旭化成/現中計は順調に進展/営業利益2700億円に自信

2026年06月09日 (火曜日)

 旭化成は、2027年度(28年3月期)が最終年度の中期経営計画に取り組んでいる。初年度の25年度は、営業利益で2期連続過去最高を更新するなど、着実な進展を見せている。工藤幸四郎社長は、最終年度の営業利益目標である2700億円について「達成の確度は高まっている」と自信を示し、27年度の先を見据えた施策も講じる。

 現中計の「Trailblaze Together」は25年度に始動した。基本方針として、「投資成果創出による利益成長」「構造転換や生産性向上による資本効率改善」「Diversity(多様性)×Specialty(独自性)の進化」の三つを掲げ、成長への取り組みを進めている。

 中計では、最終27年度に営業利益2700億円(前中計最終の24年度実績は2119億円)の達成を目指す。そのほかの経営指標については、ROIC(投下資本利益率)6・0%(24年度実績5・5%)、自己資本利益率(ROE)9・0%(24年度実績7・4%)も目標値として設定している。

 初年度の25年度は、営業利益が2312億円となり、過去最高だった24年度の実績を9・1%上回るなど、最終年度の目標に向けて着実に前進した。ROICは5・9%に、ROEは8・0%に改善した。ROICは営業利益増加や税金費用軽減の効果があった。ROEは、当期純利益の増加が寄与した。

 増益は、「医薬事業」や「エレクトロニクス事業」をはじめとする成長分野がけん引役を務めたほか、不透明感が強い事業環境下でも持続的成長を実現する事業ポートフォリオが奏功した。中期的な企業価値向上に向け、成長投資と構造転換にも継続して取り組む。

 同社は、ヘルスケア、住宅、マテリアルの3領域経営を進めている。27年度の営業利益目標への到達は、ヘルスケア領域の医薬・ライフサイエンス・クリティカルケア、住宅領域の海外住宅、マテリアル領域のエレクトロニクスの重点成長事業の拡大が大きく寄与するとみている。

 住宅やセパレータをはじめとする北米での事業環境リスク、関税リスクなど、150億円程度の減益リスクはあるものの、工藤社長は「それらを勘案しても2700億円は十分に達成可能とみている」と話した。

〈「重点成長」に積極投資〉

 投資は、3年間で9300億円(意思決定ベース)を計画している。ヘルスケアを中心に投資案件を精査したことで当初予定の1兆円から減額となったが、「重点成長」事業には積極的な拡大投資を行う。拡大投資は全体で6千億円を予定しているが、そのうちの約6割を「重点成長」事業に充てる。

 拡大投資では、ヘルスケア領域で医薬関連のM&A(企業の合併・買収)を25年度に実施した。同領域におけるその他の投資は事業環境を踏まえて慎重に判断する。住宅領域では、北米投資を見直しつつ、国内の成長投資機会を探索する。マテリアル領域は、電子材料の能力増強の前倒しを決定した。

 マテリアル領域では、構造転換を継続的に検討する。ケミカル事業の改革に加え、ケミカル事業以外でも一部事業の他社への譲渡や協業を進める。子会社の旭化成アドバンスと帝人グループの帝人フロンティアの経営統合・新会社(TAフロンティア)発足もその一環となる。

 現中計で実行する予定の構造転換は既に目標の約7割を意思決定済み。同社は、30年に営業利益3800億円、ROIC8・0%以上、ROE12・0%以上を目指している。工藤社長は「28、29、30年でしっかりと収益を上げる必要があり、マテリアル領域にも期待する。そのためにも構造改革を確実に実行する」と強調した。

〈さらに強いエコシステムを〉

 事業戦略の実行状況については、事業環境変化に対して機動的に対策を講じて中計目標の確実な達成を目指す。「インフレ対応を巡る各国財務政策」「地政学リスクの常態化と分断型世界経済」「AI・デジタル活況や脱炭素投資低迷に代表される偏在的経済」などを事業環境変化と捉える。

 重点成長事業での対応のうち、医薬は米国の政策動向などを見極めた上で中期的成長に向けてM&Aを決定する。海外住宅は、豪州の積極的な拡大策による成長を追求する。エレクトロニクスは、感光性絶縁材料「パイメル」の能力増強の前倒しや次々世代ガラスクロスの開発を加速する。

 戦略的育成事業の対応では、ライフサイエンス(ヘルスケア領域)でCDMO事業の体質強化・戦略再構築に着手する。国内住宅(住宅領域)は建築請負事業で大型化・高付加価値化による受注単価上昇やコスト削減を加速する。エナジー&インフラ(マテリアル領域)でも対応を進める。

 経営を取り巻く環境は不透明感を増しているが、中長期的な視点では大きな変化はないとみている。同社には、各領域が経営基盤を共有・柔軟に相互活用して価値を提供する「エコシステム」がある。「重点成長事業で稼いだキャッシュで次の投資を実施し、さらに強いエコシステムを作る」(工藤社長)とした。