春季総合特集Ⅱ(8)/Topインタビュー/大和紡績/社長 野間 靖雅 氏/“ファイバー戦略”で成長加速/電子材料市場に商機

2026年04月21日 (火曜日)

 大和紡績は今期(2027年3月期)を初年度とする新たな5カ年の中期経営計画を始動させた。自社原料を軸に、事業部やグループ各社を横断する提案で“ファイバー戦略”の深耕を進める。野間靖雅社長は「営業と研究開発が一体となり、顧客との取り組み型で提案していく」と話し、付加価値を高めた商品で利益率の向上を目指す。グローバル販売の強化や設備投資の拡大も進め、IPO(新規株式公開)に向けた成長戦略を加速させる。

――26年度の経済で、どの分野に最も期待していますか。

 半導体や電子部品関連の分野です。人工知能(AI)の普及により、データセンターの建設が進み、データサーバーの需要も拡大しています。これらに用いられる電子材料の製造工程では、産業資材事業のカートリッジフィルターが使われており、販売が好調に推移しています。電子材料関連の市場拡大は、当社にとっても追い風になると考えています。

 近年の猛暑対策や美容関連の需要拡大にも期待しています。合繊事業の制汗シート向け不織布は、従来の真夏だけでなく通年で需要が伸びています。フェースマスク向け不織布は、メンズ美容の広がりも需要を後押ししています。

 当社の強みは、ポリプロピレン(PP)やダイワボウレーヨンのレーヨンといった原料から不織布まで、国内で一貫生産できる体制にあります。安心・安全の担保やBCP(事業継続計画)の観点からも、国内生産に対する評価は高まっています。

 土木資材関連では、トンネルの掘削時に水漏れを防ぐ防水シートなどを手掛けています。国土強靭(きょうじん)化に伴ってインフラ整備が進めば、当社の商材がさらに役立つと考えています。

――前期を振り返ると。

 原燃料高や円安などが重なり、厳しい1年でした。その中でも、合繊事業では制汗シートやフェースマスク向けが好調、産業資材事業ではカートリッジフィルターが業績をけん引しました。

 一方、アパレル関連は苦戦しました。国内インナーは価格転嫁を進めてきましたが、引き上げ可能な価格帯の上限に差し掛かっていると感じており、差別化商品の重要性が一段と増しています。産業資材でも紙需要減少の影響を受けてカンバスが伸び悩み、土木資材関連も想定に届かなかったなど、部門ごとに濃淡の出た1年でした。

――今期の方針は。

 本来は3カ年中計の最終年度に当たりますが、アスパラントグループとも相談しながら中計を見直し、4月から新たな5カ年計画をスタートさせました。ダイワボウホールディングスから独立した24年に掲げた5年後のIPOという目標は維持しつつ、全社の方針として「ファイバー戦略の深耕」を推進します。

 PPやレーヨン、複合繊維といった自社の原料にこだわり、事業部やグループ会社の垣根を越えて横串を刺した提案を強化します。ダイワボウレーヨンの素材を合繊事業のフェースマスクに生かしたり、PPをトラック用のシートに使用して軽量化を図ったりと、グループの強みを掛け合わせた開発を進めます。

 レーヨンへの機能練り込みにも注力し、健康志向に応える機能を持たせた素材を開発するなど、新たな価値を提案します。

 2月に東京本社で開いた展示会では、前回を上回る来場者があり、好評でした。展示会後には社内でレビュー会を開き、生の声を共有して次の開発につなげています。

 顧客の声を開発に生かすには、営業と研究開発の一体化が不可欠です。営業だけでなく、開発担当者も顧客の元へ足を運び、「開発が前に出る」姿勢を徹底します。播磨研究所(兵庫県播磨町)に顧客が来訪し、こちらも相手先へ赴くなど、研究開発の面でも交流が活発です。顧客との取り組み型のモノ作りを深め、市場が求めるものをスピーディーに形にしていきます。

――グローバル販売の強化について。

 PPや高機能レーヨンなどの原料や不織布の輸出比率を高めます。レーヨンは競合の一部撤退もあり、海外からの引き合いが増えています。海外に比べて小回りの利く当社の生産体制が評価されており、手応えを感じています。海外売上比率20%を一つの基準に据え、さらに引き上げます。

 インドネシアには、産業資材、合繊、製品・テキスタイルの各事業部の生産拠点に加え、紡績拠点もあります。インドネシア国内への内販や東南アジア市場の開拓も改めて進めていきます。縫製拠点では、最近はコルセットなども手掛けており、対米向けに加えて豪州向けにも販路が広がっています。

――設備投資の計画は。

 今期はグループ全体で設備投資を増やします。安定供給が大前提なので、老朽化設備の更新や、予防保全を踏まえた投資をしっかりと行います。これに加え、省力化や生産性向上につながる投資も進めます。工場間で連携し、同じ課題に対して共同で設備を導入してコストダウンを図るよう、現場にも呼び掛けています。

――IPOに向けた体制づくりは。

 ガバナンス強化の一環として、4月に組織を改編しました。本部長や部課長の兼務を減らして専任者を配置するとともに、新たな管理職を登用し、次世代の育成につながる体制を整えました。

 3月に経営方針発表会を開き、工場やグループ会社を含む各部門の管理職ら約100人が一堂に会しました。5カ年の中計では、コスト高の中でも単なる値上げに頼らず、ファイバー戦略で付加価値を高め、利益率を向上させることが必須です。全社で方向性を共有し、目標達成につなげていきます。

〈私のちょっとしたストレス解消法/野球で息抜き〉

 野球観戦が野間さんの気分転換の時間だ。休日はテレビで試合を観戦し、仕事終わりには球場へ足を運ぶこともある。「応援するチームが勝てば最高のストレス解消になる一方、負けると逆にストレスがたまってしまう」と笑う。休日は、次男がプレーする大学野球の試合をのんびり見守り、自宅では息子と野球の話で盛り上がることも多い。読書も好きで、移動中などに本を読む時間も大切にしている。そうしたひとときが、仕事の合間の良い息抜きになっている。

【略歴】

 のま・やすまさ 1989年大和紡績(現ダイワボウホールディングス)入社。2016年ダイワボウノイ取締役、19年同社常務、21年大和紡績産業資材事業本部副本部長、23年経営企画室長、24年取締役を経て、25年6月社長に就任