春季総合特集Ⅱ(2)/防災・国土強靭化/萩原工業/不織布製包材の三景

2026年04月21日 (火曜日)

〈萩原工業/ブルーシートのJIS制定主導/性能基準の統一狙う〉

 2月20日に、「屋根用応急シート―ブルーシート(ポリエチレンクロス・ラミネートシート)」に関する規格のJIS A6932が定められた。制定に向けた活動を主導したのが、ブルーシート国内製造最大手の萩原工業だ。

 ブルーシートは、外観が同じであっても、屋外で雨や風、紫外線、温度変化などの自然環境にさらされた際の劣化や変質への耐性を表す「耐候性」が異なる製品が自治体で備蓄されている場合もある。

 災害で破損した屋根の復旧には、修理業者の数に上限があることから平均2年かかるとされる。他方で、修理までの期間に満たないわずか1、2カ月で雨漏りするようなブルーシートも存在する。災害発生時は、自治体が備蓄するブルーシートを自衛隊が設置してくれる場合が多いが、シートの破損による再設置は、被災者の負担となることも少なくない。

 萩原工業はこれを受けて、約10年前にJIS規格制定を試みたが、その障壁は高く、1社だけの申請活動では取得に至らなかった。

 転機は2023年。消費者の権利確立と生活向上を目指す消費者団体である主婦連合会から、「防災用ブルーシートがすぐに劣化する問題を解決できないか」という声が萩原工業に届いた。

 今回は1社だけではなく、競合他社を含むワークグループ(WG)を発足させて、ブルーシートの耐候性などの品質基準統一を目指した検討会を定期的に開いた。WGには、行政から経産省と内閣府、試験機関から建材試験センターとカケンテストセンターも参加した。

 JISの制定には、ブルーシートの用途を絞る必要があった。そこで、災害時に破損した“屋根”の応急処置に用途を限定した。10回に及んだWGの検討会が奏功して、2月20日にJIS制定に至った。

 同JISは、品質や構造、形状、寸法、厚さ、単位面積質量、外観、材料、試験方法、検査、呼び方、表示などを広く規定する。取得には、シートの引っ張り強さ、耐候性、防水性能、寸法、長期保管性などの性能試験を実施し、災害現場での使用条件を踏まえた評価を必要とする。

 犬飼正樹取締役執行役員合成樹脂事業部門長によると、「これから同社製品のJIS取得を進める段階」にあると言う。「半年間の工場の記録提出が必要な監査もあるため、順調にいっても1年半~2年かかる」。萩原工業は独自に、今回のJISと同等の規格を自主的に定めてブルーシートを製造しており、取得自体には問題がないとする。

〈不織布製包材の三景/不織布製パーテーション開発/避難所使用に役立つ開発強化〉

 業務用風呂敷や不織布製包装資材製造卸の三景(名古屋市北区)は、災害時などに避難所で使用するパーテーション用シートを開発し、関西地域の自治体に納品した実績を持つ。新型コロナウイルス感染対策の一環で備蓄向けに3500セットを供給した。

 パーテーション用シートを開発したのは、新型コロナウイルスが感染拡大していた2020年にさかのぼる。自治体からの要望はあったものの、パーテーションを販売するという経験も前例もなく、手探りで開発が進められた。不織布や織物製でお節料理を包装する業務用風呂敷を軸に製造販売する三景にとって、未知の挑戦だった。

 自治体からは、備蓄にスペースを取らないことと、避難所で簡単に設置ができることを要望された。シートの組み合わせでいろいろな避難スペースに対応できることも求められた。パーテーションには避難者のプライバシー保護や、少しでも安心して避難生活を送ってもらえるよう、色の選定にもこだわった。

 パーテーション用シートの長さは183センチ、幅は105センチ。使用する不織布は厚手のポリプロピレン製で、透けにくいグレーの原反を採用した。両幅部分を縫製して支柱用のパイプを通せる仕様とし、不使用時にはコンパクトにたたんで保管できるように配慮を重ねた。当時は緊急性を要したこともあり、手配がしやすく軽量かつ大量に加工できる不織布製のパーテーション用シートが重宝されたという。

 パーテーション向けによく使用されるダンボール製と比較して、通気性や軽さ、設置が容易にできることもメリットとなる。コンパクトに場所を取らず保管ができる。この納品事例を生かし、防寒対策や暑い時期に通気性を高めた機能などを付与できるようにシートの開発も強化する。依頼元からのさまざまな要望に合わせた不織布の選定を心掛ける。

 倉澤寛社長は「災害や地震が頻発する日本では、防災向けや避難所で使用する備品のニーズは確実に増える」と考察する。災害時に重宝される商材の開発と販売を重視し、その時になくてはならないモノが的確に供給できるように努める。

 パーテーション用シートと並行して開発を進めたいと構想するのが、不織布製の雨風をしのぐ防寒用の簡易衣料や毛布など。簡易トイレなど衛生関連商材の開発も視野に入れる。「困った時に使える商品を供給できることが、育ててもらった社会への恩返しになる」(倉澤社長)ことを意識し、意欲的に開発を進めていく。