春季総合特集Ⅱ(12)/Topインタビュー/御幸毛織/社長 渡邉 紘志 氏/高付加価値商材の供給が重要/欧米軸に服地販売強化

2026年04月21日 (火曜日)

 御幸毛織の渡邉紘志社長は海外のハイファッションに商機があると期待を高める。商機をつかむためには「付加価値の高い商材の供給が重要だ」と話す。海外販売とともに重視するのが、オーダースーツを含めた製品販売の反転攻勢だ。ウールを軸とする安定した品質の原料調達を進めつつ、四日市事業所(三重県四日市市)の技術も生かす。

――2026年の経済で期待する分野は。

 分野と言えるかが難しいところですが、海外のハイファッションに期待をしています。市況を見渡すと、羊毛だけでなく全てのモノの価格が上がっています。厳しい環境で何ができるかを追求する上で、付加価値の高い商材の供給が重要だと考えます。

――どのように期待分野に関わるか。

 欧米を軸に、高級ゾーンへどれだけ服地を拡販できるかが大事です。2年後に服地は海外販売で15%の増収を狙います。

 海外のアウトドアやラグジュアリーブランドが天然繊維に注目しています。高級ウールを使用し、ラミネート加工により防汚性や防風性の機能を付与したコート地や、高密度に製織した服地は注目度が高いです。ここ数年、当社の服地や独自の糸作りから製織へのこだわりを海外の主要販売先に浸透させてきました。確実に受注増を狙います。

――前期(26年3月期)の業績予想は。

 減収減益を予想します。服地販売は計画通りに推移も、製品販売の苦戦が響きそうです。

 製品販売では、夏物の需要を喚起できなかったことと、百貨店を中心としたオーダーサロンの受注が減りました。この傾向は続くと思います。

――国内服地販売の重点施策は。

 海外販売と同様に、国産にこだわった付加価値の高い服地の優位性を訴求することが重要です。

 当社の最高級服地「ナポレナ」を中心に、高品質かつ原料からこだわった服地をアピールします。海外で当社の服地はイタリアや英国の服地企業に負けない品質を持つと評価を受けていますので、自信を持って勧めます。

 スーツ向けは耐久性や軽さといった、着用する際に必要な機能の付与も重要です。原料だけでなく、機能付与の側面でも付加価値を高めます。

――製品事業の展望は。

 販売数量は減ると予想します。販売先との取り組みを重視し、高価格帯の販売が伸ばせるような施策を進めます。

 オーダースーツ直営店「ミユキ・クラフツスーツ」は増収傾向にあり、今後も販売増に期待します。夏物の単品やセットアップ向けの「ブルーナイス」は好評です。ジャケットやスラックスを単品で受注しながら、新規顧客の開拓を狙います。今期は大阪・淀屋橋に直営店を出店します。

 OEMではブラックフォーマルや夏物の受託増を狙います。高級ゾーンへの販売も強化します。ユニフォームは調整期にありますが、3~4年周期で販売量が正常化するものとみています。消極的にならず、自信を持って営業を推進してほしいです。

――ウールや獣毛の調達にこだわる。

 高品質・高繊度ウール原料の安定的な調達は重要で「よい服地はよい原料から」という当社の考えを具現化するための大事な要素となります。その一環として、豪州・タスマニア島のキングストン牧場から直接羊毛を調達する取り組みを進めています。

 トレーサビリティーはもちろん、安定した生育環境が均一性のある確かな品質の羊毛を産出します。繊維長や形状にばらつきのない羊毛を調達でき、高品質な独自糸の製造に好影響をもたらします。

 モヘアの保護育成を目的に、最も良質な原料を産出した牧場を表彰する「南アフリカモヘア・ミユキチャンピオン」も45年以上続けています。

――四日市事業所の優位性と、期待することは。

 品質を第一とした、丁寧なモノ作りを続けています。高級志向に資する独自の技術を培ってきたことが、当社の大きな強みになっています。

 次世代への技術継承は課題ですが、20代の従業員が意欲的に働いていることは明るい材料です。長く安心して勤めてもらえるよう、働きやすい環境の整備も進めます。

〈私のちょっとしたストレス解消法/2人の孫とのふれあい〉

 月3回ほど奈良県の自宅に帰省する渡邉さん。帰省時に2人の孫と過ごすことがストレス解消となる。孫は3歳と新生児の女の子2人。時に“ワンオペ”でさまざまな世話をこなす。3歳の孫とはブロックで遊ぶほか、アナと雪の女王・エルサの塗り絵にも興じるも「もっと奇麗に塗って」と怒られることも。孫には「広い視野を持つ人に育ってほしい。留学を経験させたい」と目を細めて話す。孫の存在も仕事の原動力になっている。

【略歴】

 わたなべ・ひろし 1988年東洋紡績(現東洋紡)入社。2019年東洋紡参与兼繊維製品事業統括部長及び東洋紡STC出向、21年東洋紡参与兼東洋紡〈タイランド〉社長を経て、24年6月から現職