紡績会社の縫製品事業特集/縫製品の卸売り/子会社通じ、賃借商標で

2002年06月26日 (水曜日)

富士紡が先行

 紡績会社は、縫製品の生産を請け負う一方で、有名な商標を借り、それを冠した縫製品を自ら卸すという事業を、子会社を通じて行っている。

 その規模が最も大きいのは、富士紡だろう。同社は、全額出資子会社のフジボウアパレルを通じて、「BVD」「タイトリス」などの賃借商標を冠した衣料品を卸している。その年商は、200億円前後に達しているという。うち、100億円強は、「BVD」によるもの。

 フジボウアパレルは今、「BVD」の市場を近隣諸国へも広げつつある。昨年から韓国で、今年5月からは香港でも、「BVD」肌着が販売され始めた。今年の夏には、台湾での、後半にはタイでの販売も始まる見込みだ。中国で販売することも検討しているという。2004年度には、「BVD」製品の売上高の2割を、海外で稼ぎ出したいと意気込む。

 同時に、生産拠点も近隣諸国へ広げ始めた。2004年度には、前述の海外販売分も含めた「BVD」製品の5割を、海外一貫生産品にするという計画を持っている。中国・常州に昨年8月、フジボウアパレルの全額出資で、縫製子会社(富士紡常州服装)を設立。ここで、「BVD」トランクスを年間100万~150万枚規模で縫製し始めた。さらに昨年10月、タイのジンタナ社が51%、フジボウアパレルが49%を出資し、縫製管理会社(ジンタナ・フジボウ)を設立。ここを窓口にジンタナ社の縫製工場を使い、「BVD」肌着を年間300万枚規模で生産している。

自社商標での挑戦も/カネボウ繊維が昨年から

 子会社を通じて、賃借商品を卸すというのが、紡績会社の縫製品卸売り事業の一般的形だが、本体が、自社登録商標で卸すという事例もここへきて出てきた。

カネボウ繊維は昨年4月、痩身サポーター群を「キュート・サポート」商標で発売した。これに加えて、銀メッキ繊維の「エックスエイジ」で作ったタオル、靴下もそろえ、薬局チェーンへ売り込んだ。初年度の売上高は、1億円強とまだ少ない。しかし、今年4月に投入した「ビタミンキレイ」商標の婦人肌着が、4~6月の3カ月間で「1億円超」の販売実績を残すなど、拡大方向にある。

 昨年9月には、カネボウの化粧品事業本部が男性化粧品に使っている商標、「ジェイク!」を冠した紳士服(スーツ、シャツ、ネクタイ)を、紳士服チェーンのはるやま商事へ卸し始めた。9月に秋冬物、12月に梅春物、3月に春夏物をという周期ではるやまの物流センターへ一括納品、追加納品はしないという方式だ。だから、カネボウ繊維に在庫リスクはない。現在、はるやま商事を含む4社の紳士服チェーンへ、この方式で卸している。初年度年商は2~3億円(卸値)に達する見込み。ジャケットやパンツを今秋から品ぞろえに加える予定もあるため、2年目の年商はその倍になると予想している。

 昨年秋には、これに加えて紳士礼服の卸売りも開始している。今春から、その卸し先を増やした。現在、はるやま商事を含む紳士服チェーン5社と、大手量販店1社へ、追加納品をしない“売り切り御免”方式で卸している。その卸売額は今年度、「『ジェイク!』の2年目並み」の規模になりそうだという。まだまだある。今年度中に「さらに3、4ブランドを立ち上げる予定」だそうだ。

クラボウも婦人服で参入

 今年5月、クラボウの羊毛事業部も、同社登録商標の「ココデ」で、百貨店を対象に婦人服の卸事業を開始すると発表した。同事業の年商は前年度で127億円。うち、30%前後がすでに、縫製までを請け負った製品納めによるものになっている。この比率を、2003年度に35%へ高めるという方針を同事業部は掲げていた。今回の婦人服卸売り事業は、この計画の立案時には想定していなかったもので、今回の企画を委ねることになったTCカンパニー(大阪市中央区)の十三千鶴代表と同事業部の意向が、「たまたま合致した」ことが、きっかけになったという。