春季総合特集Ⅲ(5)/Topインタビュー/クラレトレーディング/社長 山田 武司 氏/インバウンドに期待/独自ビジネスの比率高める
2026年04月22日 (水曜日)
「衣料分野で、特に期待したいのがインバウンド」――クラレトレーディングの山田武司社長はそう指摘する。人口減少によって国内の衣料品需要が縮小する中、スポーツ・アウトドア分野で日本のブランドの人気が世界的に高まってきた。「こうした動きに対応したモノ作りが不可欠」と話す。そのためにも原糸から加工までの工夫で付加価値を高める独自ビジネスの拡大を進める。
――日本の繊維産業にとって今後に期待できる分野とは何でしょうか。
産業資材分野ならいろいろとありますが、衣料分野で考えるなら、やはりインバウンドでしょう。今後、日本の人口が減少し、国内需要も減退していくことがほぼ確実な中で、インバウンド需要は無視できない存在です。
実際に当社の取引先であるスポーツ・アウトドアブランドはインバウンド需要を取り込むことで販売を伸ばしています。例えば登山やラケットスポーツなどは、特に海外の消費者の間で人気が高いですね。実際に国内のスポーツ・アウトドアブランドのショップなどをのぞくと、それこそ、いつも外国人客であふれています。日本のスポーツ・アウトドアブランドの高品質・高機能といった強みが海外の消費者からも認められています。また、円安によって値頃感が増していることも追い風でしょう。
ですから、こうした動きに向けたモノ作りが欠かせません。取引先アパレル企業としっかりと取り組むことが必要です。そもそも日本は国際経済にしっかりと組み込まれているのですから、インバウンドも含めて海外の消費者も視野に入れたモノ作りは欠かせません。外国人排斥など唱えても意味がありません。
――2025年度(12月期)を振り返ると。
取扱高こそ24年度をわずかに下回りましたが、売上収益、営業利益、経常利益、純利益はいずれも前年度を上回りました。中国経済に勢いがないことで化学品の中国での販売数量が少し減るなど逆風もあったのですが、繊維の好調でカバーした形です。特に衣料繊維分野は縫製品を中心にスポーツ・アウトドアの好調が続いています。引き続き強い顧客との取り組みが成功しています。
――26年度も第1四半期(1~3月)が終わりましたが、今後の課題や戦略は。
1~3月は順調に推移していたのですが、ここにきて中東情勢悪化の影響も含めて急激なコストアップに見舞われています。これにどう対応するか。繊維事業は原糸から縫製までサプライチェーン全体を押さえているので原燃料価格の上昇を全体で負担することになるのですが、一方で人件費や物流費が上昇していることの影響も大きく受けることになります。やはり、値上げでコストアップを価格転嫁するしかありません。
それと、当社はクラレの販売会社ですが、やはりクラレトレーディング独自のビジネスの比率を高めていくことが必要です。既に衣料繊維は独自ビジネスの割合がかなり高いですが、今後は化学品でもクラレ素材以外の商材の取り扱いを増やしていきたい。
衣料繊維は今年12月末でクラレ西条(愛媛県西条市)でのポリエステル長繊維の自家生産を終了し、委託生産に切り替えますが、委託生産先に対して口金など設備の提供だけでなく人員も派遣することで技術的連携を強め、ノウハウも含めて移管を進めています。これにより今後も原糸から工夫したモノ作りが可能です。当社は単なる商社ではなく“メーカー系商社”ですから、原糸から付加価値を付けたモノ作りをやらなければ存在意義がありません。やはりポイントは“開発”と“品質”です。そこで手を抜いてはいけません。そのためにクラレとも一緒になって取り組みます。
もう一つ重視するのが、人材育成です。商社は人材が企業としての競争力に直結しますから。若手も積極的に海外での仕事に登用し、海外で品質管理などを経験できるようにしています。「人材」ではなく、「人財」だと考えていますから。
経営者としても従業員として積極的にコミュニケーションを取ります。ただ、これが最も難しいですね。従業員一人一人としっかりと向き合い、対話していくしかないと考えています。
〈私のちょっとしたストレス解消法/大川沿いを散歩〉
「散歩しながら音楽を聴いたり、(音声で)ちょっとした勉強をするのがいい気分転換になる」という山田さん。大阪での住まいは天満で、すぐ近くには大川が流れ、川沿いには遊歩道が整備されている。大川沿いを天満から桜ノ宮、そして中之島辺りまで歩く。「春は大川沿いの桜並木がすごい」。体を動かしながら、目と耳も保養すれば、ストレスもどこかに飛んでしまう。その後は、お気に入りの隠れ家で一杯やるのかも。
【略歴】
やまだ・たけし 1984年クラレ入社、クラレトレーディング衣料カンパニーテキスタイル部長、同カンパニースポーツ部長、衣料・クラベラ事業部副事業部長、可樂麗貿易(上海)総経理などを経て、2015年クラレトレーディング取締役、18年常務、同年常務繊維事業統括兼衣料・クラベラ事業部長、20年から社長





