技術の眼/アトリエケー/東洋紡エムシー/カラーループ/名古屋大学/エルケムシリコーンズ/萩原

2026年05月19日 (火曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウエーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈アトリエケー/保冷剤“冷やし続ける”新発想〉

 アシストスーツ製造卸のアトリエケー(兵庫県姫路市)は今夏に向け、新たな保冷ベスト「アイスコンセプトゼロ」を打ち出す。ペルチェ素子で保冷剤を冷やし続けるという発想を取り入れたベストで、冷却効果が長時間持続する。

 電気の流れによって熱が移動する性質を利用して冷やすペルチェ素子を採用したウエアは、冷却部分を首や両脇など皮下に太い血管が流れる箇所に当てて体を冷やすという使い方が一般的。一方、このベストは、ペルチェ素子で保冷剤を冷却することにより、保冷剤の温度上昇を抑えて冷却状態を維持する。

 同社は昨年から、取り付け用の穴が不要で、衣服に挟み込むように装着できるペルチェ素子単品商品「どこでもペルチェ」の販売を本格化させている。今年は同商品の改良版として「どこでもペルチェⅡ」を投入。ベストにはこのペルチェ素子を使う。従来品はクールモードとして5~10℃のゆらぎと、5℃の2モードのみだったが、新たにマイナス1℃のモードを追加した。新設計の排熱構造を取り入れ、熱交換効率を向上させた。

〈東洋紡エムシー/低反発と通気性を両立〉

 東洋紡エムシーはこのほど、低反発性を持つ三次元網状繊維構造体「ナインスクラウド」を開発した。従来の三次元網状繊維構造体「ブレスエアー」を進化させ、枕などに求められる低反発クッション性を実現した。

 ナインスクラウドは、ブレスエアーと同様の構造を持ちながら、独自の紡糸技術によって繊維を芯鞘構造とした。芯に低反発樹脂、鞘に高耐久性樹脂を配置することで、耐久性や耐熱性を維持しながらソフトな低反発性を発現することに成功した。容易に水洗いできることや蒸れ感を防ぐ通気性などブレスエアーの特徴はそのままに、体に寄り添うクッション性を実現している。

 低反発クッション材として一般的なウレタンフォームは、通気性が低く蒸れ感が生じやすいことや、水洗い時の乾燥に時間を要するといった課題があった。これら課題を解決する低反発クッション材としてナインスクラウドを提案する。

〈カラーループ/素材分別せずに色は分ける〉

 廃棄繊維を色分別する独自の「カラーリサイクルシステム」を用いてアップサイクル製品を開発しているカラーループ(京都市)は、さまざまな素材が混在する古着を素材別に分けることなく、色ごとに分別することで、多彩な色合いのリサイクル紡績糸の開発に成功した。

 今回の開発は、日本繊維機械学会の再生糸普及委員会(チーム再生糸)、ボーケン品質評価機構(ボーケン)、新内外綿、故繊維企業などの協力を得て実現したもの。古着などを反毛してリサイクルする際に素材分別をせずに糸に再生する試みはこれまであまり例がない。

 開発は、故繊維企業が回収した古着をカラーループが色分別し、新内外綿が反毛を紡績糸に再生した。リサイクル紡績糸と生地の物性評価はチーム再生糸が、品質表示の検討をボーケンが担当した。これを使い、風合いにも優れる製品を実現できる。

〈名古屋大学/発電する衣服〉

 名古屋大学の松永正広助教は、人の動きで発電する衣服の開発を進めている。動きで生じる摩擦発電の技術を生かすことで、服全体を発電デバイスとして活用できる。人の動きで得た電力の波形は異なるため、動作センシングにも応用できる。

 摩擦発電は周辺の環境からエネルギーを取り出し、電力に変換する技術「エネルギーハーベスティング」の一つ。身近にある微小なエネルギーを有効活用するもので、ほかにも光や熱などがある。環境配慮の考えやデバイスの省電力化が進み、近年注目が高まっている。

 肌に直接貼るゴム製ウエアラブル発電シートの開発を進めていたが、より汎用(はんよう)性のある布型に転換した。面積が大きい布の方が得られる電力が大きいというメリットもあった。あいち産業科学技術総合センター尾張繊維技術センター(愛知県一宮市)に協力を仰ぎ、2024年12月に試作品の衣服を完成させた。

〈エルケムシリコーンズ/防火性能と耐久性両立〉

 ノルウェーのエルケムASA傘下のシリコーン材料大手、エルケムシリコーンズは、建築用など高い防火性能が求められる繊維向けに、新たなシリコーンコーティング材「ブルーシルTCS7544」を開発した。欧州の防火基準「EN13501-1」における最高等級のユーロクラスA1/A2への対応を想定しており、防火安全性の向上と加工性の両立を図った。

 同製品は、低発熱性と発煙量の抑制を特徴とする。燃焼時の発熱量を測定するEN1716(PCS試験)による評価では、従来の難燃シリコーンコーティングと比べて約20%の発熱量低減を確認した。繊維複合材において燃焼要因となりやすいコーティング層の発熱を抑えることで、全体の防火性能向上に寄与する。

 耐久性面でも、紫外線や風雨に対する耐候性に加え、高温下での機械的安定性を確保。膜構造建築や公共インフラ用途など、長期使用が前提となる先進的な繊維資材への適用を見込む。

〈萩原/溶着可能なポリエチレンシート〉

 萩原工業はこのほど、高周波ウェルダーによる溶着が可能なポリエチレンシート「リフレックスハイブリッドファブリック」を開発した。

 リフレックスハイブリッドファブリックは、ポリエチレン織物に特殊オレフィン系樹脂を含浸したもの。これにより従来は縫製による加工しかできなかったポリエチレンシートを、高周波ウェルダーで溶着して成形することが可能になる。

 また、表面を特殊処理することで印刷も可能。高い意匠性を持たせることができる。こうした特徴を生かし、テント・膜構造物の膜材として幅広い用途に提案できるとする。

 膜材は、塩化ビニルシートやポリエステル織物などに塩化ビニル樹脂を含浸したターポリンなどが一般的だが、塩化ビニルはリサイクル性が悪いため、廃棄処理の際の環境負荷が高いといった課題がある。これに対してポリエチレンはリサイクルが容易。