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春季総合特集Ⅳ(11)/Topインタビュー/コスモテキスタイル/社長 岡田 泰紀 氏/AIの活用法を研究/今期は守りではなく攻め

2026年04月23日 (木曜日)

 生地販売に特化し、アパレル向けと切り売り向けという、似て非なる分野を販路に持つコスモテキスタイル(大阪市中央区)。2026年3月期は両分野とも減収となったが、拡大方針を掲げる輸出は着実に伸ばした。今期の方針を「挑戦と実行」とし、守りではなく攻めに転じる。岡田泰紀社長に考えを聞いた。

――26年度で最も期待している分野は。またそこにどう関わっていきますか。

 高市政権が掲げる17の成長分野の中から挙げるなら、人工知能(AI)になります。AI・ロボットに現在の仕事の多くが人から置き換えられてしまう可能性もあります。ただしAI・ロボットは人が活用すべき存在であり、仕事を奪われるだけのものではないと思います。

 繊維分野でもAIはクリエーションとサステイナビリティーを両立させる鍵になる。当社では生成AIを「業務効率化の一助」と「素材開発と価値創造のサブパートナー」と位置付け、研究・活用を進めていきます。

 企画面では生地の風合いやデザイン、柄、各種品質データをAIで解析し、質感や機能、柄の傾向を数値化する取り組みが考えられます。例えばアパレルやホビークラフト業界など用途別に「どのお客さま、どの地域・どの国で、どんな素材・商品トレンドが台頭しているのか」を予測し、それを元に商品設計の一助とするイメージがあります。しかし中心にあるのはあくまで「人」。当社社員が持つさまざまな経験や感性を基本に一部のデータ裏付けを加えた企画体制が作れると考えています。

 生産・供給の領域では、需要予測や在庫最適化などの見える化を導入し、環境負荷を抑えつつスピーディーに市場対応できる体制を整えていきたい。将来的にはAI解析を通じて得た市場トレンドを、国内外の顧客とリアルタイムで共有し、「当社独自の感性を国内外のマーケットに展開する」新しい価値連鎖の形をイメージしています。

 一方、AIにはリスクもあります。生成AIは過去のデータを複合解析したものに過ぎず新鮮味はない。また行間が読めず創造性、斬新性、独自性も不足しています。当社としては「人のクリエーション力とAIの分析知」をどう調和させるかを出発点に考えたい。

 高市政権が掲げる「イノベーション促進とリスク対応の両立」は、私たちの事業に共鳴する考え方です。生成AIを恐れず、倫理や品質に対する繊維業界ならではの厳格さを保ちつつ、デジタルとモノ作りの融合で、当社ならではのテキスタイル文化を国内外に発信することができればと考えています。

――前期(26年3月期)を振り返ってください。

 売り上げは前期比2%増の31億円で、価格転嫁が進まなかったことや海外展出展経費が増えたことなどで減益になりました。アパレル向け生地販売、切り売り向け生地販売の両方が減収でしたが、輸出は増えました。「ミラノ・ウニカ」や「プルミエール・ヴィジョン・パリ」「LAテキスタイルフェア」「プレビューインソウル」「インターテキスタイル上海」といった海外展に積極出展した成果であり、これらは今後も継続出展します。

――今期の重点方針を。

 不確実性が増す中、「挑戦と実行」で成果を創出する「個の成長」を方針に掲げます。守りではなく攻めを重視し、利益率の引き上げに挑戦します。

――アパレル向けと切り売り向け、両部門の融合にも挑戦されています。

 昨年秋に浜松町で開かれた総合素材展「東京テキスタイルスコープ」(TTS)や大阪のインテックス大阪で開かれたインバウンド向けの展示会で、両部門を融合させたブースを設営しました。この二つの分野は似て非なるものですが、分離させておくのももったいない。アパレル向け部門の生地は無地が大半で、切り売り向け部門は柄物が中心。アパレル向けに切り売りテイストの柄生地を提案するなど企画面での連携を進めており、顧客のシェア、販路拡大につなげられればと考えています。兼務ではありますが、融合に向けたプロジェクトチームも立ち上げて取り組んでいます。

〈私のちょっとしたストレス解消法/バイオリンの音色で〉

 「拙いですが……」と謙遜しながら、2日に一度のペースで弾くバイオリンをストレス解消法に上げる岡田さん。弓を動かしている間は頭の中が不思議と静かになり、さまざまな日々の課題も音の波に溶けていくという。「繊維と音はどちらも振動の世界なのかもしれない」。柔らかさの中に張りがあり、音が震え、生地が震える。「人生のバランスもそうやって調整できたら案外ストレスも悪くない相手かもしれません」と哲学的な岡田さんだ。

【略歴】

 おかだ・やすき 1981年三井物産入社。89年モスクワ支店次長、97年繊維部製品室長、2000年青島事務所長(兼)有限公司総経理、08年コンシューマーサービス本部西日本CS事業部長、09年関西業務部長、12年関西支社副支社長を経て16年に給食委託企業、メフォス専務取締役、18年同社社長。22年6月退任、同年7月からコスモテキスタイル社長