春季総合特集Ⅳ(1)/資源・エネルギー安全保障・GX/新協議会「リズム」発足/ミライ化成
2026年04月23日 (木曜日)
〈新協議会「リズム」発足/水産系プラの資源循環構築へ/実績積み上げと認知図る〉
使用済み漁網をはじめとする水産系プラスチック資材の資源循環を目的とした新団体「水産系プラスチック資材リサイクル推進協議会」(通称・Re:ism〈リズム〉)の設立総会が2月25日、大阪市内で開催され、正式に発足した。会長には木下製網(愛知県西尾市)の木下康太郎社長が就任。4月から活動を本格化している。
同協議会は、2020年に木下製網、帝人、山一(大阪市西区)、台和(東京都台東区)など有志企業5社で立ち上げたプロジェクト「TeamRe:ism」(チームリズム)の活動を引き継ぎ、大日本水産会とも連携して活動を全国規模へと拡大させていく方針。
日本の漁業を支えてきた漁網は、過酷な海洋環境に耐え得るよう高強度な合成繊維で作られている。木下会長は設立に至った背景について、「世界的にはナイロン製漁網のリサイクルが進んでいるが、日本の周辺海域の複雑な潮流に対しては、沈降性や操業性に優れるポリエステル製のまき網などが主流であり、世界的に見ても特異な市場だ」と説明する。
しかし、ポリエステル製漁網のリサイクル事業化には高い壁があった。安価なバージン素材に対してリサイクルコストを吸収しにくく、世界的流通量が少ないため大手企業が参入しにくい。さらに、塩分や魚油、藻などが大量に付着しているため、未洗浄のままリペレット工程に投入すると異臭や発煙が生じてしまうらしい。
この解決困難な課題に対し、「漁網リサイクルは一社で完結できるものではない」という木下会長の強い危機感から、川上の化学繊維メーカー、川中の製網メーカー、川下の産廃・リサイクル業者などが結集し、20年にチームリズムが発足した。
その後、特殊洗浄技術の確立を経て、23年には環境省の補助金を受け、長崎県平戸市・舘浦漁業協同組合にて実証プラントを稼働させた。木下会長は「通常は市場で競争関係にある大手合繊メーカー(帝人、東レなど)や製網メーカー(日東製網、ニチモウなど)が、共創の姿勢で連携している点に組織の最大の特徴がある。これにより単独では不可能な技術開発などが可能になった」と語る。
回収した漁網をはじめとする水産系プラスチック資材の再活用実績はアパレルや産業資材、日用品などの分野で着実に積み上がっている。そして回収・再生された漁網の行き先として、繊維業界の技術力が極めて重要な役割を果たしている。
アパレルでは、「サンシャイン水族館」(東京都豊島区)の案内スタッフが着用する新ユニフォームが代表例だ。カイタックグループとの連携により、国内で初めて使用済み漁網由来の再生ポリエステル生地を全面に使用した製品として結実した。
木下会長は「100%漁網再生素材で製造するとコスト面で現実的ではない。アパレルや漁網製品の場合、再生素材が含まれる割合はユニフォームでおおむね10~15%、漁網to漁網で10%ほど」とみている。
また、道路の耐久性を向上させる「アスファルト補強材」としての活用も需要が高い。これは花王、昭和興産、日本道路といった異業種間の連携により実現。廃漁網をリペレット化した原料を道路舗装に活用するもので、漁網としての再利用が困難な素材に対しても、大量の廃棄量をカバーできる有力な「出口戦略」の一つとなっている。日用品・飲食関連什器(じゅうき)関連では、飲食店などで使用される「配膳用トレー」などの成形品原料としてマテリアルリサイクルされている。
技術的・物流的な基盤が整いつつある中、協議会が次に見据える最大の課題は、回収漁網の増量だ。年間2500~3千㌧の廃漁網の回収が目標だが、実績はその20分の1程度に満たない。30年の目標達成を掲げているが、現在の回収インフラは長崎県平戸市(舘浦漁協)の実証プラントなど限られた地域でのモデルケースにとどまっている。
これを宮城県石巻市などの大規模な漁業拠点を含む全国の主要な港へ広げ、全国的な回収ネットワークを整備するための設備投資と協力体制の構築につなげていきたい考えだ。木下会長は「『入り口と出口戦略ができて大きく進む』段階にきている」と展望を語る。
チームリズムの活動を受け継ぎ、2月に新団体となったリズムの正会員企業は25社、このほか、賛助会員企業や連携機関が加わっている。繊維業界と水産業界が強固に連携するリズムのスキームは、日本の全産業における資源循環の新たなスタンダードとして、今後の展開が強く期待される。
〈ミライ化成/再生炭素繊維の社会実装へ/製品開発で市場の出口開く〉
三谷産業グループで化学関連事業を手掛けるミライ化成(長野県千曲市)は、リサイクル炭素繊維(rCF)の社会実装に向けた取り組みを加速させている。2025年に設立した研究開発拠点の青森Lab(青森県六戸町)で、繊維の回収から不織布の製造、最終的な成形加工までを一貫で進める体制を整えた。業界の課題である「用途の出口づくり」に対し、自ら最終製品の開発まで踏み込み、市場の出口を切り開こうとしている。
炭素繊維複合材料(CFRP)は軽量、高強度、耐腐食性に優れ、航空機や自動車などで採用が広がる一方、廃材処理が課題になっている。需要の拡大に伴って廃材も増えており、リサイクルの重要性は一段と高まる。
同社は20年から研究開発を進め、溶媒法でCFRP廃材からrCFを取り出す技術を磨いてきた。青森Labでは反応槽を拡充し、準量産規模での生産を可能にした。
溶媒法は低温で樹脂を分解するため、繊維へのダメージが小さく、樹脂の残渣(ざんさ)も少ない。このため成形時の含浸性や界面安定性の向上にもつながり、廃材の形状によっては、比較的長い状態で取り出すことができる。繊維自体の力学特性もバージン炭素繊維とほとんど変わらない。
CFRP廃材を備蓄しており、rCFを3~150㍉の任意の長さに全自動でカットする専用機も導入した。わた状の繊維をはじめ、不織布、プリプレグ(中間基材)、熱可塑性・熱硬化性の成形品まで、「顧客が求める形」で供給できる。ヒートアンドクールプレス成形や、世界で初めて導入した三菱電機製のCFRP用レーザー加工機による加工も行える。
rCFの普及を阻む要因は、回収そのものよりも「再成形と用途開発」にあるという。同社は、高品位なrCFの回収技術と成形加工を組み合わせ、事業採算性の鍵を握る「成形加工技術の最適化」によって、トータルコストの削減も提案する。
rCFは連続繊維のバージン材と異なり、不連続繊維になる。このため、従来材の延長で使うのではなく、不織布などrCFに適した材料設計が欠かせない。同社が「バージン材とは違う良さ」を前面に打ち出して開発を進めるニードルパンチ不織布は、3次元的に絡み合う構造によって層間破壊に強く、高い振動減衰性や衝撃吸収性を発揮する。独自の付加価値として市場への訴求を強める。
まずは28年ごろまでにrCFを取り入れたスポーツ用品や家電の製品化を目指す。長期的には自動車や航空機などのモビリティ分野への展開も視野に入れる。材料から成形加工までを一つの拠点でつなぎ、最終製品の出口を見据えた開発を推し進める。





