繊維ニュース

紡績/組織横断型の提案加速/“場”の創出が連携の鍵

2026年04月20日 (月曜日)

 紡績各社で、部署やグループ会社の垣根を越えた横断型の提案が加速している。汎用(はんよう)品の価格競争から脱却し、高付加価値化にシフトする中、各部署の強みを掛け合わせた総合力が一段と求められるようになった。こうした連携を機能させるため、従業員同士が顔を合わせる“場”づくりの重要性が高まっている。(角川香穂)

 川上から川下まで手掛けるメーカーの強みは、最終製品に近い提案に踏み込むことで一段と引き出される。各部署の専門知識を結集して一貫したモノ作りを進めることで、他社に模倣されにくい独自の付加価値が生まれ、開発ノウハウも社内に蓄積される。川上の部署だけでは届きにくかった最終ユーザーの声も拾いやすくなり、市場の要望を反映した商品開発も加速する。

 こうした全社横断の提案は大きな利点があるものの、経営層が方針を示すだけでは現場の連携は進みにくい。日々の業務に追われる中、接点の少ない他部署と連携を深めるには、従業員同士が互いの業務を知り、自然に会話が生まれる機会づくりが求められる。

 シキボウの繊維部門は3月、大阪本社で社内向けの事業説明会を開いた。ユニチカトレーディングの衣料繊維事業を承継した新体制の下、3日間かけて各部署が商材や事業内容を紹介した。

 説明を聞いて回るグループは部署や出身会社の枠を超えて編成し、同メンバーで昼食会も開いた。「改めて会社を知る機会」につながり、仕事への思いや日常の話題も交えながら交流を深めた。東京でも同様の説明会を開き、相互理解をさらに深める。

 展示会の開催も、社内連携を促す場として機能する。日清紡テキスタイルは、シャツやユニフォーム、ポリウレタン製品「モビロン」の各事業を横断する“クロス営業”を進める中、昨年11月の東京に続き3月に大阪で単独展示会を開いた。

 多彩な素材を一堂に集めたことで顧客から好評を得ただけでなく、出展を通じて部署間の対話が増えた。これまで接点の薄かった顧客層との商談も生まれ、「自社に何が求められているかを知る機会」につながった。

 3月には大阪支社を移転し、全事業部が見渡せるワンフロア体制へ改めた。フロアが分かれていた従来よりも「些細な相談でもすぐに話し合える環境」が整い、日々の連携が活発化している。

 組織を横断する取り組みを進めるには、経営陣や管理職のコミュニケーションも欠かせない。大和紡績は3月に経営方針発表会を開き、工場やグループ会社も含めた各部門の管理職ら約100人を集めた。

 自社原料を軸とする“ファイバー戦略”の深耕を掲げ、事業部やグループ会社を横断した展開を強化する中で、直接顔を合わせる機会を重視し、部門を超えた連携を深めた。

 独自の付加価値を生み出す総合力は、日々の対話の中で磨かれていく。