AIネイティブと向き合う(上)/26年新卒採用/増員姿勢が鮮明/“タイパ世代”への対応急ぐ
2026年04月01日 (水曜日)
繊維業界における2026年春入社の新卒採用は、総じて増加傾向にある。繊維関連の大手企業を対象に本紙が実施した調査によると、回答した40社のうち18社が採用数を増やし、総採用数は前年比4・6%増の2631人となった。総合職の初任給は26万円を超え、人手不足を背景に人材獲得競争が続いている。(於保佑輔)
今春の新卒採用は、事業統合や再編、新たな中期経営計画の初年度、高卒採用や求人掲載時期の拡大などを背景に増加した。特に東レが461人(前年414人)、TSIホールディングスが337人(同168人)、バロックジャパンリミテッドが61人(同37人)、富士紡ホールディングスが60人(同32人)と採用を増やした。
繊維事業(配属先未定を除く37社)に限れば、採用数は13・7%増の989人となり、各社の増員姿勢が鮮明だ。背景には「事業基盤の安定化と成長を見据え、売上高に対するパーヘッド(従業員一人当たり)を踏まえて決定した」(三陽商会)、「グローバルビジネス拡大に向けた増員」(ヤギ)といった中長期視点での人材確保がある。
一方で昨年より採用数が少なかった企業は増やした企業と同数の18社。採用計画の充足状況では、40社中19社が「予定通り」、12社が「少ない」と回答した。売り手市場は依然として続く。ただ、「早期戦力化を重視し、受け入れ規模を見直した」(菅公学生服)との声もあり、採用は量から質、さらには適合性重視へとシフトしている。
採用手法では、学生との接点づくりの重要性が一段と高まった。短期のオープンカンパニーや職業体験型プログラムの拡充が進み、「学生に、よりリアルな現場を知ってもらう機会を増やした」(スタイレム瀧定大阪)ことで母集団形成(応募者の裾野拡大)を強化した。動画やSNSの活用も広がる。
初任給の上昇も続く。回答のあった33社の平均(総合職)は前年の25万3499円から今年は26万3152円へと約1万円増加。伊藤忠商事は34万円(前年32万5千円)に引き上げたほか、豊田通商、スタイレム瀧定大阪、ワコール、蝶理、豊島も30万円台に乗せた。
学生の傾向としては、「合理性」や「タイパ(時間対効果)」志向を指摘する声が相次ぐ。人工知能(AI)の活用が広がる中、26年の新卒者を“AIネイティブ”と位置付け、「タイパ志向が進み、無駄な行動を排除する傾向が顕著だ」(紡績)との見方がある。また、「合理的な判断を重視し、『なぜ行うのか』を示さなければ主体的に取り組まない」(菅公学生服)との指摘もあった。
さらに、「AIの台頭により、仕事の目的や意義を深く問い、『なぜそれをするのか』という納得感を求める傾向が強まっている」(三陽商会)として、単なる安定志向ではなく、業務の本質的な意味を重視する世代像が浮き彫りになりつつある。
人材確保の量的拡大から質・適合性重視への転換、AIネイティブ世代への対応――繊維企業の採用戦略は新たな局面に入っている。





