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合繊/原油急騰で値上げ不可避/原料供給の制限も不安要素に

2026年04月02日 (木曜日)

 イラン情勢の悪化から原油・ナフサ価格が急騰している。中東地域からの原油輸送の大動脈であるペルシャ湾のホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となり、供給自体の先行きが極めて不透明となったことが要因だ。このため石油化学品全てで価格上昇が始まった。合繊も例外ではなく、今後の値上げが不可避の状況となっている。(宇治光洋)

 2月28日にイスラエルと米国がイランを攻撃し、それに対する反撃としてイランが湾岸諸国を攻撃したことで始まったペルシャ湾岸地域の混乱は、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖という極めて深刻な事態に至った。ホルムズ海峡は中東地域からの原油輸送の海上交通路の要衝であり、ここが封鎖されたことで中東地域からの原油供給が大幅に制限された。

 こうした状況を受け、原油先物価格が高騰している。指標となるニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物価格はイラン情勢悪化までは1バレル=60ドル前後だったものが3月に入ると急騰し、90ドル台に上昇。取引時間内では100ドルの大台を突破する場面もあり、下げる気配がない。原油価格の高騰に合わせて石油化学工場の主原料であるナフサの価格も高騰した。

 また、今回の原油・ナフサ価格の高騰は、ホルムズ海峡の封鎖によって供給が物理的に制限されていることが問題を難しくしており、日本の石油化学業界も対応に苦慮する。既に主要石化メーカーはエチレンなど基礎化学品の減産に踏み切った。これに合わせて基礎化学品を原料とする樹脂やフィルム、そして合成繊維も値上げが不可避の状況だ。

 いち早く動いたのがクラレ。3月からポリビニルアルコール樹脂「ポバール」、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)「エバール」などを断続的に値上げした。人工皮革「クラリーノ」も1日出荷分から10%超の大幅値上げを実施した。

 思い切った施策に踏み切ったのが東レだ。緊急措置として機能化成品、炭素繊維複合材料、繊維など石化原料を使う一部製品に対して原燃料価格の上昇分を価格に上乗せするサーチャージ的価格運用を導入した。既に一部製品では適用を開始した。あくまで緊急処置として位置付けているが、従来のように自助努力によるコスト吸収を前提とした価格決定では現在の原油・ナフサ価格急騰に対応できないとする。

 さらにナイロン6とナイロン66の長・短繊維、ナイロンBCF糸、ポリエステルの長・短繊維と長繊維不織布、ポリプロピレン長繊維不織布、アクリル短繊維も4月出荷分から緊急値上げに踏み切った。事態に対する危機感の強さをうかがわせる。

 帝人フロンティアも現在の原料高騰を背景に値上げは避けられないと判断している。このため4月中に値上げを打ち出す予定だ。現在、原料動向を見極めながら、値上げ幅の検討を進めている。

 一方、衣料用途を中心に合繊の過剰供給問題は依然として解決していない。また、日本市場は需要にも勢いを欠く。こうした繊維の市場構造の中で、大幅な価格上昇がどこまで浸透するかが課題となる、価格上昇によって一段の需要減退を引き起こせば、繊維市場に大きなダメージが発生する。合繊産業は、難しいかじ取りを迫られている。