ごえんぼう
2026年06月01日 (月曜日)
かつては6月1日、10月1日を境に、学校も職場も一斉に装いを改めた。だが近年は夏日が早まり、秋にも暑さが残る。暦通りに服を替えにくくなり、衣替えという言葉にも少し懐かしさが漂う▼夏目漱石は「ぬいで丸めて捨てゝ行くなり更衣(ころもがえ)」と詠んだ。しみじみ畳むのでなく、古い季節を身から払い落とす軽さがある。衣替えは、身にまとった時間を脱ぐことでもある▼宝井其角の「越後屋にきぬさく音や更衣」は、反物を裁つ音に季節の到来を聞いた句だ。衣を替える人の先に、織り、染め、仕立てる人がいる。衣替えは生活文化で、衣料流通が動く節目でもあった▼与謝蕪村は「更衣布子の恩のおもさかな」と、冬をしのがせた1枚への感謝を句にした。ファストファッションは衣料品を使い捨てに近付けたが、環境配慮と物価高が、その感覚を変えつつある。衣への”恩”は今、気温の”温”と重なり、装いの在り方を問い直す。





