春季総合特集Ⅲ(4)/Topインタビュー/東洋紡せんい/社長 長尾 貴庸 氏/“得意”で“特異”な領域を/プロダクトアウトを強化

2026年04月22日 (水曜日)

 東洋紡せんいは2026年度(27年3月期)から組織を大幅に変更した。7事業部から5事業部1グループ体制とし、従来のマーケットイン型提案に加え、プロダクトアウト型の開発や提案を強化する。4月に就任した長尾貴庸社長は「“得意”で“特異”な領域で勝負することが必要」と強調する。

――今後、繊維事業にとって期待できる分野は何でしょうか。

 当社は東洋紡グループの中で主に衣料繊維事業を担っています。これまで構造改革を続けたことで23年度から黒字を回復し、25年度も増収増益で推移してきました。これまでは守りを固めて失点を防ぐことに主眼を置いた経営でしたが、26年度から東洋紡グループの新しい中期経営計画がスタートしました。

 この中で繊維事業は使用資本を踏まえながら利益率を高めることが一つのテーマとなります。ですから、大きな戦略の変更はありませんが、改めて開発や海外拠点の活用などに力を入れます。

 そうした中で、どういった分野に期待できるかと考えると、やはり当社の強みが発揮できる“得意”な分野でしょう。例えば中東民族衣装用織物などがあります。直近は中東情勢悪化の影響で物流もストップし、対応に苦慮しているところですが、ある意味で“特異”な市場です。産業資材でも塗膜防水材やルーフィングなどニッチでも得意な分野があります。つまり“得意”で“特異”な領域で勝負するということです。

――25年度を振り返ると。

 高い目標を掲げていたので計画にはやや足りませんが、前年度比較では増益で推移しました。これまで赤字が続いていたスポーツ事業も黒字浮上しています。主力の輸出織物事業は中東民族衣装用織物の好調が継続しました。円安も追い風になっています。マテリアル事業も計画通り。特に原糸販売が頑張っています。

 一方、スクール事業は苦戦です。流通在庫が増加したことでアパレルが生産調整に入っていることが要因です。ユニフォーム事業も芳しくありませんでした。これまで好調だった別注ユニフォームで大口案件の獲得ができなかったことが影響しています。

――26年度の課題と戦略は。

 今期から、これまでの7事業部体制から5事業部1グループ体制に組織を再編しました。スポーツ事業部とユニフォーム事業部を統合してユニフォーム・スポーツ事業部に、機能資材事業部と工業材料事業部を統合して産業資材事業部としました。さらに営業本部直轄でニットテキスタイルグループを新設しています。

 従来の7事業部体制は、どちらかいうとマーケットイン型の発想に基づく構成でしたが、加えてプロダクトアウト型の開発や提案を強化しようというのが狙いです。そのためにニットテキスタイルグループを作りました。近年、さまざまなアイテムで生地のニット化が進んでいます。当社は早くからこの動きに対応し、例えばニット製のドレスシャツや学生服地で実績があります。ワークウエア向けでもポリエステル長繊維ニット生地「スクラムテック」が評価されるなど成果が上がっています。こうした動きをもっと幅広い用途やアイテムに広げようという考えです。ユニフォーム・スポーツ事業部は、素材の強みを生かしてシナジー発揮を目指します。産業資材事業部は塗膜防水材やルーフィングなど得意とする分野やアイテムの周辺に事業領域を広げることを狙っています。

――特に重点的に取り組むのは。

 やはり中東民族衣装用織物とニット素材の拡大に重点的に取り組みます。また、産業資材事業は塗膜防水材などに続く主力商品を作っていかなければならない。そして各事業とも中身を変えていかなければなりません。

 例えばスクール事業は少子化で既存の市場が将来的に縮小することが確定していますから、現在も学生服に加えて病院の患者衣など新しい市場とアイテムの拡大を目指しています。

 そうしてポートフォリオを改革することで資産効率を高めることが、中期経営計画での目標となります。

〈私のちょっとしたストレス解消法/旅行もコレクター気質〉

 旅行がストレス解消法という長尾さんだが、「コレクター気質なので、決めたテーマでコンプリートを目指して回ることが多い」とか。30代の時に国宝に指定されている仏塔30基を全て見て回ったのが最初。ほかにも今も天守が残る12の城もすべて回った。そんな長尾さんが最近、気になってたのが神宮号を持つ神社。子会社のトーヨーニットがある鹿児島県には鹿児島神宮と霧島神宮があるのに気付いたからだ。どうやら神宮めぐりが始まりそうだ。

【略歴】

 ながお・たかやす 1988年東洋紡入社。繊維・商事企画管理部長兼東洋紡STC管理部長などを経て2022年機能繊維事業総括部長兼東洋紡せんい取締役管理本部長、25年機能繊維事業総括部長兼東洋紡せんい取締役営業本部長、26年4月から執行役員兼東洋紡せんい社長