特集 スクールユニフォーム(6)/探訪 学生服の現場から/愛媛県立松山商業高等学校/人間教育に力を注ぐ

2026年05月28日 (木曜日)

 愛媛県立松山商業高等学校(松山市)は、実業家の渋沢栄一の言葉「士魂商才」の校訓の下、地域社会に根差した商業教育の推進を進めている。地域の企業や大学と連携したさまざまな実践的な教育が特色の一つだ。2026年度から、約60年間デザインが変わることのなかった学生服を刷新した。今年、創立125周年を迎えた同校は、新しい学生服とともに次なるスタートを切る。

〈県下有数の商業教育〉

 「奇跡のバックホーム」――1996年夏の甲子園の決勝戦で延長10回裏、同校のライト矢野勝嗣選手が放った伝説的なバックホームで、サヨナラのピンチを救い、チームを劇的な全国制覇に導いたプレーだ。

 全国区では野球のイメージが強い同校だが、実は県下有数の商業教育が受けられる進学校でもある。日本商業教育振興会や高崎商科大学経理研究所などが連携し、高度な会計教育を高校生に提供するスーパー・アカウンティング・ハイスクールにも指定されている。

 商業教育が奏功し、超難関とされる日商簿記1級や応用情報技術者試験に合格する生徒もいる。「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」が主流になりつつある中で、推薦に有効な資格取得を支援し、多様な進路の可能性を広げる。

〈約60年ぶりの制服刷新〉

 商業教育への特化が支持されて定員割れすることのなかった同校でも、少子化の影響で2024年に初めて定員割れする事態となった。これを受けて学校の魅力発信に取り組み、その一環として、生地の変更を除いてデザインが約60年間変わることのなかった学生服を刷新することとなった。

 野球部で顧問も務める坪倉寿徳先生主導の下、24年に生徒会などが参加する制服検討委員会を立ち上げた。生徒たちが中心となって新しい制服をコンセプトから決めていった。

 同窓会長を務めていた、起業家の木曽千草さんからも要望が届いた。「着心地や機能性を高めて快適な学校生活を過ごせることに加え、進路を考える中学生にアピールできる学生服」への刷新を希望するものだった。

 さまざまな意見を交換する中で決まった、新しい学生服のコンセプトは、「選べる学生服」だ。

〈多様性を受け入れる学生服〉

 新しい制服は、スラックスとスカートのどちらでも選ぶことができて、性的少数者(LGBTQ)の多様な性に応える。男子生徒の学生服は詰め襟服から、女子生徒と同じブレザーに変えて男女同じデザインになった。中学生の頃は詰め襟服だったという1年生の折田眞典さんは、「ネクタイを締めると気持ちが引き締まる」としてブレザーが気に入っているそうだ。

 ネクタイを基本としつつ、リボンも選べる。カーディガンは基本のグレー以外にもホワイトを展開。セーターもオプションとして選ぶことも可能だ。学生服の中でも個性を演出できる選択肢の広さが魅力となっている。

 猛暑が続く夏季には、ワイシャツのほか、ポロシャツも選ぶことができる。生地は接触冷感機能があり通気性も高く、肌と接地する面積が少ないためベタつかない。シャツインしなくても良い着丈に設計しているため、体感温度を下げられる。

 坪倉先生が「一番の魅力」だと語るのは、スクールカラーであるグリーンを随所に取り入れた仕様だ。スクールカラーである緑を基調としたネクタイを採用した。ブレザーには、紺糸で織られた生地の一部に緑の糸を織り込み、紺と紺の糸の間からスクールカラーの糸が垣間見える、明石スクールユニフォームカンパニーが特別に作った生地を使っている。

 スカートは、チェック柄に刷新。1868年にスコットランドで創業された老舗のキルトメーカー「キンロックアンダーソン」に別注した同校だけの特別な格子柄だ。入学時に旧学生服を購入した現2年生の女子学生の半数近く、新しい学生服を購入するほど好評を博した。

〈地域のビジネスリーダー育てる〉

 学生服を刷新した同校は今年、創立125周年を迎えた。二神弘明校長は、「新しい学生服とともに次なるスタートを切りたい」と語る。「愛媛県下の商業教育の中核校として、人工知能(AI)にまねできない“人間教育”に力を注ぎ、地域のビジネスリーダーを育てる」と誓った。