東洋紡/2030中期経営計画が始動/成長投資などの成果実現

2026年06月08日 (月曜日)

 東洋紡は2026年度(27年3月期)から5カ年の「2030中期経営計画」をスタートした。最終年度の30年度(31年3月期)には連結売上高5千億円(25年度比18・6%増)、連結営業利益450億円(61・3%増)を計画する。そのために「これまで実行した成長投資・仕込みの成果を実現する」と竹内郁夫社長は強調。重点事業への集中投資によるポートフォリオ改革を推進する考えを示す。

〈30年度売上高5千億円へ/ROE8%超を目指す〉

 新中計は「サステナブル・ビジョン2030」の後半と位置付け、財務体質の改善と利益成長を両立し、30年度までに自己資本利益率(ROE)8%超(25年度5・5%)を目指す。「安全・防災、品質、コンプライアンスの徹底」を大前提とし「事業ポートフォリオ改革」「未来への布石」「基盤づくり・強化」の三つの施策を進める。

 事業ポートフォリオ改革としては「収益性と将来性」の2軸で、「重点・維持改善・育成・課題」の4象限に各事業を層別し、おのおのの位置付けに応じた事業運営を行う。28年度には重点事業に位置付ける工業用フィルム、バイオ、メディカル、環境・機能材の電子材料の使用資本比率を55%とする計画だ。

 フィルム事業では投資効果の発現や工業用フィルム、包装用フィルムの一体運営による持続的成長基盤を構築。半導体、燃料電池、風力発電、太陽電池、エネルギー・宇宙向けの高機能工業用途におけるカテゴリー・リーダーを目指す。環境対応、高品質製品へのポートフォリオ改革も進め、30年度には売上高2200億円(25年度1752億円)、営業利益200億円(166億円)を目指す。

 ライフサイエンス事業は生活の質(QOL)の向上に貢献する製品をグローバル展開すると同時に、新規市場(治療領域)への開拓を進める。膜技術の血液浄化、医薬品製造プロセス用途などへの展開も加速。30年度に売上高500億円(345億円)、営業利益90億円(1億円)を目標とする。

 東洋紡エムシーが主体となる環境・機能材事業は電子材料、環境、モビリティの三つの注力領域に経営資源を集中。海外強化、新規開発、インオーガニック施策の実行とアライアンスを通じたポートフォリオの改革を加速。30年度には売上高1500億円(1101億円)、営業利益150億円(97億円)を目指す。

 未来への布石としては「先端材料」「ヘルスケア」「環境・エネルギー」の価値提供領域の有力テーマに対して資源をシフトする。

 基盤づくり・強化では経営戦略と連動した人材戦略、TX(トウヨウボウ―トランスフォーメーション)の推進、ロードマップに沿った安全・防災、品質の活動推進、リスクマネジメントの強化など経営基盤の強化を図る。TXでは、経営チームのリーダーシップの下、「ヤメル、まとめる、つなぐ」の基本方針を通じて付加価値革命を実践し、サステイナブルな企業に変革する諸活動を進める考えだ。

〈繊維は維持改善事業/エアバッグ黒字化にめど〉

 前中計では要改善事業に位置付けられていた繊維事業については「収益改善が進んだ」とし、新中計では維持改善事業と位置付けを変更。30年度には売上高約450億円、営業利益約35億円を見込む。

 このうちエアバッグ事業は「収益改善が進み、黒字化のめども立った。新中計でも引き続き収益性を高めていく」として、生産拠点をタイに集約するなど投下資本をコンパクトにすることで、投下資本利益率を高める考えだ。

 東洋紡せんいを中心とした衣料繊維事業は中東民族衣装用織物に引き続き力を入れるほか、多くのアイテムでニット化の流れが強まっていることから、ニット生地・製品の拡充を進める。また、衣料用途だけでなく資材用途の開拓にも力を入れる。

 アクリル短繊維製造の日本エクスラン工業は衣料用汎用(はんよう)わたの自社生産を中止し、海外委託生産に切り替える。自社工場はアクリレート系繊維を含めた機能繊維に特化するほか、フィルターなど産業資材シフトを一段と強める。

〈東洋紡せんい/得意で特異な領域勝負/中東輸出とニットを強化〉

 衣料用繊維の主体である東洋紡せんいは構造改革によって2023年度に黒字浮上した。これまでは守りを固めて失点を防ぐことに主眼を置いた。新中計では「繊維事業の使用資本を踏まえて利益率を高めることを一つのテーマ」(東洋紡せんいの長尾貴庸社長)とする。大きな戦略の変更はないが、改めて開発や海外拠点の活用などに力を入れる。

 特に力を入れるのは自社の強みが発揮できる得意な分野。中東民族衣装用織物もその一つ。産業資材でも塗膜防水材やルーフィング基布などニッチで得意な分野があり「得意で特異な領域で勝負する」考えだ。

 26年度からは組織も再編し、7事業部体制から5事業部1グループ体制とした。スポーツ事業部とユニフォーム事業部を統合してユニフォーム・スポーツ事業部に、機能資材事業部と工業材料事業部を統合して産業資材事業部とした。さらに営業本部直轄でニットテキスタイルグループを新設した。

 従来の7事業部体制はマーケットイン型の発想に基づく構成だったが、新体制ではプロダクトアウト型の開発や提案を強化した。ニットテキスタイルグループの新設もその一つ。さまざまなアイテムで生地のニット化が進むが、同社は早くからこの動きに対応し、ニット製のドレスシャツや学生服地で実績がある。ワークウエア向けもポリエステル長繊維ニット生地「スクラムテック」が評価される。こうした動きを幅広い用途やアイテムに広げる考えだ。ユニフォーム・スポーツ事業部は素材の強みを生かしてシナジーを発揮、産業資材事業部は塗膜防水材やルーフィングなど得意とする分野やアイテムの周辺に事業領域を広げることを狙う。

 中でも中東民族衣装用織物とニットの拡大に重点的に取り組むが、各事業とも中身を変えていく。例えばスクール事業は少子化で既存の市場が将来的に縮小することが確定しているだけに、学生服に加えて病院の患者衣など新市場とアイテムの拡大を目指すなど、各事業ともポートフォリオを改革し、資産効率を高める。