中韓メガシティーに挑む~ゴールドウインブランドの現在地~(前)
2026年05月27日 (水曜日)
哲学堅持と市場への適応
ゴールドウインは社名を冠したブランド「ゴールドウイン」を2033年3月期に売上高510億円とするプロジェクト「ゴールドウイン500」を推進している。今期(27年3月期)の計画101億円に対して5倍の規模だ。その成長エンジンと位置付ける東アジア市場で、いかにしてブランドの浸透を図るのか。中国と韓国における取り組みの最前線を取材した。
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上海から新幹線で1時間ほどの浙江省杭州市。IT企業の集積地として知られる人口1200万人超のメガシティーだ。ここに中国直営店の中で売り上げ1、2位を争う杭州店がある。
店舗は市内中心部の大型商業施設に入っている。取材中、偶然入店してきた市内在住という30代夫婦に声を掛けた。「ゴールドウインはアウトドアブランドとしての高い機能性を持ちながら、デザインが非常に簡潔で洗練されている。街着としても着回せる点がとても良い。今日は夫と父へのプレゼントを探しに来た」と夫人は笑顔を見せた。
機能性とファッション性が高レベルで融合した製品を求めるのが今の中国の富裕層・アッパーミドル層。顧客基盤を築きつつある場を垣間見た気がした。
フロアに居並ぶのは名だたるグローバルスポーツブランドばかり。多くはにぎやかなVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を採用しており、それを「動」とするならば、ゴールドウインの店舗は対極の「静」という印象を放ち逆に目を引く。十分な余白を生かし、整然と商品が並ぶ。
中国本土での事業展開を目的とした合弁会社「ゴールドウインチャイナエンタープライズ」を現地企業と設立したのは24年。ブランド哲学の維持と出店戦略でイニシアチブを取るため、ゴールドウインの出資比率を65%とした。プロジェクトではブランド目標売り上げの約6割に当たる300億円を中国事業で稼ぎ出す計画だ。
ゴールドウインチャイナエンタープライズの齊藤武董事長は「中国では、メガシティーへの出店加速とDtoCの主軸化を戦略の柱としている。そのためSNSをはじめ、顧客との直接的な接点をスピーディーに増やしていくことが大事」と力を込める。
出店は一級、新一級都市を中心に進めており、27年3月期末までに既存の直営店11店舗(5月末時点)に4店舗を追加し、計15店舗体制とする計画だ。そのほか既存アウトレット2店舗、市場の反応を探る期間限定店を随時出している。33年3月期には中国全体で70店舗のネットワークを構築する壮大なロードマップを描く。
売り上げで杭州店とトップ争いを繰り広げている上海1号店が好調なことから、22日には同市内に2号店をオープンした。店舗網が広がるにつれ、ブランド哲学と各都市の実情に合わせた商品供給の最適解がより求められるようになる。その店舗網を支える現地のマネジメント人材と、ブランドストーリーや機能的価値を顧客に深く語れる販売スタッフの育成も並行して進めなければならない。
斎藤董事長は「新規顧客の獲得だけでなく、リピーターの確保と、ローカルの微細なニーズをくみ取った商品展開が不可欠。そしてブランド哲学や背景にある日本のクラフトマンシップを正しく理解してもらうことが重要」と、課題について率直に語った。
中国ではコピー品などのチャイナリスクに加え、若い世代を中心に自国ブランドを好む「国潮」現象のうねりにも引き続き注視が必要だ。
齊藤董事長は前職の伊藤忠商事在籍時から長年にわたり中国ビジネスに携わってきた。だからこそ「プレミアムスポーツブランドでありながらも、文化や哲学を伴った唯一無二の存在としてのグローバルニッチというポジションを狙う」との考えに至るのだろう。





