アジアの化繊産業/欧州の環境規制への対応不可避/〝環境〟で連携模索
2026年05月27日 (水曜日)
アジアの化学繊維産業が、リサイクルなど〝環境〟への取り組みで連携を模索する動きが強まっている。背景には、欧州が推進する環境規制強化への対応が避けられないこと、環境規制や認証制度での主導権を欧州に握られ続けていることがある。(宇治光洋)
14~15日にマレーシアのペナンで開催された第15回アジア化学繊維産業連盟(ACFIF)会議は「サプライチェーンのグリーン化」を議題とし、サステイナビリティーや環境がテーマとなった。特に問題となったのが、欧州が主導する環境規制強化への対応策だ。
会議に招かれた欧州人造繊維協会(CIRFS)のフレデリック・ヴァン・ホウト事務総長は、欧州連合(EU)が進める産業排出量規制による汚染物質排出量削減計画や、製品のライフサイクル全体の環境・循環性などの情報を電子的に管理・提供するデジタル製品パスポート制度(DPP)について説明した。
DPPはEU域外から輸出される製品も対象となることから、素材だけでなく最終製品を通じても欧米市場を主力の一つとするアジアの化繊産業にとって対応が避けられない。このためアジア各国とも繊維to繊維(T2T)リサイクルなどの実用化を急ぐ。ただ、使用済み繊維製品の回収・分別など消費者も巻き込む必要のある工程を含めてどのような循環システムを構築するのかといった課題も多い。
タイ人造繊維工業協会のタパンクマール・サニグラヒ氏(インドラマ・ポリエステル・インダストリーズ)は「バリューチェーン全体で取り組む必要がある」とし、インド合成繊維工業会のヘマント・D・シャルマ会長(リライアンス・インダストリーズ)は「消費者への意識付けのために政府の働きかけが必要だ」と指摘する。パキスタンポリエステル短繊維製造業者グループのリズワン・アフザル・チャウドリー会長は「問題はコスト。需要家がサステ素材のプレミアム価格を認めるかどうかだ」と話す。
日本化学繊維協会の内川哲茂会長(帝人社長)は、「アジア全体でサステ素材のサプライチェーンを構築することが重要」と指摘する。また、世界的には拡大生産者責任の考えからリサイクルのコストなども生産者が負担すべきとの意見が強まっているが、「拡大生産者責任だけでは難しいのではないか。やはり使用者(消費者)も責任を負担することでコスト問題も克服でき、T2Tの拡大につながる」と指摘する。
もう一つ課題となるのが認証。環境規制に対応するため第三者認証の取得が求められるが、認証・監査にかかるコスト負担は大きい。世界の化繊生産の約90%をアジア諸国が担う一方で、国際的な認証機関は欧米に偏重しており、結果的にアジア諸国が欧米に多大な認証・監査コストを支払う構造となり、〝認証疲れ〟といった言葉さえささやかれている。
このためACFIFで必要な認証を整理した一覧表を作成するなどのアイデアが出る。それら認証に関してアジアで共通認識が定まれば、生産の90%を占めるだけに強力な発言力を持つ可能性があると主張する。この点でもアジアの化繊産業がさらに連携すべきだという共通認識が醸成されつつある。
アジアは各国がそれぞれ事情を抱えていることから共同歩調をとるのが難しい地域だとされる。しかし、欧州が主導する環境規制強化や第三者認証制度といった共通のプレッシャーに対応するために、一段の連携が模索され始めた。





