ひと/東洋紡の繊維本部長に就いた黒木 忠雄 氏/ROE高めて高収益体質に

2026年05月21日 (木曜日)

 4月1日付で常務執行役員繊維本部長に就いた。もともとはスーパー繊維が専門の技術者。近年はエアバッグ事業の再構築に取り組んできた。「まずは規模よりも利益を拡大することが繊維事業の役割」と強調する。

 入社後、すぐに総合研究所(大津市)に配属された。紡糸プロセスの専門家として超高分子量ポリエチレン繊維「ダイニーマ」(現「イザナス」)の紡糸技術開発を5年間、その後はPBO繊維「ザイロン」の用途開発を5年間担当するなど生粋の技術者としてキャリアをスタートさせた。

 2000年から営業畑に転じるが、やはり担当したのはザイロン。それから22年までザイロン一筋というから、まさに東洋紡のスーパー繊維のエキスパートの一人といえるだろう。

 技術畑出身ながら、思い出深いのはザイロンの営業だとか。特に輸出のために世界を股にかけた。特に米国は全50州のうち訪れたことのある州は44に達する。「ザイロンはオンリーワンの素材なので、宇宙航空分野などで世界的な大企業と商談することが多いのも刺激的だった。名前は明かせないが、いま話題のベンチャー企業でもザイロンが採用されています」と振り返る。

 スーパー繊維一筋だった黒木さんだが、22年からエアバッグ事業に転じる。エアバッグ事業は18年に敦賀事業所(福井県敦賀市)で発生した火災で原糸製造設備を焼失。その後はインドラマ・ベンチャーズ傘下企業との合弁でタイに原糸工場を立ち上げるなど、タイを中心に抜本的な生産・販売体制の再構築の真っただ中。そこで黒木さんに白羽の矢が立った。

 事業再構築の途上、赤字が続くなど苦しい展開が続いたエアバッグ事業だが、ようやく軌道に乗り、26年度(27年3月期)下半期からは黒字浮上する見通しとなった。「繊維事業のうち衣料繊維事業の東洋紡せんい、アクリル繊維事業の日本エクスラン工業ともに黒字化した。あとはエアバッグ事業が黒字化すれば、繊維事業としてのROE(自己資本利益率)も高まっていく」と、高収益体質への転換に向けた思いは強い。

 健康管理のために自宅から会社まで毎日5キロの道のりを歩く。「いろいろな所を歩くのが好き。米国に駐在していた時もニューヨークの街を歩き回った」という健脚家だ。東洋紡の繊維事業の収益拡大の歩みも一段と速まることが期待される。(宇)

 くろき・ただお 1989年九州大学大学院工学研究科修了、東洋紡入社。ザイロン事業部長やスーパー繊維事業総括部長、繊維機能材事業総括部長などを経て2022年執行役員、26年4月から常務執行役員繊維本部長。宮崎県出身。61歳。