技術の眼/東洋紡グループ/明治とBlueprint one/大和ハウスなど4社/帝人フロンティア/サーモア/YKK

2026年04月10日 (金曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウエーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈東洋紡グループ/“連続×不連続”繊維融合〉

 東洋紡グループの東洋紡エムシーとユウホウ、東洋紡せんいの3社はこのほど、連続繊維複合材料と不連続繊維複合材料を融合した熱可塑性ハイブリッド複合材料を共同開発した。一体成形で三次元構造を付与でき、繊維強化プラスチックの新たな用途開拓が期待される。

 一般的に不連続繊維を用いた複合材料は賦形(ふけい)性(材料を金型で複雑な形状に成形できる特性)が高いが弾性率に課題がある。一方、連続繊維による複合材料は高い弾性率を発現させることができるが、複雑な成形が難しいという課題があった。

 このため3社は、それぞれが保有する不連続繊維と連続繊維による複合材料に関する技術やノウハウを融合し、両者を組み合わせることで高い弾性率と賦形性を両立した熱可塑性ハイブリッド複合材料の開発に成功した。

 各技術の組み合わせによって、曲げ弾性率が2.2倍や1.5倍に向上した上、3次元構造の成形にも成功した。

〈明治とBlueprint one/脱脂粉乳由来のミルク繊維インナー試験販売〉

 明治はこのほど、スタートアップのBlueprint one(ブループリントワン、東京都港区)と共同で、脱脂粉乳由来の「ミルク繊維」を用いたインナーウエア「みるくみ」を開発した。

 ミルク繊維は、SNF原料(脱脂粉乳)に含まれるたんぱく質をレーヨンに練り込んだ再生繊維で、シルクのような滑らかな質感が特徴。水分保持率が高く、静電気が起きにくいといった特性も備える。

 同商品は、明治の新規事業創出プログラム「meiji IDEA CASE」から生まれた。ミルクの価値を食品以外の分野でも生かしたいという社内提案をきっかけに、ミルク繊維素材を展開するBlueprint oneとの共創で開発した。

 インナーは、とろけるような肌触りとしっとりとした質感を特徴とし、衣服がまとわりつきにくい設計。ラインアップはタンクトップとキャミソールの2種類を用意する。

〈大和ハウスなど4社/廃プラからコンクリ補強PP〉

 大和ハウス工業、フジタ(東京都渋谷区)、バルチップ(岡山県倉敷市)、関西化学工業(奈良県大和高田市)の4社は、再生材料を50%以上配合したコンクリート補強用ポリプロピレン(PP)短繊維「アミチップ」を開発した。廃プラスチックを活用しながら、従来品と同程度の引っ張り強度と製糸性を確保した。

 アミチップは、大和ハウス工業の工場で発生する網戸端材と、市場で流通する再生材料を独自配合し、バージン材と組み合わせて製造する。再生材料比率を50%以上としつつ、コンクリート補強用PP短繊維としてJIS基準を満たす性能を実現した。

 同社の工場では年間約2トンの網戸端材が発生しており、これまでサーマルリサイクルで処理していた。今回の技術によりマテリアルリサイクルとして再利用でき、2トンの端材を用いた場合、約2500立方メートルの繊維補強コンクリートに活用できる。製造時の二酸化炭素(CO2)排出量も削減でき、従来品と比べ製品1トン当たり約740キロの削減効果がある。網戸端材2トンをマテリアルリサイクルに転換した場合、約8100キロのCO2削減が見込まれる。

〈帝人フロンティア/熱は通さず光を通す〉

 帝人フロンティアはこのほど、カーテン生地に求められる遮熱性と採光性を両立した異型断面ポリエステル繊維「ウムテック」を開発した。光の入射角をコントロールすることで、熱は通さず光を通す。

 近年、熱中症対策のニーズもあってカーテンには採光性だけでなく遮熱性や遮像性など複数の機能が求められている。これまで特殊ポリマーによるUVカット機能と四つ山断面によって程よい採光性と遮像性を持つレースカーテン向けポリエステル素材「ウェーブロン+」を販売してきたが、遮熱性が課題だった。一方、一般的な遮熱カーテンは主にフルダル糸を使用するため近赤外線は遮蔽するものの、可視光線の透過度が低く、室内が暗くなるという課題がある。レースカーテン素材は、遮熱性と採光性の両立が困難とされてきた。

 これに対して、繊維表面への太陽光の入射角が小さければ透過しやすく、大きければ反射するという光の反射・透過メカニズムに着目し、近赤外線を反射しながら可視光線を透過する機能原糸の開発に取り組み、ウムテックの開発に成功した。

〈サーモア/繊維廃棄物を保温材に再生〉

 イタリアの衣料向け保温材メーカーのサーモアはこのほど、繊維廃棄物を原料とする新たな中わた素材を発表した。繊維サプライチェーンで発生するポリエステル廃棄物を再利用したもので、循環型素材としてアパレルやスポーツ用途への展開を狙う。

 同素材は100%再生ポリエステルで構成する。内訳は繊維産業の生産工程で発生するポストインダストリアル廃棄物が80%、使用済みPETボトル由来のポリエステルが20%。繊維廃棄物を新たな繊維製品へ再利用するテキスタイルtoテキスタイルの考え方を採用した。

 従来の繊維リサイクルでは品質が低下する“ダウンサイクル”が課題だったが、同社は独自の加工技術によって既存製品と同等レベルの性能を実現したという。高いかさ高性と柔軟性を備え、保温性と快適性を両立する。

 充填(じゅうてん)方法の自由度が高いのも特徴で、ダウンジャケットなどの隔壁構造への吹き込み、パネル状製品への充填、手作業による充填などに対応。繊維構造を安定化させることで、使用中の片寄りや固まりを抑える。

〈YKK/アルミ合金ファスナー軽量化〉

 YKKは、主にコットンパンツに向けて開発した軽量アルミ合金ファスナー「YZiP(ワイジップ)・ライト」の提案を開始した。主力の銅合金ファスナー「ワイジップ」をはじめとする商品群に加えることで、ユーザーの選択肢を増やす。

 ワイジップ・ライトに使用するアルミプレススライダーには、独自の成型技術を駆使し、アルミ材の性質上困難とされたプレス加工を可能にした。ワイジップに使われているセミオートマチックスライダーと同水準の外観と機能性を担保した。

 社内調査では、ジーンズ用銅合金ファスナーのワイジップと比較し、約50%の軽量化を実現した。従来のアルミ合金ファスナーとの比較では、摺動(しゅうどう)抵抗が約15%低減した一方、横引き強度は約26%向上した。

 これらの特徴を生かし、生地厚が0.6ミリ以下で洗い加工を要しないコットンパンツを中心に提案を進めていく。