春季総合特集Ⅲ(9)/Topインタビュー/豊島/社長 豊島 晋一 氏/新価値の創造で付加価値追求/新規や既存ビジネスに波及を

2026年04月22日 (水曜日)

 豊島は付加価値の追求に挑む。異業種との協業やスタートアップとの連携、異業種関連の展示会への出展を進めることで、「新たな価値を創造していく」(豊島晋一社長)。そこで生み出した新たな価値や視点、気付きを新規顧客の開拓やビジネスの幅出しに役立てるほか、既存顧客への深耕や多彩な提案にもつなげていく。同社が目指してきたライフスタイル提案商社への実現に向けて、豊島社長は「当社がこれまで培ったノウハウを武器にさまざまな領域の開拓に挑戦していく」と意気込みを示す。

――政府は戦略17分野を策定しています。御社として期待している分野は。

 「AI・半導体」分野はAIがロボットを動かすフィジカルAIや特定の業界に特化したバーティカルAIなどが主要な製品として挙げられています。フィジカルAIは取引先である縫製工場などで応用できるかもしれません。バーティカルAIは当社もデザイン制作などでAIを活用していますので、業務効率に生かしていきたいです。

 アニメやゲームなどIP(知的財産権)を含めた「コンテンツ」分野は既に当社としてもビジネスを展開しています。IPを使った衣料品や雑貨などを展開していますが、今後も積極的に取り組んでいきたい。世界的にも日本のアニメやゲームは強みですから、今後の伸びも期待しています。

――今期(2026年6月期)の商況は。

 全社的には堅調に推移していると言えますが、部門によって濃淡があります。素材部門は減収で利益は横ばいとなりそうです。糸や生機の販売など産地向けのビジネスが苦戦しているのが要因です。一方で製品部門は増収増益を見込んでいます。付加価値商材を中心に販売が進んだことが奏功しました。ウェルネスやワークウエア、雑貨などが伸びました。特に暑さ対策として、空調ファン付きウエアやペルチェ式ウエアは順調でした。物流効率の改善が進んだことで、コスト上昇が抑制できたため利益面にも貢献しました。

――輸出の状況は。

 中国向けはスポーツ分野が伸長しましたが、景気減退の影響を受けたことで全体では苦戦しました。一方で、欧米向けは日本の染色整理による加工反が支持されており、広がりを見せています。やはり日本ならではのモノ作りが評価されています。欧米向けがけん引役となり、輸出全体では堅調と言えるでしょう。製品の輸出も付加価値商材を中心に一部取り組みが進みました。

――中東の情勢不安が続いています。

 不透明感は依然強いですが、今後さまざまな面で影響が出てくるでしょう。原油高による輸送コスト上昇や合繊原料の値上がり、供給の不安定化、ホルムズ海峡封鎖による船便の混乱など、サプライチェーン全体で影響が及びそうです。

――異業種との連携を進めています。

 新たな価値の創造をテーマに多彩な異業種とコラボレーションを進めてきました。それによって、さまざまな視点や新しい課題、気付きなどが生まれます。それらを活用しながら、新規顧客の開拓やビジネスの拡大をしていきます。そうした新たな視点などは新規だけでなく、既存ビジネスに波及させていくこともできると考えています。これは当社が掲げてきたライフスタイル提案商社にもつながることです。当社の武器や強みを使って、いろいろな領域にチャレンジしていくことが重要です。

――AI事業の進展はいかがですか。

 24年に開発したAI自動採寸装置「バーチャルスタンダード・AIメジャー」はサービスの本格化に向けて、お客さまと実証実験を進めています。計測したデータをビジネスの現場でどのように活用していくかなどを組み立てています。多様な種類の商品をAIに学ばせていくことも重要です。

 生成AIで3次元モデルに着装させるシステム「バーチャルスタンダード・ファブリックジーニー」は、柄を生成AIで制作する「バーチャルスタンダード・AIパターン」と連携させており、活用の場が広がっています。商談の場での色やデザインといったイメージのすり合わせが容易かつ具体的になります。その場での変更も可能で、その後のやり取りの時間短縮など効率改善に貢献しています。取り込んだ画像の色を変えるなど、新たな機能も盛り込んでいます。

――今後注力する点は。

 ライフスタイル提案商社として付加価値を追求していくことです。これは、いかに新しい価値を創り出していくかということに尽きると考えます。異業種との協業やスタートアップとの連携を今後も進めます。毎年名古屋で開催している異業種交流展示会「メッセナゴヤ」への出展を通じて、新たな顧客との接点を作っていくことも重要です。こうした取り組みで新たな価値を創造し、それを既存顧客への深耕にも役立てていきます。

 AIについても引き続き注力していきます。日本社会の労働人口減少は避けられませんので、当社としても貢献できる部分はあるかと思います。自律型のAIエージェントが登場しており、当社の業務プロセスの効率化などに生かしていきたいですね。

――社長に就いて半年以上が経ちました。

 改めて当社社員のたくましさやバイタリティー、エネルギッシュさを感じています。ビジネスパーソンとして強い力を持っている集団です。そして、歴史や財務状況、ネットワーク力、社風などを含めた、会社としての基盤の厚みも実感しています。今後はこうした会社の良い部分を維持しながら、厳しい競争の中で戦い抜けるよう、社員が伸び伸びとした環境で働けるようにしていきたいです。

〈私のちょっとしたストレス解消法/純喫茶での読書タイム〉

 「ジャンルは特に決めていませんが」と話す豊島さんは、喫茶店でコーヒーを飲みながらの読書がリラックスの時間。小説などの文学作品を楽しんでおり、最近は「日の名残り」(カズオ・イシグロ著)を読んだ。喫茶店の中でも純喫茶をこよなく愛しており、「独特なあの空間や雰囲気がワクワクする」と話す。愛知県はモーニング文化が根付いており喫茶店の数は多い。「どこにでも喫茶店があると思っているので、出張で他の地域へ行くとちょっとがっかりする」と笑う。

【略歴】

 とよしま・しんいち 2021年豊島入社、同年5月総務部付監査担当。9月監査役、22年9月取締役兼財務部部長、23年7月専務取締役を経て、25年9月から現職