特集 尾州産地総合(6)/尾州をけん引する有力企業/浅野撚糸/栄光染色/ササキセルム/小塚毛織/ソトー/中伝毛織

2026年03月30日 (月曜日)

〈浅野撚糸/防縮ウール撚糸拡販〉

 撚糸・タオル製造の浅野撚糸(岐阜県安八町)は、防縮ウールに独自撚糸加工「スーパーゼロ」を施した撚糸の販売に注力する。セーター向けの採用を視野に、複数のアパレル企業が触手を伸ばす。肌着、ルームウエア、寝具への使用を見据えた試作依頼も増える。

 かつてはウールの撚糸加工が受託量全体の80%近くまであったという。現在はタオル向けを中心に綿糸への加工が主流だ。綿に加工した撚糸の販売もデニム、シャツ地、寝具向けなどさまざまな品目に広まる。今後はウール使い撚糸の拡販に向けた施策を展開する。

 浅野雅己社長は「ウールの時代は到来する。尾州企業との協業の機会も増やしたい」と話す。防縮ウールにスーパーゼロ加工した撚糸で編み地にすると、肌触りのしなやかさと表面のヌメリ感、上質な光沢が表れる。防縮ウールを使用するため、肌へのチクチク感もなく、素肌への着用にも申し分ない。尾州の企業として、受託ができるように体制を整える。

〈栄光染色/希少な染色技術を生かす〉

 わた染め・糸染めを主力とする栄光染色(愛知県一宮市)は、尾州の地域性や希少なわた染めの技術を生かし、染色加工や機能性付与加工などに対応する。

 尾州は日本の中央に位置し、水が豊富で排水処理の機能を含めた循環サイクルがあるなど、染色整理加工に適した地域だ。尾州に位置する栄光染色は、そのメリットを生かしつつ、希少なわた染めの技術を将来に継承するのが使命だと考える。

 現在は学生服向けの加工が調整期を受け減少傾向にあるが、染色の試作依頼や、機能付与加工の試験依頼は増え続ける。廃業を余儀なくされた染色企業の商権も引き継ぎながら、販売先と共存共栄で前に進む姿勢を貫く。

 アパレル向けなどは本社工場を中心に受託するが、笠松工場(岐阜県笠松町)での“染めない加工”の受託増も狙う。機能性付与加工で、産業資材やインテリア向けに販路拡大が期待できる。奥村健社長は「非染色加工の比率を高め、新たな事業への参入を目指す」と話す。

〈ササキセルム/尾州連合の知見を反映〉

 生地商社のササキセルム(愛知県一宮市)は、尾州で培った製造技術や加工技術の豊富な知識を基に、差別化した生地を販売する。海外や国内他産地を生産拠点とする企業との協業にも生かす。

 佐々木淳夫専務は「当社は尾州に支えられている。尾州連合とも言うべき製販のネットワークを生かし、生地販売で貢献したい」と話す。メーカーに近い商社として、尾州ならではの独自技術や強みを熟知しながら、独自性を高めていく。

 国内では尾州を軸に北陸や桐生など、地域特性を生かした生地の企画・開発を進める。海外では現地法人を構える中国や、台湾、韓国などを生産・調達拠点に持つ。日本国内で販売できる品質の担保に課題を残す点もあるが、尾州で培った知見を基に、確かな品質の生地供給に徹する。

 強みは豊富な種類の生地を備蓄しながら即応できること。現在、春夏向け商材の拡充と海外販売の伸長を進める。

〈小塚毛織/シャトルのモノ作り訴求〉

 服地製造卸の小塚毛織(愛知県一宮市)はシャトル織機で生産した生地の販売に力を入れる。ストレート糸を使ったフラットな生地をそろえ、幅広い用途に向けて提案する。

 生地はスタイレム瀧定大阪と昨年設立した合弁会社、カナーレジャパン(同)が企画・生産する。小塚毛織は同社が保有するシャトル織機を生かしたモノ作りで差別化を図る。

 カナーレジャパンは「カナーレ」「エッセンス」という生地ブランドを昨年立ち上げた。カナーレはファンシー系が中心だが、エッセンスはフラットな生地で万人受けを狙った。

 エッセンスはウールや綿、シルク使いで、重衣料から軽衣料までと用途は幅広い。小塚毛織は梳毛のスーツ地を主力としており、エッセンスとは親和性がある。

 新規のほかに、既存顧客の高級ゾーンの開拓を進める。小塚康弘社長は「シャトルの良さをきちんと捉えつつ、上質な糸を使ってハイエンド向けを狙いたい」と意気込む。

〈ソトー/意識改革や開発で合繊強化〉

 ソトーは合繊の加工拡大に力を入れる。これまで設備投資を進めてきたが、来期(2027年3月期)は社内教育や生地の独自開発などを推進。ウールに頼らない事業体制を作り上げる。

 合繊の拡大に向け、数年かけて設備投資を進めた。洗い加工機や仕上げ加工機、染色機、カレンダー機などは導入済み。尾州で培った同社ならではの加工で差別化を図る。

 来期は合繊の加工をさらに伸ばすため、経営陣を含めた社内教育の充実を図る。ウールの取り扱いには長けているが、合繊はいまだ途上の段階。ロスの削減や生産性向上にもつなげる。

 グループの連携を生かして独自の合繊生地の開発にも取り組む。同社が強みとするグループ内の企画、織り、編み立て、染色整理加工の一貫生産体制を役立てる。

 今期は梳毛向けが伸び悩んだことで苦戦を強いられているが、来期は合繊の加工が拡大する見込み。合繊複合品を含めて、ニット向けのほか織物向けにも広がりそう。

〈中伝毛織/既存苦戦もデザイナー伸長〉

 服地製造の中伝毛織(愛知県一宮市)はデザイナーズブランド向けを伸ばしている。既存向けが厳しい中で業績を支える原動力となっている。

 今期(2026年6月期)は増収を見込む。既存の生地商社や百貨店向けは苦戦を余儀なくされたが、デザイナー向けなどが伸長したことが寄与。生地単価の値上げも貢献した。

 同社は尾州の産地企業の中では、いち早くデザイナーに目を向け販売を進めてきた。デザイナーの多くはこだわったモノ作りを志向するため、生産機能を持つ同社と親和性があった。

 東京での地道なネットワーク作りのほか、展示会の開催などで知名度を向上させてきた。デザイナー同士は横のつながりが強く、別のデザイナーへ同社の評判が広がり商売に結び付いた。

 同社は自社工場の織り、編み立て機能のほか、グループに染色工場も持つ。一貫したモノ作りで高品質な生地を供給できる体制を敷いている。