AIネイティブと向き合う(下)/26年新卒採用

2026年04月03日 (金曜日)

採用の先は“定着”

 繊維業界の新卒採用は拡大基調が続く中、各社の関心は採用後の定着や育成へと移りつつある。アンケートでは、来年の採用計画や離職率、新入社員の傾向から、人材戦略の新たな課題が浮かび上がった。「内定承諾率の低下見込み」(学生服メーカー)を懸念する声も多く、来年に向けて採用活動の早期化と多様化が一段と進みそうだ。

 「長期インターンシップの導入」(富士紡ホールディングス)、「学校との連携による学生との接点増加」(オンワードグループ)、「ダイレクトリクルーティングの強化」(ヤギ)といった動きが活発化。SNSや動画を活用した情報発信を強化し、認知度向上と志望度の引き上げを図る取り組みも目立つ。

 「オンライン集団社員訪問(Morning with ITOCHU)による社員の話を聞ける機会提供」(伊藤忠商事)といった試みも取り入れ、人材確保を図る。

 一方、入社3年以内の離職率は、回答29社平均で14・3%だった。厚生労働省の調査(大卒3割超)と比べると低い水準にとどまるが、若手人材の定着はなお課題となっている。

 オンワード樫山では、新たな育成プログラムの導入により「成長実感とキャリアの広がりを示す」とともに、「中堅社員までの全員との面談による社員のコンディションチェック」に力を入れる。

 伊藤忠商事では入社後8年間の育成方針・配置計画(個人別キャリアプランイメージ)を策定。その内容について組織長と面談を行うことで、「将来を見据えながら目の前の業務に取り組むことができる環境を整備」する。

 また、「採用選考中は企業理解が深まるようなイベントをたくさん用意する」(タキヒヨー)といった入社後のギャップ解消に向けた取り組みも増えている。定期的なエンゲージメント調査の導入に加え、「組織の現状を可視化し、課題抽出と環境改善を回すことで、社員が働きがいを実感できる体制を構築する」(菅公学生服)など、離職率低減に向けた施策が進む。

 新入社員は「合理性」や「納得感」を重視する傾向が強く、業務の目的意識や働き方への関心も高い。企業側からは「説明責任の重要性が増している」との声が上がる。こうした“AIネイティブ”世代の台頭により、採用は人員確保から定着・成長を見据えた設計へと変化している。人材戦略の巧拙が、今後の競争力を左右しそうだ。

(おわり)