繊維ニュース

技術の眼/シフトール/協同/DITF/日本ノズル/アールエスタイチ/コベストロなど

2026年06月11日 (木曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウエーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈シフトール/「着る冷水プール」で酷暑対策〉

 ウエアラブルデバイスの開発・製造販売を手掛けるShiftall(シフトール、東京都中央区)は、過酷な環境下での作業やアウトドアに対応するペルチェチラー方式の水冷ウエア「ChillerX Pro」(チラーエックスプロ)の開発し、予約受け付けを始めた。

 同製品は、冷却性能を重視したプロ向け仕様として開発した。2025年モデル比で約1.6倍の冷却性能を実現した。近年、地球温暖化に伴って夏季の記録的な猛暑や酷暑日が増え、熱中症リスクが高まっている。一方、従来の氷を使う水冷服は、時間の経過とともに冷却効果が低下し、氷の管理にも手間がかかることが課題だった。

 これに対し同社は、電気の力で冷却した水を常時循環させる新方式を採用した。長時間の使用でも冷たさが持続し、外気温45℃の過酷な環境下でも、水冷シートを巡る水の温度をサウナの水風呂に近い約15℃に保つという。「常に水風呂につかっているような感覚」で酷暑を乗り切れる独自構造とした。

〈協同/洗っても光る再帰反射マーク〉

 服飾資材製造卸の協同(岡山県倉敷市)は、DTF(ダイレクト・トゥ・フィルム)捺染で作った再帰反射マーク「ピカトラ」の販売を始めた。版が不要で、1枚からのオンデマンド生産を実現する。「DTF再帰反射マーク自体はこれまでもあったが、耐洗濯性を備えるものはなかった」(西川源徳社長)という。

 DTF捺染を用いることで、①版が不要②1枚からのオンデマンド生産が可能③短納期に対応④フルカラーやグラデーションなど表現力が高い⑤版の保管期限がない――といった利点がある。

 特筆すべきは、耐洗濯性の高さだ。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)が実施したJIS L1930C4M法試験で10回洗濯後も再帰反射係数が15cd/lx・平方メートルの基準値を維持すると確認が取れた。

 用途として、消防団や地域防災組織が着用する活動服の所属ワッペン、交通安全指導員などが着用する高視認性ベストへの名入れ、学生服の通学路での視認性向上などへの活用を想定する。

〈DITF/空調制御作業服を開発〉

 ドイツ繊維研究所(DITF)は、作業服に組み込める繊維製の空調制御システム「StAirS」を開発した。靴のインソールを空気圧縮機として活用し、歩行動作を動力源として空気を送る仕組み。外部の圧縮空気接続を使わず、着用者の通常の動きで作動する。

 従来の保護作業服は、激しい動作時に汗や余分な体温を逃がしにくいことが課題だった。DITFは、体に近い位置で温度を調節できる通気性に優れた繊維構造を研究。保護作業服に直接組み込むことで、人体の自然な体温調節を補助し、職場での安全性と快適性を高める。

 開発したシステムでは、靴の中の圧縮可能なインソールが歩行動作で圧縮空気を発生する。発生した空気は作業用保護パンツ内のホースシステムを通じ、上着に組み込んだ空調要素へ送られる。パンツと上着を切り離す専用ベルトバックルも備え、分離時には空気の流れを遮断できる。

〈日本ノズル/精密ギヤポンプの販売開始〉

 紡糸ノズル製造の日本ノズル(神戸市)はこのほど、ギヤポンプなど製造の協和ファインテック(岡山市)と連携し、協和ファインテック製の精密ギヤポンプの販売を始める。

 ギヤポンプは合繊製造において、高温で溶融したポリマーを正確に紡糸ノズルに吐出する役割を担う。吐出量が変化すると、糸の品質が変化してしまうため、定量で均一に送り出す必要があるため、合繊製造設備の重要部品とされる。

 協和ファインテックはその精密ギヤポンプを生産する世界でも数少ない企業の1社。同社製精密ギヤポンプは「定量、低振動での送液が可能で、吐出精度も高く、1次側、2次側の圧力変動などの影響があっても定量性を維持できる」(協和ファインテックの橋本宗幸社長)のが特徴。設計から製作まで一貫生産し、需要家のセミオーダーも行うほか、オーバーホールにも対応する。

〈アールエスタイチ/走行風で体冷やす新型ベスト〉

 モーターサイクル用品の輸入、企画、開発、販売などを手掛けるアールエスタイチ(大阪府東大阪市)はこのほど、バイクの走行風を利用して体を冷やす独自の気化冷却システム「リキッドウインド」を搭載した新型ベストを発売した。ユーザーの声を反映し、冷却効率と長時間の走行でも疲れにくい装着感を両立させた。

 リキッドウインドは腰に装着した電動ボトルから専用冷却水をアンダーウエアへ送水し、走行風の力で気化冷却を起こして胸部と背中を冷却するシステム。化粧用品メーカーのマンダムと共同開発した専用の冷却水「リキッドウインドウォーター」はメントール配合で心地よい冷たさが長時間持続するほか、消臭成分によってウエアの臭いを抑える。

 新型ベストは送水チューブ径を細くして容積を約60%削減。チューブ内の残留液を減らすことで、ボトル内の冷えた冷却水を素早く首元へ届け、冷却の即効性を向上させた。

〈コベストロなど/導電性スマート生地〉

 ドイツの化学大手、コベストロは、フィルク・フライベルク研究所および光送信機環境保護技術協会(OUTeV)と共同で、柔軟性と導電性を兼ね備えたポリマー製スマートテキスタイルシステムを開発した。センサー制御による新生児用ボディースーツなど幅広い用途への展開が期待される。

 開発したシステムは、繊維表面に均一な導電性の電位場を形成する技術が特徴。従来の配線を用いず、発光ダイオード(LED)やセンサーを繊維上の任意の位置に配置できる。材料には、コベストロの水性ポリウレタン分散液「インプラニル」を採用。カーボンナノチューブを添加した導電性ポリウレタンフィルムを形成し、レーザー加工により電気特性を精密に制御する。センサーと連動したLEDの制御や、近距離無線通信ブルートゥースによる双方向通信にも対応する。

 応用例として、新生児黄疸(おうだん)の光線療法用ボディースーツを試作した。青色光を発するLEDとセンサーを衣服に組み込み、治療状況をリアルタイムで監視しながら照射強度を自動調整する。