春季総合特集Ⅱ(5)/Topインタビュー/シキボウ/社長 鈴木 睦人 氏/新体制で成長加速/繊維技術で環境課題に応える

2026年04月21日 (火曜日)

 シキボウは、今月から繊維部門の新体制を本格始動させた。2025年12月にユニチカトレーディング(UTC)の衣料繊維事業を承継し、商材や販売網、人材の融合を進め、国内外の生産・販売拠点を生かした海外展開を加速させる。鈴木睦人社長は「一体感を高めて次のイノベーションにつなげたい」と語り、新体制の下で相乗効果を引き出す。今期(27年3月期)は、3カ年の中期経営計画「TG25―27」の2年目に入り、承継した事業も踏まえて通期業績や数値目標を精査し、次の成長に向けた戦略を磨く。

――26年度の経済で、最も期待している分野は。

 中東情勢など事業環境が激しく変化する中、化石燃料への依存度の高さを改めて感じています。そのため、脱炭素や再生可能エネルギーの活用、資源を有効活用する循環型社会の構築といった分野に期待しています。

 当社は、子会社の新内外綿(大阪市中央区)と連携した繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」や、綿素材を再利用したバイオマスプラスチックペレット「コットレジン」など、繊維のリサイクル技術の活用を進めています。繊維の技術を起点に新たな価値を提案し、環境課題に応えます。

 事業活動を通じた環境負荷の低減も重要です。自家消費型の太陽光発電を拡大し、国内4拠点で計1メガワットに達しました。売電用設備を持つ富山工場(富山市)と合わせ、年間約1709㌧の二酸化炭素(CO2)排出量削減を見込んでおり、太陽光による自家発電はコスト削減にも寄与します。

――繊維部門の第3四半期(25年4~12月)の進捗(しんちょく)は。

 第3四半期までは旧体制の業績ですが、前年同期比5・9%の増収、営業利益は4億4千万円と黒字化しました。中東民族衣装向け生地輸出がけん引し、繊維部門全体が好調でした。

 足元では中東向けの生地輸出が一時的に止まっていますが、ラマダン商戦向けの商品は昨年12月までに出荷を終えました。一時的な影響はあるものの、現地在庫が減れば反動で受注が戻るとみており、状況を注視しながら対応します。

――その他の部門は。

 産業資材部門は、紙需要減少の影響を受けつつも、ドライヤーカンバスやコルゲーターベルトが底堅く推移し、フィルタークロスは官公需向けが堅調でした。

 機能材料部門の食品・化成品事業は、シキボウ堺(堺市)の新工場で食品向けの認証取得に時間を要し、上半期は苦戦しましたが、下半期からは計画通りに進んでいます。複合材料事業は、長野事業所(長野県箕輪町)で航空機エンジン部品の量産機を導入し、今期から本格生産を始める予定です。

 不動産・サービス部門のリネンサプライ事業は、中国人旅行客の減少が懸念されましたが、想定ほど落ち込まず堅調に推移しました。

――繊維部門は新体制が始動しました。

 1月に入社式を開き、約130人を迎えました。東京支社は移転して拡張し、大阪本社もレイアウトを刷新してコミュニケーションが活発になる環境を整えています。1~3月は旧体制で業務を進めましたが、ユニフォームなど販売先が重なる部門の“交通整理”を進め、今月から組織を融合した新しい部署が始動しています。

――今期の展開は。

 承継した売り上げが加わります。中計で掲げる「稼ぐ力の向上」に向け、販売網に横串を刺して事業を進める方針です。海外事業では特に大きなシナジーが生まれており、インドネシアでは、紡織加工のメルテックスに、承継した販売拠点を加え、ジャカルタ事務所を統合しました。人口増加が著しいインドネシアを有望市場と位置付け、制服やユニフォームなどの内販を強化します。

 ベトナムでは、ホーチミン拠点が持つ糸や編み地の機能に、UTCのハノイ拠点が持つ織物と縫製の機能が連携します。これにより、糸から最終製品まで一気通貫で提案できる体制が整いました。中国拠点でも寝装品の展開にユニフォームが加わり、複重層糸では「ツーエース」と「パルパー」を展開できるようになり、提案の幅が広がりました。

 他部門も海外展開を加速させます。産業資材部門は、アジア圏の廃水処理の需要を捉え、処理機のメーカーと連携したフィルターの新規市場を開拓します。機能材料部門の食品分野は、シキボウ堺の工場でアレルゲン対応やイスラム教の戒律に沿った「ハラール認証」を取得しており、対応力を強みに増粘多糖類の海外販売を拡大します。

 原材料やエネルギー費の上昇が続く中、自助努力によるコスト削減を図りつつ、適切な時期に価格転嫁を実施し、適正価格での販売を進めます。

――設備投資の計画は。

 中計で67億円の設備投資を計画し、環境変化に応じて中身を見直しながら進めています。設備面では、古い設備の更新に加え、従来とは異なる加工が行える設備への投資や、冷凍機の更新による冷暖房効率の向上など、環境負荷低減につながる投資も実行します。

 デジタル技術で企業を変革するDXの推進では、基幹システムの刷新を順次進めます。機能材料部門でまもなく実稼働が始まる予定で、今期は産業資材部門のシステム構築に着手します。繊維部門は複雑な要素があるため時間を要しますが、先行部門の実績を反映させ、30年までに全社での更新を完了させる計画です。

 人的資本経営がより重要になっています。福利厚生にとどまらず、働きがいを感じてもらえる会社にしていきたい。人事・給与も更新し、従業員のエンゲージメント向上を図っていきます。

〈私のちょっとしたストレス解消法/心と体の汗を流す〉

 温泉巡りと映画鑑賞が鈴木さんのリフレッシュの時間だ。休日は関西を中心に少し離れたスーパー銭湯にも足を運び、サウナに入って「ととのう」時間を楽しむ。映画館では臨場感のある空間でさまざまなジャンルの作品を見るが、「最近は涙腺が弱くなり、すぐにうるっとしてしまう」と笑う。お風呂で体の汗を流し、映画で心の汗を流す。日常の喧騒から少し距離を置き、ゆったりとした時間に身を委ねる。そんな時間が日々の疲れを癒やしている。

【略歴】

 すずき・よしひと 1988年シキボウ入社、2014年マーメイドテキスタイルインダストリーインドネシア社長、16年タイシキボウ社長、18年繊維部門開発技術部長兼グローバル事業推進室長、19年執行役員繊維部門開発技術部長兼営業第一部長兼富山工場長、20年同繊維部門開発技術部長兼シキボウ江南社長、21年同機能材料部門複合材料部長、24年同コーポレート部門副部門長〈経営戦略・中期経営計画担当〉、25年6月に代表取締役社長執行役員に就任