春季総合特集Ⅲ(2)/Topインタビュー/帝人フロンティア/社長 鎌田 進 氏/羽毛代替素材を松山で/基礎収益力150億円目指す

2026年04月22日 (水曜日)

 帝人フロンティアは、新たなステージへ歩を進める。2026年度(27年3月期)が初年度の新中期経営計画を始動するほか、10月には旭化成アドバンスとの経営統合を控えている。4月に就任した鎌田進社長は「収益力の向上に力を入れる。売上収益はその手段の一つ」と強調し、新中計では外部要因に関係なく安定して確保できる基礎収益力を「150億円に高める」方針だ。150億円は帝人フロンティアだけの数字とし、「ここに旭化成アドバンスの数字が加わる。利益が確実に確保できる強い会社を目指す」考えだ。

――26年度で最も期待している分野は。そこにどのように関わりますか。

 衣料繊維については、これまでは製品で量を追い掛けていた部分がありました。今後は質への転換を図っていく方針です。産業資材は、引き続きモビリティーとインフラに重点を置きます。ただし、自動車は地域戦略の見直しは必要であると考えています。インフラは設備投資を含めてしっかりと取り組んでいきます。

 それらの中で戦略素材として期待しているのが「オクタエア」です。羽毛代替素材としてダウンウエアや布団用途で提案していく予定です。軽さや温かさ、風合いなどで他の代替素材よりも羽毛に近いと自負しています。

 次の柱にしたいと考えており、愛媛県の松山事業所で小量産化を27年3月に始める計画です。

――なぜ松山事業所で生産するのですか。

 近年、日本国内での生産は縮小の傾向を続けてきましたが、松山事業所はマザー工場です。新しい物を生み出していくという役割を果たす必要があります。年間数百㌧規模でスタートし、需要が拡大すればテイジン・ポリエステル〈タイランド〉で生産します。場合によっては松山事業所の増産も検討します。

――新年度に入りました。25年度を振り返ると。

 業績面では、24年度が順調でした。中国の南通帝人が数字を伸ばし、日本国内の衣料品も厳しい環境下で頑張りました。産業資材も人工皮革の「コードレ」が良好な動きを見せました。25年度はその反動減があると覚悟していたのですが、想定よりも落ち込みが少なく、健闘していると言えます。

 25年度第3四半期決算発表時の予想値である売上収益3500億円、事業利益180億円とそれほど大きな隔たりなく着地できると予想しています。事業や拠点で凸凹があり、南通帝人とコードレが底堅さを見せ、ベトナムの縫製も順調です。タイ・ナムシリ・インターテックスは第3四半期までは計画の通りでした。

 産業資材分野は、自動車関連がアジアや日本を中心に盛り上がりを欠きました。生活製品は、夏の長期化・猛暑化の影響を受けました。日傘やカーテンなどの暑熱対策商品が順調でしたが、梅雨の時期が短かったことで除湿剤などの販売が期待していたほどには伸びませんでした。

――現在の事業環境をどう捉えていますか。

 中東情勢の悪化で先の見えない状態になっています。例えば、自動車関連です。自動車は1台当たり2万~3万の部品が使用されるとも言われています。このため帝人フロンティアが製品の供給を続けられたとしても他の部材の供給が滞れば自動車が生産できません。半導体不足の時のようなことが起こらないかと危惧しています。

――どのような施策を講じますか。

 衣料繊維では、欧米や中国市場向けの高付加価値生地が当社の強みです。付加価値品の時宜に合った提案が日本の繊維産業が残る道ですので、ここを強化しつつ、製品を中心に量から質への転換を図っていきます。一気にシフトするのが難しいことは承知しており、顧客との連携を深めながら着実に取り組みます。

 モビリティーとインフラ関連ビジネスの拡大にも力を入れます。モビリティーでは、中長期的な視点では電気自動車(EV)が増えていくと考えられます。一般的にEVは重量が重く、タイヤにも剛性が求められます。われわれの高性能繊維の出番が増えることでしょう。インフラ関連も同様です。

――エアバッグは。

 昨年に東洋紡子会社で、中国でエアバッグ用基布を製造・販売する会社を買収しました。今年2月から帝人汽車飾件〈常熟〉として稼働を始めていますが、中国の現地OEMやティア1に販路を持っています。当社既存の日岩帝人汽車安全用布〈南通〉などとは出口が違うため良い効果が出ればと思っています。

 また、経営統合を予定している旭化成アドバンスは、ベトナムなどに拠点を持っており、エアバッグ事業のサプライチェーンは大きくなります。旭化成アドバンスがインドに持つエアバッグ包材の拠点にも注目しています。インドビジネス拡大の足掛かりになる可能性を持っています。

――旭化成アドバンスとのシナジーの発揮は。

 衣料繊維と産業資材の両面で期待しています。衣料繊維は、当社はポリエステルが中心で、旭化成アドバンスはナイロンやキュプラ繊維を持っていますのでクロスセルだけでもシナジーは発揮できるでしょう。産業資材関連では、当社素材と旭化成アドバンスの施工の組み合わせが可能です。

 30年ごろに売上収益5千億円を目指していますが、収益重視の姿勢で臨みます。帝人フロンティアは基礎収益力の向上に取り組んでおり、前中計では基礎収益力100億円を目標としてきました。新中計では150億円をターゲットにしていますが、旭化成アドバンスの利益も加わります。利益が上げられる強い会社を目指します。

〈私のちょっとしたストレス解消法/週末に行きつけの店で〉

 大阪に単身赴任中の鎌田さんは「週末に行きつけの店で飲むことがストレス解消になっている」と話す。日本料理店や鉄板焼き店など、なじみになった店は幾つもあるが、いずれも自分の足で開拓したのだとか。基本は1人で、週1回ほどのペースで足を運ぶ。5年ぐらい通っているため顔見知りもできた。「仕事上の付き合いがないので何のしがらみもない。自分のペースを崩すことなく楽しく会話ができている」と語る。ただ、「ついつい飲みすぎてしまうのが反省点」と笑う。

【略歴】

 かまた・すすむ 1989年帝人商事入社。2014年帝人フロンティア工繊・車輌資材本部副本部長、20年同執行役員TeijinFrontier〈Thailand〉社長、21年同執行役員産業資材部門長、22年同常務執行役員産業資材部門長、24年同取締役常務執行役員産業資材部門長などを経て、今年4月代表取締役社長執行役員