の来場者が増えた。総合展「THE BISHU」は15回目の開催となった。さまざまなコンテスト優秀作品の生地や衣装を展示した。製品や生地、糸を販売する「糸と布の市」も開かれた。

 新作服地の展示会「2027S/S ビシュウ・マテリアル・エキシビション」(BME)は4月23、24日にウィズ・ハラジュク・ホール(東京都渋谷区)で開く。今回も尾州の生地商社や、製織・染色整理企業など13社が出展する。

〈「尾州マーク」浸透度深まる/ブランド化や価値向上に貢献〉

 FDCは2016年4月に「尾州マーク」の認証制度を始めた。プロモーション事業の一環で、尾州産生地・素材の優位性を示す目的として制定し、10年の節目を迎える。

 FDCが指定する条件を満たせば織りネームやラベルなどの副資材を扱うことができる。アパレルや服飾雑貨向けが主力だが、インテリア向けなど多方面に使用例が広がる。

 副資材の累計販売枚数は350万点を超えた。2月末までの累計認証件数は2659件(前年から363件増)、販売実績はタグが266万4301枚(同38万2702枚増)、ネームは104万6959枚(同15万9117枚増)で、数量を伸ばした。ネームの累計販売枚数は100万枚の大台を突破した。

 認証の条件は①製織・編み立てと整理加工の2工程が尾州産地で行われる②尾州産地で培われた技術的優位性や意匠性を生かして製造されたもので、モノ作りのストーリーを消費者に訴求できる――で、いずれも満たすことが必要となる。

〈尾州の強みや今後について討論/繊維商社登壇 トークショー実施〉

 10年後も織機の奏でる音が響く尾州であってほしい――。総合展「THE BISHU」では尾州と協業を深める繊維専門商社と、国際ファッション専門職大学の篠原航平教授がトークショーを実施した。尾州の現状や課題、強みや今後への展望など、活発な意見交換を繰り広げた。

 「尾州産地に求められているもの」と題して、尾州の歴史的背景からさまざまな取り組みの現状について議論は進んだ。商社からはタキヒヨー・片倉浩氏、スタイレム瀧定大阪・小川良太氏、瀧定名古屋・山口祐海朗氏の3氏が登壇した。

 トークショーは各社の取り組みに加えて、尾州産地の歴史から縮小した現在、どのような強みを見せてモノ作りを進めるかを紹介した。尾州と協業する具体的な取り組み事例も披露。海外市場への訴求強化や、市場が求める傾向を共有するといった“出口戦略”も必要だとの意見もあった。

 トークショーの模様はFDCが運営するサイト「THE BISHU」から視聴できる。