トンボ150周年/想像力で新時代切り開く
2026年06月10日 (水曜日)
学生服製造大手のトンボ(岡山市)は5月10日、創業150周年を迎えた。150周年に向けて、瀧本のグループ化、アンダーアーマーなどとの協業、消化転写プリントの導入などさまざまな策を進めてきた。大きく変化する学生服業界にありながら、成長を続ける原動力となったのが、想像力で業界の先駆けとなる新しいモノを創造する力だ。同社のここ10年間を振り返る。
〈150年目に向け積極策〉
2016年に140周年を迎えたトンボは、「顧客にとってのファーストコールカンパニーとなることを実現する」目標を掲げ、3カ年の中期経営計画「アクション300」を立てた。4基本方針として「事業戦略の強化・創造」「組織体制の進化」「経営基盤の強化」「環境CSRの推進」を掲げた。
16年の入学商戦では、制服をモデルチェンジ(MC)した約250校のうち、4割を占める100校強を獲得した。来季に向けて「イーストボーイ」や高校生向けの自由通学服ブランド「&be」(アンビー)の浸透を図った。
スクールスポーツで主力の「ヨネックス」は、約100校の新規採用を獲得し、累計で700校強にまで増えた。アスリートを招き講演と実技指導を無料で行う「ビクトリースポーツ教室」などを通じて、ブランドの認知向上にも取り組んだ。
〈昇華転写で革新起こす〉
16年11月には、ニット製品の主力工場となる美咲工場(岡山県美咲町)で、15年12月に完成した昇華転写プリントの一貫加工ラインを公開した。昇華転写プリントはグラデーションなど精細な柄表現ができ、摩擦などへの耐久性も高い。素材の風合いも損なわず、学販体育衣料には最適な手法だとしている。
これまで、生地の切り返しやパイピングなどを用いていたデザイン部分をプリント表現で置き換えるなど、デザイン提案幅の拡大に加え、部品点数も削減できる。各種デジタル技術を組み合わせることで小ロット対応力向上にもつながる。
学販体育衣料に昇華転写プリントを用いるケースは珍しく、導入は革新的な出来事だった。差別化の重要な技術として、「ヨネックス」「ビクトリー」の学販体育衣料を中心に取り入れた。当時、8%前後とみていた学販体育衣料の市場シェアを10%程度まで拡大させる目標を示した。
〈生産基盤の強化進める〉
製造面でも学販体育衣の強化を進めた。美咲工場に「品質認証課」を設置し、品質管理を徹底していくほか、18年に女子ブレザーを中心に生産するトンボ倉吉工房の隣接地にスポーツウエア生産の専用工場「トンボ倉吉工房スポーツ館」(鳥取県倉吉市)を新設し、自社の生産比率を高めた。
国内で九つ目の工場で、スポーツウエア専用工場としては三つ目。14年から稼働するブレザー生産のトンボ倉吉工房スクール館に併設し、スポーツ衣料などのジャージーの上下物やウオームアップウエア、介護・メディカルウエアを生産する。
スクールスポーツ事業は18年入学商戦で200校以上の新規獲得校があり、次の入学商戦に向けても順調に新規採用校の獲得が進んでいたことから、工場の新設に踏み切った。安定した生産体制を整えることで品質やコスト、納期への対応力の向上を図った。
〈瀧本をグループ化〉
19年5月、日鉄物産の子会社だった学生服メーカーの瀧本の株式を51%譲受したと発表した。モノ作りの強化を目指し生産面でキャパシティー共有を見据えるとともに、販売の前線では競合相手として「切磋琢磨(せっさたくま)しながら市場でシェアを広げる」構想を描いた。
瀧本のグループ化で、市場占有率は高まり、モノ作りを通じて新しい制服文化を創造する企業としての存在感を高めた。
〈大都市圏の戦力強化へ〉
21年の入学商戦では、性的少数者(LGBTQ)の対応に向けた制服のブレザー化でニーズを捉えるなど堅調に新規採用校を獲得した。経費削減やグループの瀧本の赤字脱却などで大幅増益となった。
新しい営業手法の確立やネット環境の整備強化、人工知能(AI)による自動化などで「利益重視」の経営を進めたほか、大都市圏の戦力強化を最重要課題に取り組んだ。
〈想像力で新時代築く〉
22年9月、8代目社長に藤原竜也氏が就いた。就任に際し、社員に向けて「みんなの想像力でトンボの新商品を作っていこう」とのメッセージを伝えた。
1976年にスクールアイデンティティーを提唱し、学校制服のオリジナル化にいち早く取り組んできた。ヘルスケア部門ではニット病衣を、スクールスポーツ部門ではピステタイプの体育着「ピストレ」を提案するなど、業界の先駆けとなる新しいモノを創造し発信してきた。
藤原社長は、2023年6月期のスローガンは「体制新たに事業の創造 一人ひとりの想像力で築こうトンボの新時代」と定めた。
〈事業拡大へ策を打つ〉
23春商戦からスクールスポーツで米国の大手スポーツ用品ブランド「アンダーアーマー」の展開に乗り出した。初年度の入学商戦には100校、10万点の販売を計画した。
「東京物流センター」(茨城県笠間市)の稼働を同年、開始した。拡大する首都圏学生服市場を管轄し、5年後をめどに東日本全域をカバーする拠点へと拡張させたいとする構想も明らかにした。
24年7月、紳士服などアパレル製品の製造を手掛ける創作屋(岡山県総社市)の発行済み全株式を取得し、グループ化した。グループ化によって製品の品質や生産効率の向上が見込まれることに加え、相乗効果を生み出すことで顧客にさらなる価値を提供し、両社のブランド価値をさらに高めた。
シップスとのライセンス契約も締結した。セレクトショップという概念がない時代から上質なアイテムをそろえて販売してきたシップスと、「学校らしさ」を表現する制服という考え方がない時代から「スクールアイデンティティー」を提唱して製品化してきた2社が協業し、「シップススクールイヤーズ」ブランドで学生服の展開を始めた。
25年にヘルスケア本部が展開する「キラク」が30周年を迎えた。リネンサプライヤー経由で納品する入院セット向け患者着の販売がけん引して業績も好調に推移する。遠赤外線効果を持つ繊維で、血行を促進して疲労回復を促す効果が期待できる「めぐるきらくリカバリーウエア」も発売した。
〈ご縁をたいせつに〉
150年間にわたり事業を継続できたのは、関係各位と結んだ“ご縁”のたまもの。これまでの「ご縁を大切に」、200周年に向けてトンボは、動きだす。
〈アニバーサリータータン〉
150周年記念事業の一環として、スコットランドの老舗タータンメーカー、ロキャロンで独自の格子柄生地「アニバーサリータータン」を制作した。
ブルーは「コーポレートブルー」、ネービーは「コンプライアンスの徹底」、ピンクは「ダイバーシティ経営」、グリーンは「人と自然を大切にした価値ある製品づくり」、ホワイトは「ファーストコールカンパニーの実現」と、それぞれの色で会社としての姿勢を表した。





